小泉農相が大政治家になる条件【森島 賢・正義派の農政論】2025年6月23日
●小泉農相は大政治家になるかも
小泉進次郎農相は、コメ大臣と自称しているが、その強烈な突破力をみるとき、そこに収まるような人物ではない。やがて、大政治家になるのではないか。
だが、いきなり大政治家になれるわけではない。いま、担当している当面の任務を、果たし切らねばならない。
いま、当面している問題は、米価高騰問題である。そのなかで、持っている知力を充分に発揮して、突破すべき政治課題は何かを明確に示し、腕力で突破しなければならない。そうして、国民の理解を得なければならない。課題は何か。
●立ちはだかる3つの課題
小泉農相が大政治家になるとき、その前に立ちはだかっている課題は、以下の3つである。
●米価高騰の原因は何か。その認識を、その深部から示すこと。真の原因は、政治不信ではないか。
●米価高騰を原因とする食糧安保の不安を、根本から払拭するための農政哲学を示すこと。食糧安保を、軽視してはいないか。
●食糧安保の任務を、実際に果たしている農業者と、その代表組織である農協との協力関係を、過去の経緯を捨てて、良好にすること。その気があるか。
小泉農相は、政治家として、日本では類い稀な表現力を持っている。その上での、強烈な突破力の発揮である。それに付け加えるべきことは、説得し、実行する政策の具体的な内容である。食糧安保問題でいうならば、主食であるコメ問題を根本的に解決するための、具体的な法令と制度の整備である。それを成し遂げる知力と腕力である。
それを、政治哲学の水準で示すことである。凡庸な政治家や官僚に任せることはできない。そのことを自覚すべきである。
●米価高騰の原因は政治不信にある
小泉農相は、米価高騰の原因は、供給量の不足にある、という認識のようだ。
だが、この認識は、あまりにも浅薄ではないか。この認識は、誤りではないが、その深奥に何があるか。そこまで認識を深化すべきである。
その深奥には、農業者の農業離れがある。だから、供給量が不足している。そして、農業離れが今後も続くなら、今後も米価高騰は続く。そうした認識を持って、国民に示すべきである。
政治は農業離れを止める、と口先では言っているが、そのための政策を持っていない。だから、国民は疑心暗鬼に陥っている。
米価高騰の真因は、こうした政治不信にある。
小泉農相が大政治家なら、どうするか。
●米価高騰は国民のコメ離れをまねく
それに加えて、米価の高騰は、コメが国民から主食の座を追われることになる。国民のコメ離れである。
それは、杞憂ではない。すでに、その動きが始まったようだ。報道各社が伝える画像を見ると、身近の食品店や飲食店では、コメ離れが始まり、コメの売り場がパンやメンの売り場に代わった。パンやメンのメニューが多くなった。つい最近になって、売り場は広くなったようだが、安心はできない。
こうした動きが進めば、主食は輸入小麦で作ったパンやメンに代わるだろう。
そうなれば、水田農業は見る影もなくなってしまうだろう。瑞穂の国の消滅である。
●食糧安保の危機が深化する
農業者がコメから離れ、国民もコメから離れたらどうなるか。食糧の国内自給率は今でも小さいが、今後、さらに小さくなる。
その結果は、いまでも危うい食糧安保を、ドン底の淵に陥れることになる。
小泉農相の食糧安保に対する危機感は希薄ではないか。小泉農相が大政治家になるとして、こうした日本国土の変貌、日本社会の変容を、どのように考えるのか。
小泉農相がこのことを安易に考えるなら、大政治家になるとしても、先人たちが培ってきた瑞穂の国の大政治家ではない。大国の支配下にある属国の、せいぜい奴隷頭ではないか。
●小泉農相は農協をどう考えているか
最後になるが、最大の問題は、農協との関係である。
食糧安保を実際に託されているのは、農業者であり、その中核組織である農協である。
その農協との関係が良好でなければ、食糧安保は机上の空論になってしまう。
ここには、小泉農相の市場原理主義という経済観がある。抜き難い社会思想といってもいい。それを捨てよ、とは言わない。
●農協との良好な協力関係をどう築くか
農業と農協を改革するというのなら、せめて農協がよって立つ共同体の思想を尊重せよ、と言いたい。それは、市場原理主義を全否定するものではない。市場原理の限界を突破して、新しい地平を切り開こうとする思想である。
その一方、農協にも官僚的非効率という限界があることを、農協の組合員である農業者は痛感している。小泉農相が、この限界を突破するというのなら、農業者も賛意を表すだろう。
食糧安保が国家の存亡にかかわる重大事というのなら、せめて農協の真の改革のために、農協との良好な友情を育てていくべきだろう。
そうして、真の大政治家になることを、農業者と農協にも期待してもらったらどうか。
(2025.06.23)
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