屋外での子どもの遊び【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第254回2023年8月31日
山野、田畑、河川、沼等も子どもたちの遊び場であり、遊び道具の宝庫だった(もちろん作付けしている田畑に入る、作物に手を触れるのは禁じられており、それをやったりするときつく怒られたものだった)。
おもちゃなどそんなに買えない時代、ともかく身の回りの物、何でもおもちゃにして遊ぶしかなかった。水や泥、川原の砂や小石ももちろんのこと遊びの材料である。棒きれをもっての戦争ごっこ、チャンバラごっこは、時代を反映してしょっちゅうだった。
五寸釘(長さ15センチの釘)一本も遊び道具となった。釘をみんなでかわるがわる投げて土に刺し、自分の刺したところを線で結び、自分の線で相手の線の進路を閉じたら勝ちとなる「釘刺し」などという遊びもあった。
缶詰の空き缶も利用して遊んだ。二個の缶詰の空き缶の底に釘などで穴をあけ、そこに1mくらいの荒縄を通してつなぎ、その缶の上に,足の前半分を載せ,下駄のようにはいて歩く。カッポカッポという缶の音が馬の足音と似ているものだから、馬に乗ったあるいはなった気分で歩くのである。
そうだ、空き缶を利用してかくれんぼをする「缶蹴り」もやった。
それに縄跳びだ。縄はどこの家にもあった。「大波小波で 風が吹いたら山よ 郵便配達 お上のご用でエッサッサ 笹巻きこ 木っ端のこ」などの唄にあわせて何人かでもやったものだった。縄跳びは女の子中心だが、男の子が入ってやっても小さいうちは何にも言われなかった。
秋から春にかけて小屋にうず高く積んである脱穀した稲ワラの山に穴をあけたり、自分たちで組み直したりして、隠れ家だとか秘密の陣地だとかをつくる。スリルがあるのだが、ワラの山を崩してしまったりするのと危険であることから大人に怒られたものだった。
塀の上を綱渡りのように歩き、屋根に登り、木登りをしたりもした。ナイフやカミソリでいろんなものを切って何かをつくっても遊んだ。
怖がりのくせに危険な遊びも好きだった。
夏は水遊び、となるはずだが、私は水鉄砲で遊ぶくらいで、水浴びなどはしなかった。というよりはできなかった。泳げるような大きい川がなかったからだ。近くの川は農業用水路できれいではあるが、町の中を通ってくるせいか瀬戸ものやガラスの破片などが川底に落ちていたりして川の中で遊ぶのは危険でできない。田んぼの小川はきれいだがあまりにも細くて浅くて泳ぐどころではない。ため池の沼が一ヶ所あるが、そこで泳ぐのは禁止されている。もちろん学校にプールなどあるわけはない。それで子どもの頃はまったく泳げなかった。
当然のことながらまともな釣りもしたことがない。釣りをするような川や湖沼がないのである(海はもちろんのこと)。用排水路の小川に網を入れてざっこ(雑魚=小鮒やどじょう)をつかまえる程度だった。
食べ終わって要らなくなったハマグリの貝殻、それをもらい、その表裏の殻二枚をピタッと合わせてしっかり手に持ち、その頭(蝶番のある方)を大きな固い石に当ててごしごしこする。そしてそこに穴を空ける。固いのでかなり時間がかかるが、やがてそれぞれの貝殻に一つ、計二つの穴が空く。その貝殻を合わせて片一方の穴に口をつけて息を吹きつけるともう一つの穴から空気が抜け出る、そのときに口笛のような音が出る。つまり貝の笛をつくったわけだが、時間はかかる上に失敗する場合もあり、今考えるとよくやったもの、おもちゃのない時代だからこんなことで遊べたのだろう。
笛と言えば、草葉でもつくった。
春先、田んぼ一面じゅうたんを敷き詰めたようにスズメノテッポウが群生する。これは私の好きな景色だったのだが、ほぼ乾いて固くなっているその田んぼの中に入ってスズメノテッポウを一本採り、穂をスポッと抜いて鞘だけ残し、それを笛にする。のだが、今やろうとしても作れないだろう、完全に忘れてしまった。ともかく春に田んぼに何か用事があっていくと、その笛をつくり、吹いて遊んだものだった。それからササの葉っぱで笛をつくった記憶もある。
ササといえば笹船もつくった。川のところにくると、笹の葉っぱを採って笹船をつくり、川に浮かべて競争をする。船がつくれるような葉っぱがないときはみんなそれぞれ自分の好きな葉っぱや木切れをとり、それをそのまま用意ドンで川に流す。どっちが先に行くかの競争だ。渦に巻き込まれて見えなくなってしまうもの、よどみに入ってまったく動かなくなったもの、大騒ぎしながら川の流れに沿って走る。
草、これは農作物にとっての邪魔者なのだが、子どもたちはそれも遊び道具にした。そしてそれを教えるのは兄姉、近所の年上の子ども、さらに家にいる未婚の叔父叔母だつた。
パソコン、スマホでゲームをして遊ぶ、それもいい、しかし自然の山野草で遊ぶということもあっていいのではないだろうか。緑豊かな日本のことだ、空き地にはすぐに草木が生える、遊び場、遊ぶ材料は数多あるのだ。そしてそれを次世代に引き継いでいくこともあっていいのではなかろうか。
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