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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】乳製品の輸入義務をめぐる説明はどんどん変化2023年2月16日

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14万トンの生乳を減産させても14万トンの輸入を継続するのは、国家貿易だと最低輸入義務だからと言っていたが、次は、メーカーが求めているから、と言い換え、今度は、輸入に頼る日本が輸入を止めると信頼をなくし、今後、輸入できなくなると困る、と説明が変化している。

他国は満たしていないし、その必要もない

ウルグアイラウンド交渉結果におけるミニマム・アクセス、カレント・アクセスの取扱いは、次のとおりである。
①カレント・アクセス:TRQ(低関税適用輸入数量)が国内消費量(1986年~88年)の5%を超えている場合は、その水準の輸入機会を提供する。これが日本の乳製品である。
②ミニマム・アクセス:TRQが国内消費量(1986年~88年)の5%以下の場合は、1995年にその3%の輸入機会を提供し、先進国の場合は2000年に、開発途上国の場合は2004年に5%(関税化措置を実施しない場合は、8%=当初の日本のコメ)に引き上げる。
つまり、1993年UR合意の「関税化」と併せて輸入量が消費量の5%に達していない国(カナダも米国もEUも乳製品)は、消費量の3%をミニマム・アクセスとして設定して、それを5%まで増やす約束をしたが、実際には、せいぜい1~2%程度しか輸入されていない。実際に、最新のデータで確認すると、前々回のコラムでも示した表を再掲するが、カナダは、平均的には5%を超えているが、米国は2%、EUは1%程度で、筆者の指摘のとおりである。

乳製品の輸入義務をめぐる説明はどんどん変化

乳製品以外も含めたミニマム・アクセスorカレント・アクセス全体についてもTRQ(1374品目)の充足率を確認してみよう。データは、木下寛之JCA顧問が整理されたものである。
USDAの資料によると、各国のTRQ(ミニマム・アクセスorカレント・アクセス)の充足率は、次のとおりである。説明によると、食糧管理特別会計(現在の食料安定供給特別会計)を含め、国家貿易企業(STEs)の方が高い充足率になっていると指摘しているが、STEsが100%の充足率を達成すべきであるとの指摘はない。

乳製品の輸入義務をめぐる説明はどんどん変化

また、WTOの資料(WTO G/AG/W/183/Rev.1)によると、TRQ(ミニマム・アクセスorカレント・アクセス)の充足率の推移は、2014年 54%, 2015年 53%, 2016年 54%, 2017年 54%, 2018年 54%, 2019年 46%, 2014-2019年の単純平均で53%となっている。

ミニマム・アクセスは日本が言うような「最低輸入義務」でなく、「輸入数量制限」を全て「関税」に置き換えた際、禁止的高関税で輸入がゼロにならないように、ミニマム・アクセスorカレント・アクセス内は、低関税を適用しなさい、という枠であって、その数量を必ず輸入しなくてはならないという約束ではまったくない。低関税でのアクセス機会を開いておくことであり、最低輸入義務などではなく、それが満たされるかどうかは関係ない。

欧米にとって乳製品は外国に依存してはいけない必須食料だから、無理してそれを満たす国はない。かたや日本は、すでに消費量の3%を遥かに超える輸入があったので、その輸入量を13.7万トン(生乳換算)のカレント・アクセスとして設定して、毎年忠実に満たし続けている、唯一の哀れな「超優等生」である。コメについても同じで、日本は本来義務ではないのに毎年77万トンの枠を必ず消化して輸入している。米国との密約で「日本は必ず枠を満たすこと、かつ、コメ36万は米国から買うこと」を命令されているからである。

農水省は最近、こう説明したという。「国際約束上、最低輸入義務とは書かれていない。ただ、国家貿易で輸入している場合、カナダの乳製品については、毎年必ずではないが、枠いっぱいを輸入している年もある。日本が枠を満たさなかった場合、WTOに訴えられる可能性を恐れている。」意味不明である。国際約束でないのに、訴えられるわけがないし、訴えられても、訴えは退けられるはずだ。何を恐れているのか。

さらには、説明が変わり、メーカーが求めているから(現実は、輸入乳製品価格が高くなり、入札しても落札残が生じている)、と言い換え、今度は、輸入に頼る日本が輸入を止めると信頼をなくし、今後、輸入できなくなると困る、と説明が変化している。全く根拠になっていない。この輸入を止める。そして国内の酪農家さんと国内の消費者を守るために、政策転換する必要がある。

外国の顔色をうかがって農家や国民に負担を負わせるような政治行政はもう限界に来ている。酪農が壊滅すれば、国民の牛乳も消滅する。農協も消滅する。メーカーや関連産業も消滅する。皆、運命共同体である。社会全体で、それぞれがやれることをやろう。

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