【浅野純次・読書の楽しみ】第73回2022年4月16日
◎田口勇 『ヤバい! 厚生労働省』(ビジネス社、1540円)
著者は元厚労官僚で古巣に対する厳しい目はいささか辟易するほどです。即ち働く意欲がない、国民のほうでなく政府や医師会や製薬業界のほうを向いて仕事をする、データを大事にせず間違った予測に基づいて方策が出され続ける、等々。
確かに医師を増やさないことは医師会の利益につながり、その結果、医療崩壊が懸念されました。「専門家」を利用して発令した緊急事態宣言によって厚労省の仕事は楽になったそうです。また厚労省による医療費の予測は外れっぱなしです。
問題は最大の行政課題であるパンデミックで、いちばん重要な指摘だと思うのはウイルスの「量」です。
厚労省は唾液1ml中にウイルスが1000個以上なら陽性という基準を設定していますが、慶應大学の研究によるとこの10倍でも感染リスクはなく、100倍でもリスクは低いとか。厚労省の基準値によって無意味な「患者」を輩出させ、生活や経済を疲弊させていることになります。
ほかにもコロナ死者の実態(寝たきり老人など「最後の一滴死亡」が多い)とかワクチン死者(実態が隠されている)、富岳によるシミュレーションの過剰反応、などいろいろ考えさせられます。厚労省に関心のある方にはとくにお勧めします。
◎福岡伸一 『ゆく川の流れは、動的平衡』(朝日新聞出版、1870円)
新聞に長期連載された科学エッセー194編は、著者の大好きな蝶などの昆虫、鳥、魚から数学、力学、天文、人体などテーマは驚くほど広範囲で、絵画とか文学とか芸術文化にまで広がります。
どれも600字ほどの短いものですが、起承転結がうまくできていて、最後の1、2行は教訓あり、自戒あり、ユーモアありで、プロのエッセイストにも引けを取らない感がすること再三です。
動的平衡というのは動的でありながらバランスがとれていて、きちんと生態系が収まっているという感じでしょうか。著者による生命論では、すべての生命は環境に依存しつつ、自らも環境に返していくことで成り立っているという、利他論を指しています。
確かにこの世界は持ちつ持たれつで、そうやってバランスが保たれている、そういう世界観は大事です。
全体に通底するのは何を、いかに学ぶかという、学び、教育、学問という視点かと。どこから読んでもよいので気楽に読めるのもありがたいことです。
◎稲垣栄洋 『怖くて眠れなくなる植物学』(PHP文庫、814円)
怖い植物の話が47話、ジャングルの人食い花だとか、ライオンを殺す草、絞め殺し植物の恐怖などと、おどろおどろしい話も登場しますが、それらも含め植物そのものの驚くべき能力、働き、生命力という視点からの話が主題のようです。
たとえば「命短く進化する」。植物は寿命を短くして進化し環境変化に対応していく。あるいは「利用しているのは、どっちだ」。改良された栽培植物は、本来は自ら蜂や蝶を呼び寄せる努力をしたり未熟な種を食べられないよう工夫しなければならないのに、人間様がすべてやってくれる。まんまと利用されているのは人間のほうかも、と。確かに。
とくに面白かったのは雑草の話です。「雑草は抜くほど増える」とか「除草剤で枯れないスーパー雑草」では改めて雑草のたくましさを知りました。土を掘り起こして雑草を取るのは敵(?)に塩を送るようなもので、ますますはびこるのだと。ご存じでしたか。
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