イネカメムシが越冬 埼玉、群馬、栃木で確認 被害多発の恐れ2025年5月2日
イネカメムシが関東各地で越冬したことが確認された。カメムシの越冬成虫は6月上旬から7月上旬にかけ水田に侵入し穂を加害する。出穂期~乳熟期に加害されると不稔となり、登熟期の加害で斑点米が生じ、収量と品質を低下させる。特に埼玉県では越冬成虫の密度が前年の約43倍に達し、各県では警戒と適期防除を呼びかけている。
●陽だまり、落ち葉の下などで―埼玉
埼玉県病害虫防除所は2024年11月~25年3月、イネカメムシの越冬状況調査を初めて行った。
調査した172地点のうち100地点(58.1%)でイネカメムシ越冬成虫が確認され、広い範囲で越冬していることがわかった。越冬成虫は落ち葉内や落ち葉の下で多く、ジャノヒゲ株内やススキなどイネ科雑草株元でも確認された(=下の囲み参照)。
ジャノヒゲの株内で越冬中の成虫 提供:埼玉県防虫害防除所
落ち葉の下や浅い土中で越冬中の成虫 提供:埼玉県防虫害防除所
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埼玉県でイネカメムシの越冬成虫が確認された場所の傾向
①冬の季節風が当たりにくく、南側や西側に開けていて陽だまりになりやすい場所
②落ち葉が堆積しており、乾燥しておらず適度な湿度が保たれている場所
③表土が柔らかかったり、堆積物や落ち葉の腐食化が進んでいて膨軟な場所
④厳冬期でも緑色の歯をつけているイネ科雑草の株元やジャノヒゲの株内
⑤耕地や堤防などの開けている場所よりも、北側や東側に構造物や林がある場所
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出所:「イネカメムシ越冬状況調査結果について」(令和7年3月31日、埼玉県病害虫防除所)
●越冬成虫密度「前年の43倍」
前年と比較が可能な「果樹カメムシ類越冬調査で混獲されたイネカメムシ」の越冬成虫密度は17.1頭で、前年の0.4頭の約43倍に達した。埼玉県病虫害防除所では「本年は越冬成虫数が多く、イネカメムシが多発生するリスクがきわめて高い。特に、越冬成虫が見つかった場所と条件が近い水田では早くから発生する恐れがあるので、広域で適切な防除を行ってほしい」としている。
●県南7市町で確認―栃木
栃木県農業総合研究センターでも、県内全域でイネカメムシの越冬状況を調査。県南の7市町(足利市、佐野市、栃木市、小山市、下野市、壬生町、野木町)で越冬を確認した。7市町では、30地点中22地点(73%)で確認された。
同センターでは「7市町では、今後、水稲に被害が出る恐れが高い。出穂期頃とその7~10日後(入熟期頃)に液剤で防除してほしい。越冬が確認されなかった地域でも定期的にほ場を見て、早期発見、早期防除に努めてほしい」と話している。
落葉下の越冬成虫(栃木県南部) 提供:栃木県農業総合センター提供
栃木県内のイネカメムシの越冬確認状況
出所:栃木県農業総合センター「植物防疫ニュースNo1」(令和7年4月11日)
●群馬でも越冬成虫確認
イネカメムシの越冬は群馬県でも確認された。同県農業技術センターでは、「2023年、24年と続けて被害があったので、24年に越冬が見つかった場所を25年1~2月に調査し越冬成虫を確認した。注意と適期防除を呼びかけている」と説明する。
●24年は37都府県で被害
斑点米カメムシ類の一種、イネカメムシは国内で発生量が増加し、農水省のまとめでは2024年は南東北から関東以西の37都府県で発生が確認されている(未確認は北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、長野、新潟、富山、沖縄の10道県)。24年産米では「イネカメムシにやられ収量が落ちた」という農家は多い。
1950年代までは斑点米被害を出す稲の主要害虫だったが、1960年代以降は発生量が激減。一部地域では絶滅寸前となっていたが、2021年頃から大きく増え、深刻な被害が広がった。農水省も4月16日に発表した「令和7年度病中害発生予報第1号」で、イネカメムシについて、発生状況把握と防除を呼びかけている。
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