農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(58)【防除学習帖】第297回2025年5月10日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
25.トルクロホスメチル
(1)作用機構:[F]脂質生合成
(2)作用点: 細胞脂質の過酸化(提案中)
(3)グループ名:AH殺菌剤・グループコード:[14]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低~中
(5)耐性菌の発生状況:複数の耐性菌事例あり
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
[1]芳香族炭化水素/トルクロホスメチル(リゾレックス)
(7)グループの特性:
このグループ[14]は、病原菌の生育の際に、細胞分裂の制御機能に何らかの影響を与え、細胞内容物の漏出など異常をきたして殺菌効果を表すと考えられている。卵菌類では、菌糸への影響は少ないが、動き回って病害の蔓延をもたらす遊走子の運動機能を阻害して動かなくすることで病害の蔓延を防止する。リゾクトニア菌などの担子菌類やスクレロチウム菌(白絹病)などに特に高い効果を示し、予防効果と長期の持続性を有している。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
このグループに属するトルクロホスメチルのリスク換算係数は0.3 16 であり、その基準年出荷量は合わせて約26.3トンである。リゾクトニア菌やスクレロチウム菌は土壌を介して発生する重要病害であり、本剤はこれらを効率よく防除できる貴重な農薬であることから、耐性菌対策に十分に留意しながら効率よく使用する方が得策と考える。
(9)AH殺菌剤の農薬登録がある主要病原菌一覧
AH殺菌剤(トルクロホスメチル)の農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌の一覧を次表に示した。これらは、AH殺菌剤(トルクロホスメチル)が農薬登録を取得している作物・病害を整理したもので、本グループの有効成分が活性を示す病原菌群を示したものである。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(作物・病害名)を確認して正しく使用するようにしてほしい。
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