「れいわ」の見識をロシア非難に見る【森島 賢・正義派の農政論】2022年5月9日
表題にある「れいわ」は、いうまでもなく「れいわ新選組」のことである。
ウクライナ紛争にかかわる、日本の対露非難についての「れいわ」の批判は、正義に基づく、そして歴史的事実と、その洞察に裏打ちされたものである。
「れいわ」は、ウクライナ紛争が、ロシアとウクライナとの間の争いではなく、アメリカを盟主とするNATO軍事同盟の武力による東方拡大の一環であることを、確かな目で見据えている。
NATOの戦略目的は、米型の自由と民主主義の、武力による東方拡大であり、武力による世界制覇である。ロシアの次は、中国を狙っている。
米型の自由と民主主義は、格差を広げ、社会に分断をもたらしている。だから、これを無批判に受け入れることは、格差と分断の是認であり、助長であり、米欧による世界制覇への加担である。
この認識は、「れいわ」にだけあって、他の政党にはない。政府与党はもちろん、他の全ての野党にない。だから3月1日と2日の衆参両院での対露非難決議に、「れいわ」だけが反対した。
このようにして、与党と「れいわ」以外の全ての野党は、ロシア軍と敵対し、NATO軍、つまり、ウクライナの側に立った。そうして、多数の武器を与え、実質的に主力になって対戦している米軍を、一方的に援護している。

上の図で示した文書は、「れいわ」が国会での対露非難決議の前日に出した声明文の一部である。少し旧いが、歴史に残る声明文である。
その内容は、ロシアを一方的に非難するのではなく、NTTOの東方不拡大の約束を反故にした事実に注目して、外交で解決せよ、というものである。
◇
NATOの東方不拡大の約束、とは何か。
それは、1990年2月9日に、ソ連のゴルバチョフ書記長(当時)に対して、アメリカのベーカー国務長官(当時)が、「NATOの管轄権もしくは軍事的プレゼンスは1インチたりとも東方に拡大しない」と明言した、というものである。いわゆる「1インチたりとも発言」である。
その翌日、西ドイツのコール首相(当時)も、ゴルバチョフ書記長に対して、同様なことを明言した。
しかし、文書がないので、約束があったことを否定する人もいるようだ。
◇
その後の、NATOの東方拡大の事実をみてみよう。
1949年 米英など12か国で創設
1952年 ギリシャなど2か国が加盟
1955年 西ドイツが加盟
1982年 スペインが加盟
(1990年 東方不拡大の約束)
1999年 ポーランドなど3か国が加盟
2009年 アルバニアなど2か国が加盟
2004年 ブルガリアなど7か国が加盟
2017年 モンテネグロが加盟
(2019年 ウクライナが憲法を変更して加盟を目指す)
2020年 北マケドニアが加盟
◇
その後の事実は、約束を反故にした東方への、着実な拡大である。約束した1990年のとき、加盟国は16か国だったが、その後、東方の14か国が加盟して、現在は30か国になっている。
これは、仲良しクラブの隆盛ではない。ロシア包囲網の強化である。ロシアを仮想敵国にした軍事同盟の、ミサイルで武装した血生臭い拡大である。そして、これはロシアにとって国家存亡の危機を招くものである。だから、ロシアの最大の関心は、ここにある。死活の関心である。それを「れいわ」は、見抜いている。
◇
その後、今年の1月末には、アメリカはロシアが要求したNATO不拡大の要求を、文書で、にべもなく拒否した。そして、その1か月後にウクライナ紛争が始まった。
次は、中国だろう。その次は、武力による世界制覇だろう。
だから、中国をはじめ、多くの国はロシア非難に賛成していない。
◇
日本はどうか。国会では、賛成していないのは「れいわ」だけである。政府与党と、「れいわ」を除く他の全ての野党は賛成している。
これでいいのか。
日本は、冒頭に掲げた「れいわ」の主張のように、兄弟喧嘩の片方のウクライナ、つまりNATOの側に立って、ロシアを一方的に非難するのではなく、仲裁のための外交に尽力すべきである。
◇
あらためて言っておこう。
ウクライナ紛争は、プーチン大統領の個人の資質が原因して起きたものではない。ロシアにとって、死活問題であるNATOの東方拡大の一場面なのである。
これは、ウクライナがNATO諸国から武器をもらって戦っている代理戦争である。悪辣な米型の自由と民主主義に、高貴なスラブ魂を売り、兄弟国であるロシアを裏切ったものである。
この紛争を止められるのは、ウクライナの国民であり、ロシアの国民である。
いま、国際社会が求められていることは、NATOの東方拡大という歴史の事実を、冷徹に洞察したうえで、兄弟国に和解を促し、温かく見守ることである。武力による介入でもないし、武器の供与でもない。
(2022.05.09)
(前回 NATO東漸、中露西漸)
(前々回 対露制裁が世界に食糧暴動を招く)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
会長に中嶋康博氏を選任 食料・農業・農村政策審議会2025年10月29日 -
10月31日に食糧部会 新委員で審議 農水省2025年10月29日 -
「出張!値段のないスーパーマーケット」大阪・梅田に開店 農水省2025年10月29日 -
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」青森県で開催 JA全農2025年10月29日 -
岩手県新ブランド米「白銀のひかり」デビュー ロゴマークを初披露 JA全農いわて2025年10月29日 -
茶畑ソーラー営農型太陽光発電でバーチャルPPA契約 JA三井エナジーソリューションズ2025年10月29日 -
基腐病に強い赤紫肉色のサツマイモ新品種「さくらほのか」を育成 農研機構2025年10月29日 -
サツマイモ基腐病に強い 沖縄向け青果用紅いも新品種「Hai-Saiすいーと」育成 農研機構2025年10月29日 -
アイガモロボ(IGAM2)環境省の二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の対象機械に認定 井関農機2025年10月29日 -
2025年度JA熊本県青壮年部大会開催 JA熊本中央会2025年10月29日 -
鳥インフル 米ジョージア州などからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月29日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月29日 -
SNSで話題 ライスペーパーレシピ本『ケンミンぼうやに教わる ライスペーパーレシピ』発売2025年10月29日 -
2025年度JCSI調査 生命保険部門で「顧客満足度」9度目の1位 CO・OP共済2025年10月29日 -
東京農業大学「第二回スマート農業・ロボティクス研究シンポジウム」開催2025年10月29日 -
地産全消「野菜生活100 本日の逸品 茨城県産紅ほっぺミックス」新発売 カゴメ2025年10月29日 -
自律走行AIロボット「Adam」北海道で展開 住商アグリビジネスがPRパートナーに 輝翠2025年10月29日 -
ファームエイジと連携 放牧農家における脱炭素を促進 Green Carbon2025年10月29日 -
ハレの日の食卓を彩る「旬を味わうサラダ 紅芯大根やケール」期間限定発売 サラダクラブ2025年10月29日 -
パルシステム「ポークウインナー」に徳用パック登場 プラ約1.5トン削減も2025年10月29日



































