(434)世界の配合飼料業界のダイナミズム【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月9日
家畜の飼料、とくに配合飼料は筆者にも馴染み深い業界です。世界の配合飼料、そして中国の配合飼料業界の動向について簡単に紹介します。
この業界に詳しい米国のAlltech社が先日、Agri-Food Outlook 2025という報告書を公表した。その中で、昨2024年の世界の動向が述べられている。
久しぶりに見るこの業界の動きはかなりダイナミックである。世界の飼料(これは主として配合飼料)の年間生産量、つまり総トン数は、13億9,644億トンと、既に14億トン水準に到達している。同社によれば、昨年からの増加数量は1,671万トン、伸び率は1.2%である。
約14億トンの地域別内訳で最大はアジア太平洋地域で5.3億トン、次が北米で2.9億トン、欧州が2.7億トンである。数字の上で全体の約4割を占めるアジア太平洋地域だが、総数では前年を411万トン下回り、前年比99%、世界で唯一マイナスを記録している。これは後述する中国の影響による点が大きい。
地域別内訳を述べる前に14億トンの畜種別内訳を述べておこう。首位は家禽用飼料で約6億トンである。次は養豚用飼料で3.7億トン、そして養牛用飼料が約3億トン(このうち、乳牛用が1.7億トン、肉牛用が1.3億トン)、この他に、世界ではペット用飼料が3,769万トン、さらにその他の反芻動物や水産用などがある。
過去1年間で最も伸びたのはどの分野か。伸び「率」で言えば4.5%のペット用である。先に述べたとおり、全体の伸び率1.2%を大きく上回る。数量も昨年は3,607万トンと、過去1年間で162万トン増加している。
ただし、全体「量」から見て最大の伸びを示したのは家禽用飼料である。昨年からの増加は991万トン、こちらの成長率は1.7%で全体平均をわずかに下回るが相変わらず需要は旺盛である。世界では家禽用飼料が1年間で1,000万トン近く伸びているということは留意しておくべきであろう。なかでも中東の需要の伸びが大きい(+9.2%)。中東だけでブロイラー用飼料が約1,300万トン必要など、多くの日本人には想像できないかもしれない。
さて、国別に見た場合の生産量順位は、中国が3億1,503万トンで2位の米国の2億6,962万トンを上回り首位である。ただし、10位の日本を含む上位10カ国の中で中国だけが前年の生産量を下回っている。中国の減少量は652万トンである。なお、日本の生産量は、2,430万トン(昨年2,426万トン)である。
では、昨年の中国で一体何が生じていたか。報告書によれば、ブロイラー用(+2.6%)
とペット用(+10.3%)以外は、飼料の供給過剰による価格低迷に疾病などが重なり生産量が減少したようである。ペット用飼料の伸びが著しい点も興味深い。現時点ではペット用飼料の最大生産地は欧州の約1,200万トンだが、インドや中国で高品質のペット用飼料需要が増加すると人口の母数が多いだけに今後もビジネス・チャンス拡大の可能性が高い。それがアジア太平洋地域の伸び率(+11.0%)の背景にあることが伺われる。
非常に興味深い点として、これだけの供給過剰に直面しながら、昨年の中国は475の飼料工場を新設したという。これは生産能力、先端科学技術、そして最適な流通を考慮した上での戦略的業界再編成と指摘されている。
それにしても、規模の詳細は不明だが、1年間で475の飼料工場を新設するのが凄まじい。総生産量が異なるとはいえ、現在の日本の配合飼料工場を100工場程度と見れば、その大胆な再編の動きに圧倒される。
また、工場での製造という面だけを見れば、今後も先の3要素(効率化・先端技術・合理的流通)が鍵になることは間違いない。ただし、その最終対象はどれも機械ではなく産業動物という名の生き物である。動物愛護や環境問題、そして感染症などの疾病対策との絶妙なバランスが求められる点は言うまでもない。
* *
世界的に見た場合、家禽用飼料の伸びは今年も継続しそうと見る関係者が多いようです。
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