【森田実の政治評論】7.21参院選は日本が時代の曲がり角に立っていることを示した2019年7月25日
「禍福は糾える縄の如し」(『史記』)
◆憲法改正熱の後退
去る7月21日の第25回参院選の結果の中で、私が最も重視したことは「改憲勢力三分の二をとれず」でした。
安倍総理は「2020年憲法改正実現」を公約してきましたが、参議院で三分の二をとれなかった結果、少なくとも2022年度までの憲法改正の国会発議は不可能になりました。安倍総理の自民党総裁としての任期は2021年9月までです。安倍総理が自民党総裁4選を実現しない限り、安倍総理の手による憲法改正は困難です。安倍総理は憲法改正が不可能になったことを認め、断念すべきですが、安倍総理はあきらめきれず、国民民主党の中に手を突っ込んで改憲派を増やそうという考えのようですが、これは邪道です。こんなことをしたら安倍政権は没落します。安倍政権は、できもしない憲法改正に熱を上げるのをやめるべきです。
政治ジャーナリズムを含めて政界では、公明党を改憲勢力に入れ「自民・公明・維新の改憲3党」という言い方をしていますが、公明党を自民党・維新の改憲政党と同列に扱うのは間違っています。公明党は「加憲政党」ですが「改憲政党」ではありません。公明党が安倍改憲論に賛成する可能性はきわめて低いと私は思っています。公明党は現在の日本国憲法の三大原理(国民主権・平和主義・基本的人権)を守ることを党是としている政党です。これを変えることは考えられません。
今回の参院選では改憲派は三分の二をとることはできませんでしたが、たとえとれたとしても改憲はもともと困難です。公明党の全国会議員が一致して安倍改憲案に賛成することはほとんど考えらえないことです。安倍総理は、これ以上憲法改正に執着すべきではありません。潔く断念すべきです。
◆2019年度は時代の転換点
安倍晋三氏が一度は失敗しながら再挑戦をして政権の座についたのは2012年12月でした。あれから6年半が過ぎました。この間3回の衆院選、3回の参院選、2回の統一地方選がありましたが、安倍総理はすべての選挙の勝者になりました。この間安倍内閣は順風満帆でした。日本国民にとっても比較的平穏な時期でした。
しかし風は変わります。順風が逆風に変わり始めました。2019年夏は「順風」と「逆風」が同じ強さでぶつかり凪状態でした。第25回参院選は「凪」状況下で行われたのです。
逆風の第一は「しのび寄る不況」です。世界経済の中で米国経済だけが好調ですが、他の国々は不況に苦しんでいます。米中対立が不況に拍車をかけます。すでに中国経済は減速し始めています。周辺国はこの影響を受け始めています。日本の景気も徐々に後退しています。
忍び寄る不況のさなかに、安倍内閣は2019年10月から消費増税を実施します。不況下での増税は深刻な消費不況に直結します。この不安が日本全土に広がっています。「不安不況」というべき経済現象が起きているのです。
逆風の第二はトランプです。アメリカファーストのトランプは日本にも譲歩を迫ってくるでしょう。トランプは日本の農業と自動車に狙いを定めています。安倍内閣にトランプの圧力をはね返す力があるかが試されます。
トランプの敵は中国とイランです。イランとは軍事衝突一歩手前の状況です。米国政府はイラン攻撃の有志連合を結成しようとしていて、日本に働きかけ始めました。
イランは日本にとって友好国です。米国の言うがままにイランと敵対する立場はとれません。安倍総理の立場は「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」です。この状況をどう乗り切ろうとするのか、全世界が安倍総理に注目しています。
逆風の第三は日韓関係です。第二次大戦後最悪といっていいほどの悪化です。日韓両国の対立は、両国首脳と閣僚の感情的な対立にまでエスカレートしています。両国政府間には対話がありません。外交も事実上途絶えています。
韓国政府はトランプに仲介役を頼みましたが、トランプが仲介役を果たす可能性は低いとみられています。
日韓対立の結果、観光客が減少し始めています。国民レベルでの混乱も起きています。
安倍総理をはじめ日本政府高官も、韓国政府に対しては一歩も引かず闘う姿勢ですが、これほど愚かなことはありません。安倍総理は和解のためのイニシアチブとるべきです。安倍総理の側から謙虚な姿勢を示すことが必要です。
「明」から「暗」へ、時代は動きます。安倍総理にとっても「明」の時代は過ぎ「暗」の時代に入ろうとしています。
安倍総理の方向転換が必要です。政府にとって最も大切なことは国民の生活を守ることです。大胆な農業保護政策をとるべきです。労働者への賃上げに、政府は起ち上がるべきです。これからば大企業と富裕層に負担を求めるべきです。
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