2025年も切り花の品薄単価高が続く【花づくりの現場から 宇田明】第52回2025年1月30日
2025年が始まっても、切り花の品薄単価高は、野菜と同様に続いています。
野菜は昨年夏からの天候異常が主な原因ですから、今年の天候が順調であれば豊作に転じるでしょう。
しかし、切り花の品薄は構造的な問題であり、国内生産の増加はあまり期待できません。

花業界は2020年、コロナ禍による需要激減という大きな危機に直面しました。
しかし、2021年からは一転してこれまでにない品薄単価高が続いています。
なぜ、これほど長期間、品薄がつづいているのでしょうか?
その要因は、国産の減少と輸入の伸び悩みです。
図のように、国内の切り花生産量は2000年には56億本ありましたが、右肩下がりに減りつづけ、2024年には推定で29億本。
25年間で27億本も減りました。
一方、2000年に8億本だった輸入は、2010年に13億本にまで増えたものの、その後は足踏みをしたままです。
では、なぜ国内生産が減りつづけているのでしょうか?
それには需要と供給の両面での問題があります。
「失われた30年」とよばれるデフレの時代に、花のマーケットは縮小しつづけました。
総務省家計調査によると、二人以上世帯の切り花支出額は、2000年の11,553円から2023年には8,034円へと30%減りました。
それに伴い、切り花の総供給量(国産+輸入)も64億本から43億本へと32%減っています。
国産切り花に限れば46%もの減少です。
マーケットの縮小は、生産者にとっての「いす取りゲーム」。
いすの数が次々と減らされ、座れなかった生産者が退場してゆく。
それに加えて輸入の参入が、いすの数の減少を加速させました。
では、品薄で空前の高値がつづいているのに、なぜ国内生産が回復しないのでしょうか?
①高値への不信感
生産者は、現在の高値が一時的な「品薄バブル」で、安易に増産をするのは危険と感じています。
それは農耕民族としての防御本能といえます。
植物のたねの、一時的に気温が高くなってもすぐに発芽しない防御システムとおなじです。
あわてて発芽すると、その後に低温が戻ってきたら新芽が枯れてしまいます。
②高齢者のリタイア
高度成長期に花づくりをはじめた団塊の世代が、後継者不足や温室・ハウスの老朽化を理由に次々とリタイアしています。
③農村のエネルギー喪失
高度成長期にはみんな儲けに貪欲。
花が軽労働で儲かるとみると、野菜、果樹、稲作などから花へ転作する多くの農家が存在していました。
いまは高齢化が進み、新しい品目にチャレンジするエネルギーが失われてしまいました。
④円安による輸入の停滞
輸入先1位の中国に対しても円安が進み、2000年の1元13円が、現在は21円です。
その円安が、輸入業者の経営を圧迫し、輸入の停滞を招いています。
さらに、日本の消費者が求める高品質基準が、輸出国にとって高いハードルとなり、日本が魅力的な取引先ではなくなったことも一因です。
以上のような要因から、2025年も切り花の品薄単価高が続くと予想されます。
花屋やエンドユーザーが高値に耐えられなくなると、マーケットは元の均衡縮小に戻ってしまいます。
そうならないために、生産性向上による安定供給が必須です。
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