余りものに値なしの状況を食い止める方策とは?【熊野孝文・米マーケット情報】2021年7月13日
早いもので今月末には九州の早期米が収穫され、この価格がいくらになるのか関心を集める時期になって来た。16日には全国のコメ卸などが参加するFAX取引会が開催される予定で、この取引会に宮崎コシヒカリ新米が売りメニューとして場に晒されることになる。ご祝儀相場になる第一便は別にして7月中渡しの早期米は、1等東京着で1万4000円を少し下回ったあたりが成約価格になると予想されている。

3年産米の価格はどうなるのか? 生産者のみならず農協、集荷業者、卸等流通業者、需要者にとっても最大の関心事で、事前情報が火花を散らしている。価格決定の最大の要素である需給状況については、すでに農水省や全国団体が様々な見通しを公表しているが、今年10月末に持ち越す2年産米在庫は生産者団体が40万~50万トン、卸団体は63万トンとかなり開きがあるが、近年になく多い在庫が持越になることには変わりない。これ以外に政府備蓄米やMA米在庫もあるので、新米を入れる倉庫が不足するかもしれないという騒ぎになっている。政府備蓄米は91万トン残っているが、この中には5年古米も入っており、その物持ちの良さに感心してしまうが、いたずらに保管経費をかけることをせずにさっさとエサ用に売却して3年産備蓄米を入れるスペースを確保すれば良い。ついでに言えば全国には1100基ものカントリーエレベーターがあり、200万トンを超す保管能力がある。その稼働率はせいぜい50%程度でまともに使われていない。
保管してある2年産米を出さなければ3年産米を入れられないというのであれば、2年産主食用米を3年産飼料用米とスワップした形にして2年産米をエサ用に売却して保管スペースを確保すれば良い。それが出口対策になると農水省が反対すれば、26年産米で行ったように民間同士で行ったことと言えば良い。
なぜこれほどまでに保管スペースのことについて尖ったことを言うのか? それは保管スペースがないことを理由に、集荷業者や農協が生産者から持ち込まれる新米の買入に上限数量を設けると溢れた新米が価格の下げを加速させるからである。「余りものに値なし」の状況を作り出すと危惧される。
関東の早場県産地の集荷業者はもともとコメを入れる倉庫が少ないこともあって、保管スペースがないことが新米下げの最大の原因になると予想している。プラス農協系統の概算金引き下げが確実視されており、このことも新米下げの要因になる。概算金については早場産地で1俵1400円下げという事は、東日本の大産地の概算金が内税で1万円にするというシグナルだと見る向きもある。1万円の概算金が新米相場の下支え機能として働くか否かは実際に新米が収穫されてからになってみないと分からないが、それ以上に重要なことは買い手がどう考えているかと言う事である。とくに年間40万トン以上のコメを仕入れ販売している大手卸の動向が注視される。
深刻度の違いこそあれ大手卸といえども2年産在庫を抱えていることには違いなく、新米が出回り始めてから2年産をどう捌いて行くかに最も頭を悩ませている。大手卸の経営者の中には「コメ卸の経営は在庫のやりくりに尽きる」と断言する経営者もいる。だからと言って在庫負担を減らすために新米の手当てを抑えるという事はしない。現状でも「3年産米はタイト化する」と意外とも言える見方をしている。それは大手になればなるほど年間通じて供給しなければならない産地銘柄米の数量が増えて来るからで、3年産が国の方針のように700万トンを割り込むような供給量になってしまうとタイト化すると見ている。この卸はコロナ禍で外食向け等の業務用米の需要が急減、この分だけで1万5000トンも販売量が減ってしまった。その一方で生協の宅配や通販サイトでの販売量が急増しており、そのほとんどが産地銘柄米での販売で、量の確保に苦心したからである。コロナ禍でコメの消費構造が変わった一例で、それが端的に現れたのが魚沼コシヒカリの価格急騰で、それに追随するように新之助やつや姫も値上がりしている。こうしたトップブランドの銘柄米をどの程度確保すれば良いのかと言う点も気にかけなくてはいけない。
それ以上に気がかりなのは飼料用に回されるいわゆるBランクのコメがどの程度になるのかにある。コロナ禍が一定程度収まり外食需要が回復した時を想定しなければならない。実際、一時緊急事態宣言が解除された4月には外食需要が急増した。
コロナ禍では誰も経験したことがないような出来事が起きている。不確定要素のリスクを下げるにはアロアンスが必要で、そのためにも最低限新米を入れる保管スペースがないという事態だけは避けなくてはいけない。
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