【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(142)訪日外国人旅行者数に見るグローバル化2019年8月2日
先日、2019年上半期の訪日外客数が発表された。単月で288万人、1~6月累計で1663万人(前年比4.6%増)である。昨年同時期の数字(17.3%)に比べると大きくペースは落ちてはいるものの、絶対数としては依然として大きい。
Web上では観光庁のデータが2003年以降15年間の詳細な数字を簡単に確認できる。この15年間、いかに変化したかを簡単にまとめてみた。
15年前の2003年当時、訪日外国人旅行者の数は年間521万人に過ぎなかった。その後、年間100万人くらいのペースで増加したが、2008年9月のリーマンショックの影響もあり、2009年には前年の835万人から679万人に減少する。2010年には一旦861万人に回復したものの、2011年は3月の東日本大震災の影響で再び622万人にまで落ち込んでいる。
2012年に836万人に回復した後の増加は凄まじい。2012~13年は200万人増、2013~14年は300万人増、そして2014~15年は630万人増である。この間、総数としては2013年に1036万人と大台を超えた後、2年後の2015年には1974万人とほぼ倍増している。
その後、2016~18年にかけてさらに1000万人増加し、2018年は総数で3119万人となったことは既報のとおりである。冒頭に述べたとおり、今年の上半期は1663万人、昨年上半期は年間の45%程度を占めていたため、同じ状況で下半期が推移すれば年間では3700万人程度になることが予想されよう。下図は観光庁の数字をまとめたものである。
さて、よく知られているように日本に来る外国人旅行者の圧倒的多数は、中国、韓国、台湾、香港からの旅行者である。2018年の内訳を見ると、中国(838万人、27%、以下同じ)、韓国(754万人、24%)、台湾(476万人、15%)、香港(221万人、7%)でこれら4か国・地域だけで2288万人、73%を占めている。これに次ぐのはタイ(113万人、4%)、フィリピン(50万人、2%)、その他ということになる。
観光庁の資料では、これらの人々の1人当たり旅行支出と旅行消費額を試算している。外国人旅行者は一般客とクルーズ客に分かれている。旅行支出が高い上位3位はオーストラリア24.2万円、スペイン23.7万円、イタリア22.4万円である。中国も高く22.5万円だが、香港15.4万円、台湾12.8万円、韓国7.8万円となり、一時期話題になったクルーズ客の平均は4.4万円である。
ところが、旅行消費額、いわゆるインバウンド消費全体4兆5189億円の内訳を見ると、訪日人数の関係から中国が1兆4564億円で全体の32%を占めることになる。第2位は韓国5876億円、次いで台湾5725億円、香港3347億円である。一人当たり旅行支出で1位のオーストラリアは1312億円、スペインは281億円、イタリアは334億円となっている。
訪日外国人旅行者の内訳も色々である。今のところ人数的にも金額的にも中国が圧倒的であることは誰の目にも明らかだ。繰り返すが2018年の中国からの旅行者838万人という数字は、2007年の訪日外国人旅行者総数(835万人)とほぼ等しい。この10年ほどの変化がいかに大きいかがわかると思う。この傾向がどこまで続くのかはわからないが、15年前の2003年には中国からの旅行者が年間45万人しかいなかったことを考えるとこの間の平均成長率21.5%という数字が極めて重く感じるのではないだろうか。
問題はこれだけではない。数は多くないが1人当たりの支出額の多いヨーロッパからの旅行者、あるいは支出額はそこまで多くないが訪問者数がそれなりに多い中国以外のアジア各国からの旅行者に対し、今後どのような魅力を提示できるか、各地域が知恵を絞らざるを得ない。
それにしても、日本が経験しつつあるグローバル化とは具体的にどのようなものか。英語のグローバルという単語から想起される地球全体を巻き込むイメージと、実際の人・モノ・カネ・情報などの動きとのギャップ、実はこれが本来見るべき現実を曖昧にしてしまう。外国人旅行者数の変化もそうだが、響きとイメージの良い言葉に惑わされず、身の回りの現実を個別具体的にしっかりと見据えて対応していく以外にはないであろう。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
協同心の泉 大切に 創立記念式典 家の光協会2025年5月2日
-
【スマート農業の風】(14)スマート農業のハードルを下げる2025年5月2日
-
(433)「エルダースピーク」実体験【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月2日
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日
-
JA愛知信連と高機能バイオ炭「宙炭」活用に関する協定締結 TOWING2025年5月2日
-
5月の野菜生育状況と価格見通し だいこん、はくさい、キャベツなど平年並み 農水省2025年5月2日
-
「ウェザーニュースPro」霜予測とひょう予測を追加 農業向け機能を強化2025年5月2日
-
東京・大阪の直営飲食店舗で「岩手県産 和牛とお米のフェア」を5月1日から開催 JA全農いわて2025年5月2日
-
新潟市産ももで食育出前授業を開催 JA全農にいがた2025年5月2日
-
山形県さくらんぼハウス栽培研究会が研修会を開催 山形県さくらんぼハウス栽培研究会2025年5月2日
-
全農直営飲食店舗で「いわて純情米」フェアを5月29日まで開催 JA全農いわて2025年5月2日
-
トランプ農政・小規模農家に暗雲 熊本学園大学教授 佐藤加寿子氏【トランプの世界戦略と日本の進路】2025年5月1日
-
新品種から商品開発まで 米の新規需要広げる挑戦 農研機構とグリコ栄養食品2025年5月1日
-
米の販売数量 前年比で86.3%で減少傾向 価格高騰の影響か 3月末2025年5月1日