(409)穀物サイロ・20周年・リース作り【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月8日
穀物サイロと言えば、細長いコンクリ―トの筒が何本も並んでいる姿を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。港の近くや農村地帯ではよくある風景です。
米国の農村地帯に行くとトウモロコシ畑の中にぽつんと一軒家のように佇む穀物サイロを普通に見かける。一般にはカントリー・エレベータと呼ばれる穀物サイロである。収穫したトウモロコシなどを一時的に保管し、その後、大量輸送の流れに乗せるために出荷する施設である。
筆者が現役の頃の米国では、複数のカントリー・エレベータで集荷された穀物がミシシッピ川の川沿いにあるリバー・ターミナル(エレベータ)に集まり、まとめられた上で、はしけ(バージ)に乗せて南部ルイジアナ州のニュー・オリンズまで輸送された。そこで輸出エレベータ(農協系は全農グレイン)を通して外洋航海船に乗せられ、日本などに輸出される、という流れが一般的であった。多少の変化はあるだろうが、現在でも大きな流れは同様と理解している。
こうした仕事に携わると、「ビジネスは輸送である」という点を強く感じる。顧客のニーズや品質あるいはサービスなど、重要な要素はいくつもあるが、最後は「モノ」が無ければ話にならない。顧客が希望する時に、言い換えれば契約通りに、「モノ」が顧客の手元に届かなければ全てが水泡に帰す。その意味では輸送が全てである。
そういえば、山本七平氏は名著『私の中の日本軍』の中で、「戦争とは輸送である」と指摘している。例えば、「攻撃そのものは『分単位』の出来事だが、その「分単位」まで到達するには、いわば基本的計画から細部の計画、その実施である終結・輸送という長い期間がある」。さらに、「外部の目はその結果の一瞬しか見ない。しかし内部の人間には、実に時間と労力のほとんどが、その一瞬に至る道程で消費・消耗される」と、物事の本質を見事に表現している。
現代の我々は、好きな時に好きな食品・農産物を食べることができる。それは誰かが、物理的に輸送してきてくれたからである。必要なモノが不足すると文句を言いたいのは人の常だが、常に過不足なく揃えるのも誰かが責任をもち実施しているからであり、寝ている間に「七人の小人」や「妖精さん」が完璧にそろえてくれるからではない。
ところで、11月3日、勤務先の大学で学部/学群設立20周年の記念イベントが実施された。大学本体ではなく、あくまで現在の学部/学群の行事である。20年が長いか短いかは判断が分かれる。だが、同窓会主催の懇親会に参加してくれた1期生たちと話した際、彼ら彼女たちが入学した20年前の時点では、現在の大学1年生はまだ誕生していなかったという当たり前の事実に直面し、お互いに驚いたのも面白い。
記念イベント直後に数名の元教員に対する名誉教授の称号授与式が行われ、久しぶりに懐かしい先生方と話ができた。本来、この2つは別の行事だが20周年と合わせて実施したものである。
いずれもその瞬間だけを見れば、「そういうものか」で済む話だが、ここに至るまでに多くの時間と労力がつぎ込まれた結果である点は、先に述べた「輸送」と変わらない。結果は重要だが、物事はそこに至る過程も重要である。
なお、今回、私の研究室では同時開催された大学祭のイベントのひとつとして、これも10年以上前に退職された先輩教員の提案と支援を受け、リース作りのワークショップを実施した。どうなるものかと思ったが、学生達も参加者もそれなりに楽しんでくれたようで何よりである。人件費がほぼかからないボランティア・イベントだからこそ可能な内容である。貴重な機会と資材をご提供頂いたI先生には深くお礼申し上げたい。
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3連休は天気が良かったのが何よりでした。
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