なぜか前年産を下回る6年産米の検査実績【熊野孝文・米マーケット情報】2025年5月7日
農水省は4月30日に3月31日現在の令和6年産米の検査結果をまとめ公表した。
それによると水稲うるち米は406万1700t、水稲もち米19万t、醸造用米9万2100t、合計434万3700tとなっている。令和5年産米との比較では、前年同期の検査数量は合計で441万5400tであったので、それよりも7万1700t少ないという結果になっている。統計情報部の調査では6年産主食用米の生産量は679万2000tで、5年産米より18万t多いという結果を公表しているのだが、検査数量は逆に減少している。なぜ、このような結果になるのか農水省は詳しく説明する必要がある。
コメの生産量と検査結果が食い違うのは珍しいことではない。過去には生産量よりも検査数量が多くなった産地もあったほどで、こうした結果を見ると生産統計の精度に疑問を持たれるのは当然だろう。その意味では6年産米の検査結果も首を傾げざるを得ないが、その前に過去の年産別検査数量の推移を辿ってみると、今から10年前の2014年産米(平成26年産米)の水稲うるち米の検査数量は527万4700tもあった。2024年産(令和6年産米)よりも100万t以上も多かったわけで、わずか10年で100万t以上も減ってしまったということの方が驚きである。
ちなみに家庭用精米の御三家と言われる新潟コシヒカリ、秋田あきたこまち、北海道ななつぼしの2014年産と2024年産米の検査数量を比較してみると、新潟コシヒカリは2014年産が33万1828tであったが、2024年産米は25万0236tになり8万1592t、率にして24%も減っているのである。新潟コシヒカリは2023年産米(令和5年産米)が高温障害で大打撃を受けたが、それでも検査数量は29万5508tあった。2024年産(令和6年産)はそれよりも4万5272t、15%も少ない。POSデータから推計した量販店での年間販売必要数量を満たすことが出来ない状況になっている。
秋田あきたこまちは、2014年(平成26年)の検査数量は33万5379tであったが、2024年(令和6年)は25万1542tで、8万3837t、率にして25%減っている。新潟コシヒカリ、秋田あきたこまちとも10年で4分3ほどの生産量になってしまったのである。比較的生産量の減少率が緩やかなのが北海道ななつぼしで、2014年(平成26年)の検査数量は23万9450tであったのに対して2024年(令和6年)の検査数量は22万6543tで、1万2907t、率にして5.3%減にとどまっている。
こうした産地を代表する全国ブランド米はその価値を守るために生産量を減らす方向に動いてきたが、現状は通年での需要量を満たすだけの数量が確保されていない。
検査数量で不思議なことはまだある。それは飼料用米の検査数量で、飼料用米は一般主食用米等の検査と違い等級格付けをしているわけではなく、品位の合否を決めるために検査しているのだが、2024年産の検査数量は46万9200tで2023年産に比べ21万6900t、率にして31%も減っている。ところがその減った分が一般米に上乗せされていないのである。このことは単純に飼料用米から主食用に転換されないということを意味しており、7年産米についても飼料用米の生産が減少してもその分がそのまま主食用米増産にはならない可能性が高い。
コメの検査は統計的手法により推計で公表している生産量とは違い、実際に検査した数量の積み上げであり、さらには産地年産銘柄を表示して販売するには検査証明がなくてはならず、流通業者の関心も高い。このため卸団体の全米販も毎年検査結果について傘下組合員からアンケート調査を実施している。6年産米の検査について、アンケート結果をピックアップしてみると、検査証明欄の不備について「登録検査機関、検査年月日、検査員認印の漏れ」があると答えた件数が41件もある。この他、年産表示の漏れ35件、種類表示の漏れ27件、銘柄表示の漏れ30件、等級印の漏れ45件となっている。さらには異品種混入があったという報告が2件あがっている。卸等販売業者にとって袋に記載してある品種名と違う品種を販売していたということが発覚することは経営を揺るがす死活問題であり、銘柄検査に関してはことのほか神経質になっている。
検査についてもう一点付け加えると、官邸主導で導入された穀粒判別器等による機械検査が一向に普及しないことである。機械検査はスマートお米チェーンのプラットホームの土台になるだけにこれが普及しないと検査の簡素化はもとより、デジタル化による革新的コメの取引も絵にかいた餅になってしまいそう。
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