必要なのは自責史観【小松泰信・地方の眼力】2025年8月6日
「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」(歌人・正田篠枝(しょうだ・しのえ))

安倍談話を覆せ
内閣総理大臣石破茂氏は、今日8月6日に広島市の平和記念公園で開かれた平和祈念式典で、「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に刻まれたこの歌を「万感の思いを持ってかみしめ」て追悼の辞を語った。
「戦後80年の節目に、力による現状変更がもたらす危うさを省みる意義は重い」で始まるのは、信濃毎日新聞(8月5日付)の社説。
4日の衆院予算委員会で、立憲民主党の野田佳彦代表に、戦後80年という節目の年に当たり、「談話は無理でも総理としてのコメントを出すべきではないか」と問われた石破氏は、「(歴史の)風化はあってはならない。戦争を二度と起こさないため、そういうものの発出が必要」「政治がなぜ(戦争の)歯止めにならなかったのか、きちんと考える必要がある」「50年、60年、70年の談話の積み重ねを大事にして、その上で何を言わなければならないのか判断する」「今年世界において(日本が)何を発信するか(重要)という思いが強い」等々と語り、首相見解の発出に強い意欲を示した。
社説子は、「ウクライナ戦争の収束が見通せず、イスラエルによるガザへの侵攻も続く。米国はイランの核施設を攻撃し、トランプ大統領は広島・長崎の原爆投下を正当化するような発言も繰り返す。国内でも核兵器保有を求める言説が語られる」と状況を示し、「戦争の記憶が薄らぐ中、80年の節目に改めて歴史と向き合う意義は大きい」として、「首相自身の言葉で、戦後80年の見解を表明するべきだ」と迫っている。
なお、戦後70年談話を出した安倍晋三元首相が、「子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」として、「謝罪」に区切りを付ける意志を表明したことから、旧安倍派議員らの間では「新たな談話は必要ない」との声が強いことも紹介している。
当コラム、安倍氏の戦争や被爆者に向き合う姿勢を思い起こしながら、安倍談話を読み返すとき、「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」対象である「子どもたち」の中核に、1954年生まれのシンゾウ君が存在していると思えてならない。
彼にとっては他人事で、謝るのはもう僕の代で終わりにしよう、という強い意欲が感じられる。
でもそれは大間違い。加害者(国)は被害者(国)に謝罪し続けねばならない。なぜなら、それを忘れたとき、同じ過ちを犯すことになるから。その予兆が感じられるこの国では、なおのことである。
日本軍が島民を殺した
コラムを執筆するにあたり今回もまた、自分の無知さを思い知ることに。
教えてくれたのは、「なぜ、このようなおぞましい所業が、同じ部隊によって4度も繰り返されたのか」で始まる沖縄タイムス(8月4日付)の社説。
1945年6月26日米軍が久米島に上陸。久米島には海軍の電波探信隊(隊長・鹿山正兵曹長)約30人が配備されていた。
自宅で米軍の捕虜となった安里正次郎(あさと・しょうじろう)氏は、鹿山隊に降伏勧告状を届けるよう米軍に指示される。届けに行った安里氏はスパイ容疑で、6月27日、鹿山隊長によって殺害された。
6月29日には、アメリカ軍に事情を聴かれた北原区の区長、警防分団長ら9人が銃剣で突き殺され、家が焼き払われた。
8月15日敗戦。
沖縄本島で捕虜になり、故郷の久米島を攻撃しないよう訴えながら、アメリカ軍とともに島に戻ってきた仲村渠明勇(なかんだかり・めいゆう)氏と妻子の3人は、住民に投降を勧めたことにより18日、鹿山隊兵士らに刺殺され、家も焼き払われた。
さらに朝鮮半島出身の谷川昇氏一家7人は8月20日、惨殺された。理由は、米軍駐屯地の近くにいたのを村人にみられ通報されたこと。
鹿山隊の蛮行の犠牲者は20人。米軍と接触した者、米軍の宣伝ビラを持っていた者、投降を呼びかけた者は、軒並みスパイ容疑をかけられ、処刑の対象となった。
具志川(ぐしかわ)村の警防団長を務めていた内間仁廣氏は「血走った友軍は敵に対する行動はせず(中略)、鬼畜にもまさる事のみくりかえし」ていた、と当時の日記に記している。
戦争知らない人たちは、話さなければ分からない
NHK NEWS WEB(6月14日11時16分)は、この久米島事件とともに、本部(もとぶ)町の国民学校で校長をしていた照屋忠英(てるや・ちゅうえい)氏殺害を伝えている。
娘の与儀毬子(よぎ・まりこ)氏(95)によれば、米軍が本部半島に北上してきたことで、さらに北へ避難しようとしたとき、父の忠英氏は、家族と離れて山中でゲリラ戦を展開していた旧日本軍の「宇土部隊」に協力することを決意する。
宇土部隊に校舎を提供したり、天皇の写真・御真影を納める建物を建てたりしていた父は家族たちと別れることに。その後、与儀さんたちを砲撃が襲い母が死亡。
そして、日本軍に協力しようとしていた父も、スパイだとして腹を刺されて殺害される。
このことで、家族は戦後も長い間苦しめられる。
「もう皮肉な事にあんなに一生懸命に、日本のために日本のことを皇民化教育とか頑張っていたお父さんが、同じ日本兵にやられたなんてもう許せないこれはってね」とは思うものの、スパイだとされた汚名をそそぐまで30年以上の年月がかかる。1977年、教え子や同僚などが本部町に顕彰碑を建てることに。
与儀氏にとっては、戦後長い間話してこなかったつらい記憶だが、体験者がほとんど語れなくなった今だからこそ伝えたいと考えているそうだ。
「ことし80年ていうんでね、もう勇気を奮い起こして、あの、みんな、あったことを伝えなきゃと思うからね。みんなも、あの全く、戦争知らない人たちは、話さなければ分からないでしょ。今戦争が再び起こったらねもう大変なことになると思うのよ。平和の世の中しか知らないでしょみんな、大変ですよ」という与儀さんの言葉を、心に刻み込まなければならない。
戦後80年に当たり、この国の行動や判断に真正面から向き合った「自責史観」が求められている。過ちを繰り返さぬために。
「地方の眼力」なめんなよ
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