切り花の消費減少と花産業が直面する三重苦【花づくりの現場から 宇田明】第69回2025年9月25日
花の生産量が減りつづけています。
背景には、「花をつくっても儲からない」という現状があり、その結果、花農家の減少が止まりません。
なぜ、花づくりは儲からなくなったのでしょうか。
最大の要因は、花の消費が減っていることです。
生け花の稽古花、ブライダル、イベントでの装飾などの業務需要だけでなく、家庭での消費(ホームユース)も大幅に減っています。
かつて切り花の購入額は家計全体の消費支出額と高い相関がありました。
バブル崩壊後には、消費支出が減ると、消費者は節約の一環として花の購入を控えるようになりました。これは、不景気による消費の減少です。
ところが、アベノミクス以降、景気が回復して消費支出がわずかに増えても、切り花の消費額は減りつづけました。
なぜでしょうか?
それは、景気や収入に関係なく、花を飾ったり、贈ったりする習慣そのものが薄れ、花に関心がないひとが増えたからです。
総務省家計調査は、この傾向を裏付けています。
2000年には2人以上世帯の41%が切り花を購入していましたが、2024年には28%にまで減少。
この間、生活必需品の生鮮野菜を買う世帯が100%を維持しているのとは対照的です。
これらの花に関心がなく、花を買う習慣がない人は、お酒を飲まないひとを「下戸(げこ)」とよぶように、「花の下戸」と表現できます。
花の消費が減ったのは、この「花の下戸」が増えた一方で、従来から花を買っていた「花の上戸(じょうこ)」も経済的な理由から買い控え、購入回数を減らしているからです。
切り花の年間購入回数は、2000年の10.3回から2024年には7.2回に減りました。
さらに、国内の切り花生産量は、家計調査の購入額減少以上に大きく落ち込んでいます。
これは、輸入切り花に市場のシェアを奪われているためです。
2000年に13%だった輸入率は、2024年には31%にまで上昇しました。
図のように、花の生産者は「花に関心がないひとの増加」、「花を買う習慣があるひとの買い控え」、「輸入の増加」という三重苦にあえいでいます。
では、この三重苦を克服し、切り花の消費を回復させるにはどうすればよいのでしょうか?
それは当コラム第67回で述べたように、消費者と直接に向きあっている花屋を行政が支援することが不可欠です。花屋あっての花農家だからです。
花屋あっての花農家【花づくりの現場から 宇田明】第67回
https://www.jacom.or.jp/column/2025/08/250828-84077.php
もちろん、花産業は「自助」が基本。
花産業だけの取り組みには限界がありますが、自らできることを徹底することが重要です。
花に関心がない「花の下戸」に花を買ってもらうには、「下戸に酒を売る」に匹敵する大きなエネルギーが必要です。
それでも「花生けバトル」などのイベントや、いい夫婦の日、フラワーバレンタインなどの記念日に花を贈るなどの情報発信など、地道な活動をつづけなければなりません。
一方で、もっとも少ないエネルギーで大きな効果が期待できるのは、「花の上戸」の購入回数を増やすことです。
そのためには、日常に買い物をするスーパーマーケットの情報発信力を活用することが有効です。
スーパーの売り場に旬の花を継続的に並べ、季節感を演出すれば、スーパー全体の集客力向上にもつながります。
多くのスーパーでは地元の花束加工業者が花を納入しています。工夫しだいで、上戸も下戸も思わず手に取りたくなるような演出が可能です。
スーパーの花売り場で花への関心を高めた消費者は、やがてより質の高い花を求めて街の花屋を訪れるようになるでしょう。
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