切り花の市場評価は外的品質だけでなく内的品質も重視【花づくりの現場から 宇田明】第30回2024年3月7日
花は品評会が盛んです。入賞は名誉ですが、畜産のように売上には直結しません。
市場での評価は、品評会で競う見かけの美しさである外的品質だけでなく、目で見えない内的品質も重視されるからです。
今回は、切り花の内的品質とはなにかを説明します。
切り花の品質には、外的品質と内的品質があります(表)。
食用ではない花には、野菜や果実のような糖度や酸度、栄養などの絶対的な尺度はありません。
品評会では見かけである外的品質で審査されます。
外的品質とは、花が大きい、茎が太いなどのボリューム、花の色や鮮やかさ、切り前が適期でそろっている、選別・結束技術などです。
市場での評価は、見かけの美しさである外的品質がベースになるのはもちろんですが、目で見えない内的品質も重視されます。
内的品質は目で見てもわからないので、産地、生産者を「信用・信頼」するしかない品質です。
具体的には、クレームリスクと安定供給です。
切り花でもっとも多いクレームはかび(灰色かび病)です。
切り花の弱点は花弁や葉にかびが発生しやすいことです。
高温多湿の日本、切り花の生産・流通はかびとの闘いといっても過言ではありません。
春と秋の長雨、梅雨の時期にはかびが大発生します。
また高温期には輸送中に葉が蒸れ、かびが発生します。
ハウス内は湿度が高いので、かびに弱い品目では薬剤防除に加えて加温や冷房による除湿が不可欠です。
生産者はほ場、ハウスでの薬剤防除、湿度環境改善、収穫後の選別を徹底し、かびの兆候が見られない花を出荷していますが、それでも市場到着時や花店での店頭でかびが出ることがあります。
その原因について、生産者、市場、小売間で責任を押しつけあうことはめずらしくありません。
そのため、どんなに外的品質がよくても、かびのクレームが多い、あるいはクレームの心配がある産地・生産者の切り花は市場価格が安くなります。
日持ちもせりの時にはわかりません。
消費者が生けてみた結果でわかるだけです。
花屋は、顧客からすぐに萎れた、つぼみが咲かなかったなどのクレームがあった産地・生産者の花は二度と購入しないでしょう。
古典的なクレームに、秀品に優品が混ざっている選別不良がありますが、最近は見受けることが少なくなりました。
安定供給は市場流通の基本です。
当コラムの第8回で紹介したように、花は野菜のような年中一定の需要がありません。
「花産業がもっとも依存しているのは『物日(ものび)』」
https://www.jacom.or.jp/column/2023/04/230420-66189.php
需要は、春秋の彼岸、お盆、年末と母の日の物日(ものび)に集中します。
3月は、桃の節句、ホワイトデー、卒業式、送別会などの行事があり、需要が多い月です。
大安の週末にはブライダル需要があり、バラなどの洋花がよく売れます。
花はこのように、いるときといらないときがはっきりしている農産物です。
したがって、花の安定供給とは、花屋が欲しいときに欲しい量を出荷することです。
おなじ高品質な花でも物日に出荷すれば高単価ですが、物日が終わったら二束三文になることはめずらしくありません。
花屋は物日に確実に必要な花を確保するために、せりよりも予約相対を重視しているので、納期を守り、欠品を出さない産地・生産者でないと、信用・信頼を得られません。
どんなに生産者が努力をしても、農産物はお天気任せ、計画通りには進みません。
そのため、日ごろからの生産情報、出荷情報を市場、花屋に発信することが重要です。
外的品質は目で見てわかる品質、内的品質は見てもわからない品質と区別しましたが、現実には市場で花屋が花を目にすることができるせりの割合が年々低下しています。
大手市場ではせりは1割ほどで、9割近くは花を目にすることがないウエブでのせり前取引。
外的品質さえ目にすることがなくなっています。
さらには、対面せりを廃止し、完全オンラインせりに移行した花市場まであります。
それらは出荷情報だけでの取引であり、信用・信頼で成りたっています。
外的品質、内的品質ともに信用・信頼されている産地・生産者が、高い市場評価を得ることができます。
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