シンとんぼ(9)化学肥料使用量の30%低減(2050)①2022年9月9日
シンとんぼは、無謀にも「みどりの食料システム戦略」に掲げられたKPIに切り込んでいる。
このような無謀な挑戦をするのは、みどり戦略が農業現場でも十分に実践が可能な内容になり、それによって、環境影響を低減しながらも国産農産物の生産が向上して、国民の胃袋は国産で賄える状態になることを願っているからに他ならない。シンとんぼの視点がどれだけのお役に立てるのかはわからないが、このような考えもあるっていうことが理解頂けたらありがたい。
能書きはさておき、今回から、環境保全テーマの2番目「化学肥料使用量の30%低減(2050)」に切り込んでみようと思う。
まずは、このKPIに関する農水省の現状認識と、それにおける課題をどのようにとらえているかについてみてみよう。最初の現状認識は、「化学肥料は、作物の収量を高めるために農業現場で多用されてきた一方で、農地への有機物投入減少による地力の低下や、過剰施用による環境中の流出などが問題。」である。
これを理解するのには、化学肥料と有機肥料の違いを知る必要がある。
作物含め植物は、土から生育に必要な養分を吸収するが、その時には無機化合物の状態で吸収する。化学肥料は、無機化合物の状態で土壌に施用するので、施用すれば即、水に溶けて作物が利用できる状態になって作物が吸収する。つまり、「直ぐに効く」のだ。これに対し、有機肥料は、栄養分が有機物の状態で含まれており、作物が吸収できる(利用できる)ようになるまでに加水分解であったり、微生物分解であったりと、有機物が分解されて無機化合物になる過程を踏まなければならず、施用しても肥料の効果が出るまでに時間がかかる。つまり、有機肥料は「ゆっくり効く」ものだ。
なので、一般に有機肥料は地力を高めるための土づくり資材として作付より前に使用され、化学肥料は豊かな収穫を得るために直ぐに必要な養分として作付直前に施用されるのが一般的で、その性能の違いで使い分けられてきた。
ところが、肥料価格が高騰した時に生産コストを低減するために、真っ先に土づくり資材が省略され、代わりに比較的安価に手に入る化学肥料が重用される結果となった。農家経営上、致し方ない選択だとは思うのだが、化学肥料のみ使用する場合でも、施肥コストを最小限にするため、作物生育に必要な分だけしか施用せず、肥料の過剰施用を極力避けていた。肥料が価格の優等生であった時代であれば化学肥料の過剰施用もあったかもしれないが、前回の肥料価格高騰(平成20年)以降は、土壌診断に基づく適正施肥が推奨され、化学肥料の過剰施用は行われなくなっていった。
そうすると、「化学肥料の過剰施用による環境中への流出などが問題」は本当に課題認識として正しいのであろうか? これをいうのであれば、河川の富栄養化の推移と化学肥料の使用量との関係性を示すデータなど、化学肥料を減らさなければならない理由を示してほしいと思うがいかがだろうか? 残念ながら、みどり戦略のどこを見ても、こういった、誰もが納得する根拠は示されていないと思うのだが・・・。
重要な記事
最新の記事
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日