【JCA週報】農協の総合事業性をどう発揮するか-JA鹿児島県中央会の取り組みー2020年2月17日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹 JA全中代表理事会長、副会長 本田英一 日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「農協の総合事業性をどう発揮するか-JA鹿児島県中央会の取り組みー」です。
協同組合研究誌「にじ」2019年冬号に寄稿いただいた鹿児島県農業協同組合中央会 担い手・法人サポートセンター 前田勇介氏の報告を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年冬号
農協の総合事業性をどう発揮するか-JA鹿児島県中央会の取り組みー
前田勇介 鹿児島県農業協同組合中央会 担い手・法人サポートセンター
1.JA鹿児島県中央会 担い手・法人サポートセンターの設立
農業就業人口の減少、農家の高齢化、農家の大規模化・法人化に対応するため、JAグループ鹿児島では2009年(平成21年)3月、県中央会に担い手・法人サポートセンターを設置した。
本県の農業就業人口は当センター設置までの10年間で3万人以上減少し7.4万人となり、平均年齢は4歳上昇し65.2歳となった。また、農産物販売額3000万円以上の経営体が占める割合も増加していた。
一方で地銀の農業融資分野への対応強化や民間業者による農業資材店舗の出店などにより農業法人のJA利用率が低下し、JAグループと疎遠になる可能性も高まっていた。
そういった状況を踏まえ、対象農家を絞り込み徹底的に訪問し、得られた情報をJAの各部門で共有化。組合員の側から事業のあり方を見つめJA事業への結集度を高めるために、1998年 (平成10年)に設置されたJAそお鹿児島のTAF(トータルアドバイザーふれあい)の県連版として設立されたものである。
農業法人の要望を聞き取り、情報共有・迅速対応により信頼関係を構築することで、 JAでは手薄になりがちな法人・大規模農家の対応をすることを当初の目的として活動を開始した。
(略)
2.鹿児島県における担い手対応の特徴―中央会・各連合会による共同対策の取り組み―
本県のサポートセンターの取り組みは、中央会・各連合会一体となった対応をすすめているということが1番の特徴である。 JAや農業経営は総合事業で成り立っており、そこを支えるため、県連も各連一体となった対応に取り組んでいる。
当センター担い手推進課は各連合会の共通部署として位置づけられ、中央会、信連、経済連、共済連の職員で構成されているほか、毎月各連合会との情報共有のための会議体を行うとともに、事業面の連携にも取り組んでいる。
本県の各連一体的な取り組みは、当センターの運営に限らず、様々な場面で行われている。
2018年(平成30年)12月に開催した第26回JA県大会で本県JAグループの目指す姿として、(1)農業・農村・地域社会の守り手(組合員とともに産地を維持・拡大することで、農業・地域コミュニティを維持する姿)、(2) 身近なJA(組合員との接点を増やし、ニーズへ的確に対応することで、結集力が高まり、事業利用・活動参加が増加する姿)、(3)県域事業体〈JA・県連の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・知識)の一元的・総合的な事業運営が最大効果を発揮し、組合員メリットの増大とともに経営・財務が健全化する姿〉の3つを掲げ、それらの取り組みを通じて協同組合として事業と地域の持続可能な発展に貢献できる組織を目指すことを決定している。
これらの目指す姿を実現するための取り組みの柱として、「県域事業連携工程表」と呼ばれる行動計画の策定・実践を通じて、あたかも県内JAが1つの組織であるかのように各連合会同士やJAと県連が、縦・横の連携を強化し事業運営の強化を図っている。
(略)
7.おわりに
これまで、法人・担い手などの大規模経営体を中心とした、本県の取り組みを整理してきたが、経営体数で見れば依然として本県の97%が家族経営体となっている。このように農家組合員の階層化が進むなかにおいては、それぞれの階層に応じた対応力を強化していくことが求められている。
大規模経営体に対しては、当センターの取り組みをはじめ、JAの総合力を発揮し各々の経営体の状況の夢や悩みに寄り添い、課題解決に取り組むことでJAへの結集力を高め、双方にとってwin-winの関係を築く必要がある。
また、地域の中核的な農家組合員に対しては、地域の基幹作物を誰がどの程度の規模で生産するかを描いた、地域営農ビジョンの策定・実践をベースに置いた生産者部会を中心とした対応を行っている。
そして、大規模経営体だけで農業生産や地域社会を守ることはできない。これまで地域を支えてきた家族経営体などの多様な組合員には、直売所等への出荷支援を行うとともに、大規模・中核農家の農作業を支え、地域を守るための取り組みにも参画できる仕組みもできている。
農業生産に占める大規模経営体の割合がますます増加するとともに、自由貿易の加速化や農林水産業の成長産業化が進展するなかで、JAの設立以来JA運営の中心を担ってきた家族経営への対応に合わせて、大規模経営体のニーズにマッチしたビジネスモデルも求められる。そうすることで、営農経済事業を中心とした経営基盤の強化に取り組むとともに、地域や農業の振興を実現することがJAに与えられた任務と考える。
協同組合研究誌「にじ」 2019冬号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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