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シンとんぼ(107) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(17)-2024年8月24日

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シンとんぼは令和3512日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを考察している。シンとんぼなりの結論は、「現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろう」ということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかについて検証しながら持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大に向けた新技術である「生物学的手法を駆使した害虫防除技術」の具体的な内容を検証している。その技術の1つに「共生生物を利用した害虫防除技術」があり、そのアプローチ手法には、①産雌性単為生殖化の利用、②細胞質不和合成の利用、③宿主の生存日数を減少させる微生物の利用、④抗生物質殺菌剤の利用、⑤耐性や適応性の変化の利用、⑥パラトランスジェネシスの利用の6つがある。

今回は、3つ目の③宿主の生存日数を減少させる微生物の利用を紹介する。

この技術も、前回までに紹介した①、②のアプローチと同様に、ある種の共生微生物を害虫に感染させてある種の作用を引き出させる技術だ。

今回の宿主(害虫)の生存日数を減少させる微生物の利用とは、害虫にある種の微生物を感染させるとその害虫の成虫寿命が短くなって早死にすることを活用するものだ。これがどのようにして害虫防除に役立つのかというと、1つ目が、成虫になっても産卵をする前に死んでしまえば次世代が産まれないので害虫の数が減って被害を減少させることができることだ。これを成功させるには、成虫になったら出来るだけ早く、産卵する前に死亡するような働きをする共生微生物を選び出すことが必要になる。2つ目が、害虫が伝搬する媒介ウイルスの伝搬を減らしてウイルス病の発生を減らすことできることだ。アブラムシ類やアザミウマ類、コナジラミ類といった害虫が伝搬する病原ウイルスは、一旦害虫の成虫体内で潜伏・増殖した後に害虫の吸汁行動によって伝搬するが、病原ウイルスが増殖する前に害虫の成虫が死んでしまえば病原ウイルスが伝搬されることが無くなり、ウイルス病を防ぐことができる。これを成功させるには、成虫を早死にさせる共生微生物をどうやって害虫に感染させるかが鍵となるが、作物ウイルスでの活用例はまだないので、今後の研究の進展を待つしかないが、2050年までに実用化されるかどうかは未知数のようである。

(つづく)

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