独自の精米品位基準を模索し始めた中食企業【熊野孝文・米マーケット情報】2021年6月29日
コメの話を聞きたいという大手中食企業のところへ出向いた。この中食企業は、売り場面積当たりの売り上げ額が日本一と言われる企業だけあって同業他社や量販店等も視察に訪れるという名の知れた会社で、著者もその売り場を見てみたが、その品数の多さに驚くとともに、並べてある商品のクオリティーの高さに圧倒される思いがした。商品説明をしてくれた専属のシェフ自身が監修したサラダ等も置かれていておにぎり等米飯類と一緒に試食させてもらった。後日、この中食企業から用途に合わせたコメや品位について尋ねられた。
中食企業と言われてもピンとこない方も多いと思われるが、それもそのはずでその業態は実に幅広い。定義上は家庭で調理して食べる「内食」とレストラン等で食べる「外食」の中間に位置するもので「中食(なかしょく)」と呼んでいる。持ち帰り弁当店やコンビニやスーパーで売られている弁当やサンドイッチ、総菜関連も中食に含まれる。持ち帰り弁当店一つとってみても年間1500億円もの売り上げがある大企業もあれば、個人経営で弁当を販売しているところもあるなどスソ野が広い。
その市場規模がどうなっているのか? 詳しくデータを取って公表しているところがある。一般社団法人日本惣菜協会は毎年惣菜白書をまとめ公表している。そこに内食、中食、外食の市場規模が出ている。2019年度は内食が36兆402億円、中食10兆3200億円、外食26兆439億円、食市場全体72兆404億円になっている。2010年からの伸び率では内食が112.4%、中食127.1%、外食110.9%で、中食の伸び率が頭抜けて高い。分かり易く言えば中食業界は成長産業ともいえる。ところが2020年度の中食業界の市場規模は4.8%も落ち込んで9兆8195億円になってしまった。原因はコロナ禍で、この業界にも打撃を与えている。
白書には中食業界のカテゴリー別市場規模も出ている。2020年度は、米飯類4兆2396億円(構成比43.2%)、調理パン4916億円(同5.0%)、調理麺7998億円(同8.1%)、一般惣菜3兆4490億円(同35.1%)、袋物惣菜8396億円(同8.6%)になっている。この数字で明らかなように中食業界は米飯イコールコメの使用量が多いヘビーユーザーで、年間使用量は126万トンにもなると推計されている。言い換えればコメの生産サイドとしては特に重視しなければならない業界とも言える。
こうした業界の有力企業が使用するコメの見直しをはじめているのは理由がある。一つには今年中に新たな工場建設に着手する計画で、より米飯類に力を入れたいと思いがあり、果たして今までのようなコメを使っていて良いのかと言う問題意識がある。現在、使用している産地銘柄の主力は6産地品種銘柄の1等級で、11項目ある品位基準はかなり厳しい基準値を設定している。これ以上厳しい精米品位基準を設定したら、それに合致する精米を納入出来る業者がいるのだろうか? と心配になるぐらいの高い基準なのだが、それでも満足していない。それはスーパー等で販売されている弁当やおにぎりなどの販売価格を見てもらえれば分かるように、どうしてこれほどまでに安く販売出来るのか不思議に思えるくらいの激烈な販売競争を繰り広げているからであり、その競争に勝つために徹底した合理化策を導入しており、食材に関しても同様である。一例をあげるとジャガイモは皮を剥かない。剥かないのではなく、表面の薄皮を剥ぐという技術を取り入れ、それにより歩留りを向上させ、製品の食味もアップさせたというのである。当然、コメでも同じことが出来ると思っているに違いない。
自らが求めるコメを品位や食味を落とさずにどうやって低コストで仕入れるか? おそらく川上まで遡って徹底したコスト低減策を納入業者に要求して来ることになるだろう。その場合、いち早く求めるのが検査コストで、自社が使用する精米品位を担保するために、玄米段階からチェックする手法を取り入れることになると予想される。その場合どういった方法でそれが可能になるのか?
もっともコストがかからない方法は画像解析技術を取り入れる方法である。実はすでにその方法を完成させたところがある。玄米を画像で撮影してデータ化して最終精米の品位を予測するアプリを作った。農水省が推進するスマートオコメチェーンでそれが出来るようになるのは令和5年産米からだが、激越な競争を繰り広げているこうした業界ではその研究を4年前から始めていたのである。
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