NATO東漸、中露西漸【森島 賢・正義派の農政論】2022年4月25日
米国と欧州諸国は、NATOを東方へ拡大し、米欧型の自由と民主主義を世界中に広めたい、と考えている。
中国とロシアは、経済圏を西方へ拡大し、中露型の自由と民主主義のもとで、交易を深めようとしている。
このNATO東漸と中露西漸の接点がウクライナであり、接点での不幸なぶつかり合いがウクライナ紛争である。
それがいま、戦争状態になって、連日、多くの犠牲者を出している。ウクライナは、米欧から与えられた武器で戦っているし、ロシアは、それに厳しい反撃をしている。
米欧は日本も加えて、ロシアに制裁を課しているが、中国は、この制裁に反対している。
米欧には、米欧型の自由と民主主義があるし、中露には、中露型の自由と民主主義がある。どれを採るかは、それぞれの国民が決めることである。他国が押し付けることではない。まして、武力で押し付けることではない。
上に示したのは、NATO東漸の図である。加盟国が東方のロシアへ向かい、力を合わせ、ロシアを囲い込むほどの大波になって、押し寄せている。近いうちに、フィンランドとスウェーデンも加盟するようだ。
NATOは、第2次大戦後まもなくの1949年に、米欧が中心になって創設した軍事同盟である。いうまでもなく、仮想敵国はソ連、つまり、いまのロシアである。これは、仲良しクラブではない。反ロ軍事同盟である。
その軍事同盟が、ロシアを包囲し、その包囲網を狭めて締め付けるために、東方に拡大している。創設当時の加盟国は12か国だったが、いまは30か国に拡大した。
そしていま米欧は、ロシアと国境を接するウクライナを、NATOの勢力圏に入れたい、と考えている。これが、ウクライナ紛争の直接の原因である。
◇
ウクライナ紛争が始まる直前に、何があったか。
1月10日に、ロシアはアメリカに対して、NATOの不拡大を要求した。これは、ロシアの隣国であるウクライナを、NATOに力づくで加盟させるな、という要求である。
それは、アメリカに対して、ウクライナに中距離ミサイルを配備することを断念せよ、という要求であり、ウクライナでの生物兵器開発、ウクライナ軍の兵員に対する軍事訓練を止めよ、という要求である。
これに対してアメリカは、「考慮に値しない」として、ニベもなく断った。
その後、1月26日にも、ロシアは重ねてNATOの不拡大を要求した。しかし、アメリカは拒否した。
そうして、2月24日にウクライナが戦闘状態になった。
◇
ウクライナ紛争をみると、米欧は、ウクライナを対ロ包囲網に入れたい、と考えている。そして、兄弟国のロシアと仲たがいさせるどころか、武器を与えて敵対させ、戦争させている。
それは、ウクライナ軍の武器をみれば明らかである。その大部分は、NATO加盟国から与えられたものである。武器だけではない。ウクライナ軍は、作戦に必要な情報も、その大部分は、NATO加盟国から与えらている。
このように、いまやウクライナはNATOの傀儡になり下がった。そして、NATOから与えられた武器を使い、NATOから与えられた作戦に従って、兄弟国のロシアと戦争を始め、その最前線で尖兵になっている。
◇
このNATO東漸は、米欧型の自由と民主主義の東漸である。だが、米欧型の自由は、普遍的な価値を持っているわけではない。自由な経済という名のもとで、ことに労働市場での野放図な自由競争を放置することによって、社会に貧富のすさまじい格差と、それによる国民の分断をもたらしている。
これは、資本主義のもとでの自由の必然である。
また、米欧型の民主主義は、富者のための民主主義である。政治の指導者には、誰でもが選挙で選ばれるわけではない。選挙資金を多く集めないと選ばれない。
これは、富者である資本家が支配する資本主義のもとでの民主主義の必然である。
これは金権主義で、民主主義ではない。
◇
これに対峙しているのが、中露型の自由と民主主義である。これを露中印の30億人をはじめ、世界の大多数の人たちが支持している。
だからといって、これも普遍的ではない。改善すべきことは少なくない。
いま、望まれているのは、両者の切磋琢磨である。それには、もちろん武器はいらない。両者は、一刻も早く武器を捨てて、互いに相手から学ばねばならない。
くり返そう。武器は一刻も早く捨てよ。そうして日本は、そのために全力で協力せよ。
(2022.04.25)
(前回 対露制裁が世界に食糧暴動を招く)
(前々回 親米派の退潮)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日