浅薄な政争に明け暮れた2024年【森島 賢・正義派の農政論】2024年12月16日
2024年が暮れようとしている。この1年の政治論争を振りかえると、それは浅薄な論争に明け暮れた1年だった。政治が、いかに薄汚いカネにまみれているか、を暴露する1年だった。その表層を、多くの報道は、おもしろ可笑しく伝えていた。
この政争の目的は、いったい何なのか。政治を清廉潔白な人士に任せさえすれば、それでいいのか。そうではないだろう。だが、報道はそのことを伝えない。
だから、多くの国民は、白けていた。報道などによる、争点隠しの下劣な国民総白痴化運動の一環とさえみていた。
多くの国民が知りたいのは、政治とカネの問題を引き起こす日本の政治の、そして社会の深層に、何があるかなのだ。
薄汚いカネの出所を追求することに、筆者は反対しているのではない。だが、それは清廉な社会を築く、という高邁な政治戦略のための戦術ではないのか。それが見えてこない。そこを指摘したいのである。
上の図は、9月の総選挙のとき、投票を終えた30万人もの膨大な人数の国民を対象にして、何を最も重視して投票したか、を聞いた出口調査(NNN)の結果である。
これをみると、最も重視する政策は、「景気や雇用」などであって「政治とカネ」ではない。「政治とカネ」は、4番目で11%しかない。つまり、9人に1人の国民しか重視していない。浅薄な政争だからである。
. ◇
「政治とカネ」問題の深奥に何があるか。浅薄な政争ではなく、深淵な政争として考えよう。
問題は、カネの出所にある。出所が主権者なら、問題はない。だが、株式会社などの営利組織であることが問題である。
憲法を引き合いに出すまでもなく、株式会社などの組織に主権はない。民主主義国の主権者は、国民である。この深部の認識が、いまの「政治とカネ」政争の中にない。そうして、枝葉末節の議論を、延々と続けている。
◇
株式会社が主権者のようにして、政治にカネを出したら、どうなるか。
株式会社は、社長の命令に従い、株式会社の最高目的である営利を得るためにカネを使っている。これに反すれば、社長は株主である資本家から罷免される。
このように、株式会社が政治にカネを出すのは、資本家の私的な利益を増やすためである。そして、今までそれに成功してきた。だから、政治にカネを出し続けている。
つまり、資本家は自分の私的利益を増やすために、主権を持っていない株式会社などの法人を使い、それを隠れ蓑にして、日本の政治を壟断しているのである。
こうしたことを、民主主義国の憲法は認めない。
◇
資本家も1人の国民として主権がある、といいたいのだろう。
それなら、1億2千万の主権者のうちの1人として、1億2千万分の1の割合で政治に対する影響力を使えばいい。
カネに、物を言わせてはならぬ。
◇
さて、資本家の利益といったが、それは、いったい何か。いうまでもなく、それは搾取の結果である。だから、利益を増やすということは、搾取を強化することである。
つまり、こうである。資本家は、搾取して得た薄汚い「カネ」を使って、搾取をさらに強化する政策を、政治に要求しているのである。そうして、これまでこの要求を実現してきた。
◇
いまの「政治とカネ」問題の政争には、このような深部の議論がない。この深部にある強固な政治の岩盤を、突き崩そうという議論がない。そうして、最大野党を含めて、ほとんど全ての政党が、資本家に睨まれることを恐れて、わが党は保守政党だと自称している。
ここで、あらためて明確にしておこう。保守とは、社会の根底にあって、社会の骨格を形作っている搾取関係を守り、維持し強化する、という政治思想である。そうして、資本家から褒められよう、その対価として褒美をもらおう、とする政治思想である。
(1つ言っておこう。協同組合は、搾取の否定を最高の規範にしている。)
◇
このようにして、この1年間、与野党とも浅薄な政争を延々と続けてきた。だから、主権者である国民は、白けて見ているしかなかった。
新年も、こんなことを続けてはいけない。
(2024.12.16)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】ダイズ、野菜類、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年9月3日
-
【農協時論】小さな区画整理事業 生産緑地保全と相続対策の要に JA東京スマイル 眞利子伊知郎組合長2025年9月3日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年9月3日
-
【注意報】ねぎ、キャベツなどにシロイチモジヨトウ 府内全域で多発のおそれ 大阪府2025年9月3日
-
【注意報】いちごに炭疽病 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年9月3日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の仕上げ防除 カメムシ対策は必須 暑さで早めに対応を2025年9月3日
-
ミサイルは兵糧攻めに有効か【小松泰信・地方の眼力】2025年9月3日
-
「コウノトリ育むお米」4万4000円 JAたじまが概算金 「消費者も付加価値を理解」2025年9月3日
-
【人事異動】農水省(9月2日付)2025年9月3日
-
8月大雨被害に営農支援策 農機修繕、再取得など補助2025年9月3日
-
緑茶輸出 前年比9割増 7月の農産物輸出実績2025年9月3日
-
JA貯金残高 107兆337億円 7月末 農林中金2025年9月3日
-
よりよい営農活動へ 本格化するグリーンメニューの実践 全農【環境調和型農業普及研究会】2025年9月3日
-
フルーツプレゼント第3弾は新潟県産日本ナシ 応募は9月23日まで にいがた園芸農産物宣伝会2025年9月3日
-
9月9日を「キュウリの日」に 行政と連携して"キュウリ教室"初開催 JA晴れの国岡山と久米南町2025年9月3日
-
大学協同組合講座設置促進シンポジウム 9月16日にオンラインで開催 JCA2025年9月3日
-
脱炭素と環境再生へ 農林中金のコンソーシアムが本格始動2025年9月3日
-
『農地六法 令和7年版』発売 農地法関連政省令・通知を完全収録2025年9月3日
-
「アウト オブ キッザニア in えひめ」で「だしの伝道師」担当 マルトモ2025年9月3日
-
大阪・関西万博で「EARTH MART DAY」開催へ 食と農の未来を考えるイベント クボタ2025年9月3日