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【やさしい経済の話】日銀新総裁と経済のゆくえ(上) 浅野純次・元東洋経済新報社社長2023年6月10日

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日銀総裁が10年ぶりに交代しました。農家の主婦、里花(りか)さんにとって日銀総裁など雲の上の人ですが、この10年はいったい何だったのか、これから金融や財政、為替、そして景気にどんな影響が出てくるのか、興味津々のようです。久しぶりに従兄でジャーナリストの大地さんがやってきたので、さっそく質問を浴びせ始めます。

植田日銀総裁(首相官邸HPより)植田日銀総裁
(首相官邸HPより)

里花 大ちゃん、お久しぶりね。この間、日銀総裁が交代したので、かじ取りはどうなるのか、いろいろ教えてちょうだい。できるだけやさしくね。

大地 ここしばらく忙しくて...。でも今日は久しぶりにいろいろ話ができそうで楽しみだ。皆さん、お元気?

里花 おかげさまで。農家もこのところ大変なのよ。ところで黒田東彦さんって日銀総裁を10年務めたそうだけど、これって最長記録なんだって? 

大地 日銀総裁というのは1期5年で時の政権が任命するので、安倍晋三、菅義偉政権が気に入ったということかな。でも特段の業績を上げたわけではないし、むしろ副作用など後始末が大変だよ。

里花 問題が多いと普通は交代よね。

大地 いや、アベノミクスの第一、第二の矢、つまり金融と財政で忠実に働いたので政権の覚えはめでたかったんだ。財政にしても、この10年で日銀は国債を560兆円分も買い取っているからね。この3月末の保有国債は581兆円にもなる。この間、マイナス金利を維持し続けたおかげで、こんなに巨額の国債を保有してもなんとかなっているように見せてこられたんだ。

里花 580兆と言われてもどれだけ大きいか、イメージがわかないわ。

大地 日銀の保有国債は、日米戦争が始まったときでGNPの10%ちょっと、戦後のハイパーインフレ時代でも20%以下だったのに、黒田日銀ではなんと95%だ。経済規模との比較では異常なほど膨れ上がっている。これを異常と思わないのは、だんだん熱くなるのに気づかないで湯につかっている、釜の中の蛙(かえる)の話を連想させるね。

里花 黒田さんて記者会見ではいつも自信満々のような感じだったわね。

大地 記者の質問には「今はそれに答える時期ではない」とか「今はまだ途上だ」とか「やってきたことは正しかった」などと、反省の弁はまるで聞かれなかった。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が、銀行破綻を受けた5月の記者会見で「後悔はあるか」と聞かれて「少しはある」と素直に振り返ったのと比べても、あまりに自信過剰だったね。

里花 合格点あげられるの?

大地 ぼくの周りのエコノミストや記者たちで合格派はごく少数だったね。でも日銀との関係を悪くしてしまってその後の取材などで不都合が生じないように、みな相当に遠慮しているからそういう記事にはならないんだ。

里花 エコノミストも記者さんも人の子ってことかしら。

大地 へたに日銀のご機嫌を損ねると、特落ちといって自社だけがニュースから落とされてしまうこともありうる。記者にとっていちばん嫌なのは特落ちだからね。新人の頃、先輩から日銀は大蔵省(当時)以上に官僚的だと言われたのは今でも忘れられない話だ。

里花 日銀内の取材も大変なのね。そのあたりも興味津々だけれど、それにしても黒田さんはなぜあれほど異次元緩和にこだわったの?

大地 総裁になった直後の記者会見で黒田さんが「2」を連発したのは知ってる? 物価2%上昇を2年以内に安定的に達成するためにマネーサプライを2倍にすると、「2」と書いたパネルを並べて説明したんだ。これがトラウマになったという人もいる。あれだけ大見得を切った上に、「2」がアベノミクスと密接につながっていると考えれば、任期満了まで異次元緩和にこだわったのは無理からぬ話だったろうよ。

里花 「2」のパネルと言われると、コロナの初期に小池百合子都知事が「五つの小」とか言って小皿料理を勧めたりした記者会見を思い出すわ。2人ともスタンドプレー的というのか。それにしても生前の安倍さんは物価の2%上昇目標についてなんて言っていたの?

大地 『安倍晋三回顧録』がよく売れているのは知っているかな? 安倍ファンに人気なのは無理もない内容だからね。もちろんアベノミクスの話は出てくるんだけれど、面白いことに本人、あんまりこだわっていないんだよ。黒田さんが総裁になるときのことと合わせてさらっと触れているだけだ。しかも「完全雇用さえ達成されていれば物価上昇率は1%でも問題はなかった」なんて言っている。その程度だったのか、これでは黒田さん、ガクッと来たんじゃないの、というのが読んだ時のぼくの率直な印象だった。

里花 黒田さんがマイナス金利にこだわった話は3月に金利の話を聞いたときにも出た気がするけれど、ほんとに物価2%上昇にこだわったからだったのか、物価はほんとは講釈の上で必要だっただけなのかしらん。マイナス金利そのものが重要だったのかと、今の話を聞いて、ふと思ったんだけど。

大地 えーっ、すごいこと言うね。もちろん物価を安定的に2%上昇に持っていきたいと黒田さんが本心、思っていた可能性は高いと思うよ。ただし、里花ちゃんが勘ぐったように異次元緩和をやめるわけにいかなかった事情のほうがもっと重要かもしれないね。

里花 異次元緩和をやめれば、当然、金利は上がり始めるわよね。

大地 問題は金利水準そのものだね。もし金利が上がり始めると、日銀の支払い金利は急拡大することになるからね。特に民間金融機関が日銀に預けている巨額な当座預金の金利が増えて、日銀が債務超過になる可能性がある。怖くて金利には手がつけられないというのが日銀の本心だったかもしれないね。さーて、少しのどが渇いてきたなぁ。

里花 はいはい、まず冷たいお水でもどうぞ。

【やさしい経済の話】日銀新総裁と経済のゆくえ(下)に続く

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