【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】会計検査院が食料自給率目標の「形骸化」を批判2023年12月14日
会計検査院がこのタイミングで食料自給率目標について、達成の意思と見込みに基づいた具体的な取組みと成果があったのかを検証したことは高く評価される。
会計検査院が食料・農業・農村基本法の改正に伴い、これまでの基本計画に基づいた生産性向上の施策と食料自給率について数字的な分析を初めて行った。検査院のレポートは、「食料自給率目標を掲げるだけで、成果がでていないし、自分たちが立てた目標すら検証していないのはいかがなものか。農水省の怠慢ではないか」といった趣旨である。
検査院がこのタイミングで自給率目標について検証したことは高く評価される。確かに、これまで5年ごとに目標値は定めたが、それは「アドバルーン」であり、達成の意思も見込みもなかったのではないか。だから、達成のための具体的な工程表や詳細な予算措置が示されたことも達成できていないことへの検証もなかった。今後は、検査院の指摘を受け止め、そうすべきである。
しかし、今回の基本法の改定では、「食料自給率」という言葉自体が消えており、基本計画においても、自給率目標の位置づけを「格下げ」する方向で進められており、これで「もう検証しなくてもよいだろう」というような方向になったら、本末転倒だ。「自給率向上」を明記し、達成への具体策を示すべきだ。
イギリスは30%台の自給率を70%まで向上させた。その要因を調べ、どういった政策が有効だったのかを突き止める必要がある。イギリスの農業所得に占める直接支払い補助金の割合は90%を超えている。日本は30%程度で、先進国最低レベルだ。日本では、農家に直接届く政策が格段に少ない。これが大きな要因だ。
生産振興に日本もかなりの予算を使っているというが、欧米諸国に比べたら雲泥の差があるし、効果が出てないことは、農家の平均年齢が68.4歳(2022年)で、さらに、今次の生産資材価格高騰で、廃業と耕作放棄地の激増していることからも明白だ。
このままでは、あと10年以内に、日本の農業・農村が崩壊しかねない。「有事立法」でそのときだけ強制増産だ、と要請しても間に合わず、不測の事態に国民の命は守れない。欧米のように、農家の所得を直接的に支える政策を強化することが急務である。
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