農政無策【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月22日
●需要は天与のものではない
鈴木憲和農相のコメ政策の基本は「需要に応じた生産」である。ここには、需要は天から与えられたもので、人為では何とも為し難い、という考えがある。
だから、人為である生産は、それに順応するしかない、順応すべきだ、というのだろう。需要という天の声を聞かずに、天に逆らって、人為で勝手に減反したり増反したりするから、米価が暴落したり暴騰したりするのだ。天罰が下ったのだ。そのように言いたいのだろう。
だが、そうではない。ここには、米価の暴騰、暴落の責任を農業者に押し付けようとする陰湿な謀略がある。責任は政治が負うべきものなのだ。逃げようとしても、逃げられない。
●需要は政治が作り出せ
需要は天与のものではない。人為で作り出すものである。コメについていえば、コメには、主食用だけでなく、米粉用や飼料用の膨大な需要がある。この膨大な需要に分け入って、開拓しておけば、迫り来る世界的な食糧危機には、主食用に転換できる。
これは、国家の存立を支える食糧安保のためである。だから、これは、政治が負うべき最重要の責任である。
●政治は退路を断て
だから、米価が生産者にとって採算に合わないのなら、人為である政治が乗り出して、政治の責任で、採算に合うようにすべきなのだ。そうして、生産量を確保すべきである。
また、米価が消費者にとって高すぎるのなら、政治の責任で、下げるべきものである。そうして、充分に消費できるようにすべきである。
だが、政治は、その責任を果たしていない。鈴木農相がいう「需要に応じた生産」というコメの基本政策は、政治がその責任から逃げるためのものである。無責任な農政スローガンである。恥知らずで、逃げの農政スローガンである。これは、直ちに捨てねばならない。
政治は、退路を断つ覚悟を持たねばならない。
●トランプ大統領に学べ
ここで、いきなりトランプ大統領を引き合いに出すが、彼は日本に25万トンのコメの追加輸入を約束させた。これはいったい何なのか。
彼は、人為で米国のコメを日本へ輸出する、という需要を作り出したのである。彼は天の領域である需要に土足で踏み入ったのか。天を畏れずに、天に逆らって、需要を作り出したのか。そうではない。米国の国益に沿った人為の輸出なのだ。天に逆らったから、天罰が下ったか。そんなことはない。
これに引きかえ、鈴木農相はどうか。
●世界食糧危機に備えよ
鈴木農相が為すべきことは何か。
それは、あちこちへ行って、愛嬌を振りまくことではない。「需要に応じた生産」を、かなぐり捨てることである。そうして、迫り来る世界食糧危機に備えて、需要を拡大することである。そうして、無責任農政から脱出することである。
もしも、小麦の輸入が途絶したらどうするのか。平時からコメを増産し、需要を拡大しておいて、非常時になったら小麦に代替すればいいのである。
このことを、農政の基本に据えるべきである。
●コメ離れを防げ、離農を防げ、食糧安保を万全にせよ
当面する政策は、消費者のコメ離れを阻止するほどに米価を下げ、農業者の離農を阻止するほどに米価を維持して、食糧安保を万全にすることである。
いま、早急に為すべきことは、そのための法令と制度の整備である。
人口減少などによるコメ需要の減退に対して、為す術もなく呆然としてはいられない。米粉や飼料など、コメの新しい膨大な需要を開拓することである。そして、迫り来る世界食糧危機を克服するための農政を、早急に確立することである。
年末が近づきました。明日からは、天の計らいで、明るい昼の時間が長くなります。皆さん、よい新年を。
(2025.12.22)
重要な記事
最新の記事
-
【26年度畜酪決着の舞台裏】加工補給金上げ12円台 新酪肉近で全畜種配慮2025年12月22日 -
鳥インフルエンザ 岡山県で国内8例目2025年12月22日 -
日本産米・米加工品の輸出拡大へ 意見交換会「GOHANプロジェクト」設置 農水省2025年12月22日 -
令和7年度スマート農業アクセラレーションサミット開催 JA全農2025年12月22日 -
「JA全農チビリンピック2025」小学生カーリング日本一は「軽井沢ジュニア」2025年12月22日 -
農政無策【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月22日 -
【人事異動】ヤマタネ(2026年1月1日付)2025年12月22日 -
国産食肉シンポジウム「国産食肉が食卓に届くために」開催 日本食肉消費総合センター2025年12月22日 -
岡山県鏡野町と「災害時における無人航空機による活動支援に関する協定」締結 福田農機2025年12月22日 -
「英国The Leafies 2025」粉末緑茶「あらびき茶」が金賞受賞 鹿児島堀口製茶2025年12月22日 -
「かごしまスマートファーマー育成セミナー」令和7年度の受講生募集 鹿児島県2025年12月22日 -
日本トリム 農業用電解水素水整水器を活用 いちご「肥後こまち」販売開始2025年12月22日 -
宅配インフラ活用 地域を見守り子育て応援 九十九里町と連携協定 パルシステム千葉2025年12月22日 -
大分県大分市佐賀関大規模火災お見舞い金100万円を拠出 コープデリ2025年12月22日 -
新春は「いちごと洋梨のケーキ」丹頂鶴をフルーツで表現 カフェコムサ2025年12月22日 -
障害者雇用支援のエスプールと持続可能な農業モデル構築へ概念実証を開始 食べチョク2025年12月22日 -
滋賀県日野町と農業連携協定 生産地と消費地の新たな連携創出へ 大阪府泉大津市2025年12月22日 -
ブラジルCOP30から世界の気候危機を知る 現地イベント報告 パルシステム連合会2025年12月22日 -
おてつたび 関係人口創出の取組が評価「日本サービス大賞」で優秀賞2025年12月22日 -
AGRIST キュウリ自動収穫ロボット いばらきデザインセレクションで「知事選定」受賞2025年12月22日


































