(370)大学生の変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年2月9日
若者はいつの時代も時流に敏感です。そこで、この半世紀の大学生を分野別に大きくとらえてみました。
基本的にコラムは文章だが、たまには大きな表をじっくり眺めて見るのも趣がある。日本の大学生は、過去半世紀にどのような分野に進んだのか、1962年から20年単位で一覧表を作成してみた。元データは文部科学省の学校基本調査である。
この調査における現在の大分類は11分類(人文科学、社会科学、理学、工学、農学、保健、商船、家政、教育、芸術、その他)である。例えば、保健には医歯薬看護などが含まれる。また、工学と農学は、このコラムの主旨との関係上、細項目まで記載した。さて、これをじっくり眺めてみるといろいろなことがわかる。
詳細は別にして、興味深い点だけを記しておきたい。例えば、工学系では鉱山学や金属工学を専攻する学生が(表面上?)激減している。繊維工学なども同様だ。レア・アースやレア・メタルの重要性は言うまでもない。伝統的な学問名称ではなく「その他」として激増している工学分野にこうした分野が含まれていれば良いが、その辺りはどうなのであろうか。筆者は全くの専門外なため不案内である。
農学系では農業経済学を専攻する学生が1982年当時と比較すると半減している。これも「その他」分野の激増と対象的だ。農学関係の名称自体が、環境、生態、生命、生物資源などの名称に変化してきているため、こうした統計では「その他」に含まれてしまう。2023年度を見ると、工学では30%が「その他」であり、農学では実に47%が「その他」になる。筆者の職場(食産業学)も「その他」になる。だが、そこに農業経済学や筆者が関係しているフードシステム学などがどの程度含まれているかは別問題である。
そもそも大学生の総数が1962年当時と比較して3.8倍に増加している。表の1番右側に単純な割り算で何倍に増加したかを示した。人文科学、社会科学を専攻する大学生はそれなりに増加したが、割合で見れば全体の増加を下回る。「保健」分野は当時の10倍だし、先に述べた工学の「その他」は38倍、農学の「その他」は71倍である。ただし、いずれも絶対数として工学や農学を専攻する大学生の数は全体の伸びよりも少ない。従って、現場は明らかに大変である。
ひとつの例だが、筆者と同世代が大学受験をした1982年当時、原子力工学を専攻した大学生は1,567人いたが、現在では363人である。この分野、東日本大震災により廃炉までに何十年もかかることが判明している中で、この人数で本当に大丈夫なのかと、全くの素人でも考えてしまう。
最近は、将来論議が盛んで、「○○年後の日本」などが各所で議論されている。だが、社会を支える各々の分野において必要なスキルを備えた人間がどの位いるか、それを踏まえない論議はどうも印象先行のような気がしてならない。
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将来デザインが「画餅」にならないようにしたいものです。
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