【浜矩子が斬る! 日本経済】四つ巴のお手玉を強いられる植田日銀 トラの圧力"内憂外患"2025年4月21日
日銀の植田和男総裁は今、さぞや、苦渋の時を過ごしていることだろう。就任以来、彼はお手玉師を演じることを強いられてきた。三つのお手玉を落とすことなく、空中で躍らせることを求められてきた。だが、ここに来て、第4のお手玉が勝手に割り込んで来た。
エコノミスト 浜矩子氏
三つのお手玉は、すなわち、物価と賃金と金利であった。三つくらいなら、お手玉もそう難しくはないだろう。そう思われるかもしれない。だが、この三つのお手玉は、なかなか扱いが厄介だ。ずしりと重いものがある。お互いにお互いの動きを邪魔する力学が働く。
植田日銀としては、金融政策の正常化というミッションを達成したい。異次元緩和の世界から通常の金融調節の世界に帰還したい。経済実態の体温計として、正常に作動する金利を取り戻したい。それが可能になるためには、政策目標である物価の前年比2%上昇を安定的に定着させなければならない。これが一つ目のお手玉だ。二つ目のお手玉が賃金である。「物価と賃金の好循環」が実現されていることを確認出来なければ、先に進めない。三つ目のお手玉が、金利そのものだ。
物価上昇が需要の強さを反映したものなのであれば、政策金利を引き上げることは理にかなう。需要が強すぎて物価が上昇しているのであれば、需要を冷やすために金融引き締めすなわち金利引き上げを行うことの正当性を主張出来る。だが、物価上昇が国内需要の強さではなくて、海外から押し寄せて来る外的要因によるものであるならば、そのおかげで圧迫されている人々の生活は、金利が上昇すればさらに窮地に陥ることになる。
外的要因の一つが円安である場合、話はさらに厄介になる。円安を是正するためには、金利を引き上げることが一つの有効なやり方になる。それはそれでつじつまが合う。だが、だからといって、利上げが借金の返済負担を重くするという問題が払拭されるわけではない。
外的要因で物価が上昇している場合、そのことは、企業の生産コスト上昇を意味する。コスト上昇で企業の収益が圧迫されれば、経営者たちは賃上げをためらうようになる。いくら物価と賃金の好循環に貢献しろと言われても、無い袖は振れないということになってしまう。かくして、これまでの日銀は三つ巴の手強いお手玉を取りこぼしなく、空中で躍らせようとして来た。なかなかの冷や汗ものである。
ところが、ここに来て、四つ目のお手玉が躍り込んで来てしまった。その名はドナルド・トランプである。トランプ米大統領は、高関税大作戦で、世界中にインフレ亢進と景気悪化の複合病をまん延させようとしている。彼の高関税とそれに対する国々の報復関税が日本のインフレ加速をもたらすとすれば、それは内なる需要の強さによるインフレではない。そのようなインフレを理由に日銀が利上げを敢行することは、正当化し難い。海外要因によって国民の生活苦が深まっている時、利上げで日銀がそれに追い打ちをかけることには、国内政治の厳しい阻止圧力がかかる。
これだけでも、日銀の悩みは深まる。四つに増えたお手玉を取り落とさないよう、右往左往を強いられる。だが、問題はここに止まらない。トランプ大統領は、円安が嫌いだ。日本が為替相場を操作して円安をもたらし、不当に安い日本製品で米国市場を埋め尽くそうとしている。そのように決めつけている。そのスタンスに則って、日本に利上げを迫っているのである。日本が利上げを進めて、日米金利差が縮小すれば、円安が是正される。だから、日銀は利上げを進めるべし。そう言っている。
さぁ困った。日本国内では、利上げ見送りの政治圧力が強い。トランプ親爺さんからは利上げ圧力がのしかかって来る。この四つ目のお手玉にどう対処するか。日銀のお手玉スキルが厳しく問われる。
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