原稿制度としての農協の再検討【森島 賢・正義派の農政論】2026年3月9日
●労働3権との対比
はじめに、農協に対する筆者の提案を述べよう。
それは不買運動の展開である。相手は、政府の規制改革会議などの委員で、農協に対する不当な発言をし、提案をした委員である。議事録は全て公開されているので特定できる。所属する会社名も分かる。特定の会社と直接の関係はないが、関係の深い委員かどうかも分かる。そうした会社を不買運動の対象にする。
この不買運動を、労働者の労働3権の中で対比してみよう。下の図は、「社スタ」(社会科スタディ)のHPを拝借したものである。不買運動は、労働3権の中の団体行動権、つまりストライキ権に相当するだろう。労働者が持っている権利を、農業者も持っていいだろう。ともに、経済的弱者である。

労働3権とは、労働者に保証されている次の3つの権利である。つまり、団結権と団体交渉権と団体行動権の3つの権利である。労働者にはこの労働3権が保証されている。農業者はどうか。
農協にとって、団結権は農協をつくる権利である。これは、農協法で保証されている。だが今、株式会社化を迫られ、この権利を剥奪されようとしている。
団体交渉権は、11年前までは建議権として保証されていた。だが、その後、剥奪された。
団体行動権であるが、農協には共同購買と共同販売が認められている。本来は独禁法で禁止されている商行為だが、農協は適用除外になっている。これを脅かしているのが株式会社化であり、準組合員に対する利用制限である。
●不買運動の提案
ここで指摘したいのは、労働者には認められているストライキ権に相当するものが、農業者には無いことである。
無ければ、作ればいい。提案したいのは、このことである。それが、不買運動である。それを農協運動の中に取り入れて法認することである。
ここには難しい問題がある。対象の会社が倒産に追い込まれる可能性さえある。必死になって防御策を考えるだろう。法廷闘争に持ち込むことも考えるだろう。農協側は、それに耐えられる工夫が必要になる。例えば、或る1日を決めて、その日に限定して、対象の会社が売っている製品を買わないとか。
労働者の場合、労働組合が議決したストライキによって、相手が被った損害に対する賠償責任は免責する法制がある。これに倣うことである。
農業者の場合、農協が議決した不買運動によって発生する損害の賠償責任を免責する法制を、農協運動の中で勝ち取ることである。農協でそうした議論を始めたという噂が流布されるだけで、不買運動の効果が現れるかも知れない。多分そうなるだろう。それ程に、対象の会社を震撼させる程の強力な手段になるだろう。
勝ち取る、などと強い言葉を使ったが、こうした権利は、正義の味方が持って来てくれるものではないし、待っていれば天から滴り落ちて来るものでもない。
●農協の展開方向
さて、提案理由である。
いま、世界的および日本国内的な大混乱の状況の中にあって、同時に資本主義の末期的状況の中にあって、協同主義が希望の星として注目を浴びている。その先端で燦然と輝いているのが、わが農協である。
だが、わが農協にも克服すべき問題がないわけではない。それは、制度としての法的な位置づけについてである。ことに、農協の今後の展開方向に関わる法整備である。期待しているのは、法学者による法制度の不備の指摘と整備ではない。農協の組合員自身による、農協活動の展開方向を定めるための基本戦略の検討と、その結果を実現するための法整備の政治に対する要求である。これは、農協運動の成果としてのみ勝ち取れるものだろう。
ここでは、農協の専門学徒ではないが、老農政学徒を自任している筆者の見解を述べてみたい。ぜひとも、専門研究者だけでなく、農協活動で日夜奮闘している人たち、苦悩している人たちの、現場からのご批判を戴きたい。
●農協は亀の甲羅
農協は、いうまでもなく協同組合である。そして協同組合は資本主義の横暴を防ぐ盾となるために組織されたものである。
かつて、神谷慶治先生が言われたことがある。「農協は亀の甲羅だ」と。甲羅がなければ、すぐに他の者の餌食になる、ということだろう。他の者とは、かつては地主だったが、今は資本家である。
だから、資本家は協同組合を、たえず蛇蝎のような不快な存在と思っている。農協は資本家にとって、目の上のたん瘤である。協同組合の存在そのものを、全面的に否定したいのである。このことを、農協論を語る人たちは、たえず基本認識にしておかねばならない。
資本主義の横暴とは何か。それは、大資本による労働者、農業者、中小企業業主に対する横暴である。資本家階級による労働者階級に対する搾取である。そういうと、ただちに農業者、中小企業業主は労働者階級ではない、という反論が出てくるだろう。だが、それはどうでもいい。干乾びた理論家や学説史家に言わせておけばいい。資本主義社会にあって農業者、中小企業業主も間接的ではあるが、その労働を資本家に不当に横取りされていることは事実である。これは、搾取以外の何ものでもない。だから、労働側は黙ってはいない。協同組合を作って抵抗している。
資本側はどうか。資本家は協同組合を全面的に否定し、その存在を否定したいのだが、その力を失った。意志も失った。そうして、渋々とその存在を認めている。協同組合は、激しい階級闘争を避けるための妥協の産物である。労働側の、不十分ではあるが貴重な戦果なのである。
●横行する潰しの政策
だからといって、資本家側は諦めきっている訳ではない。たえず、農協の力を弱めようと画策している。いくつかの問題を具体的に取り上げよう。
1.は農協の対政府の交渉権である。これは、11年前の農協法の改悪によって失った。それ以後、農協は、農協法で保証されていた政府に対する「建議権」を失った。政府に対して、法に基づく政策要求が出来なくなったのである。せいぜい、頭を下げて陳情するしかなくなった。
これは、労働組合で言えば、労使間の団体交渉権の否定である。資本家がそんなことをしたら、不当労働行為という違法行為になる。それと同様な権利を、農協から奪ったのである。
2.は農協の準組合員に対する規制の強化である。これは、準組合員が購買事業などの農協事業を利用するばあい、そこに上限をつける、というものである。この狙いは、資本家にとって憎っくき農協の弱体化にある。
3.も狙いは、農協の弱体化である。農協の事業部門をそれぞれ独立させて、株式会社にせよ、というものである。農協は協同組合だから、農協法で認められている独占法の適用除外などの権利を奪おう、というのが狙いである。経営に失敗した場合、いったい誰が責任をとる、というのか。
4.はその続きだが、農協から独立した株式会社が倒産したばあい、会社ごと大資本家や外資に売り払えばいい、というものである。このようにすれば、農協は消えて無くなる。資本家の究極の狙いは、ここにある。資本主義の天下になる、というものである。
●農協潰しの本陣は財界にある
こうした農協潰しの政策を、黙って見過ごしている訳にはいかない。どうすればいいか。
先ず行うべきことは、相手をしっかりと見定めることである。相手は、行政としての農水省でもないし財務省でもない。政治家としての担当大臣でもないし、首相でもない。真の相手は、彼らの背後で隠れ蓑を被って、秘かに指揮監督をしている資本家である。行政官や政治家は、資本家の代理人に過ぎない。
このように、農協潰しの陣営の本陣は、資本家の集団である財界にある。だから、農協陣営の反撃の主砲は、財界に向けねばならぬ。
だからと言って、資本家の全てが農協潰しを狙っている訳ではない。狙っている資本家は、市場原理主義を信奉している一部の資本家に過ぎない。この両者を分断することが、基本戦略の主要な1つになる。
協同組合も市場原理を全否定している訳ではない。市場原理主義を否定しているのである。市場には、交換経済が始まった以後の、長い歴史に鍛えられた重要な長所がある。そして、将来に想定される社会主義に付きまとう官僚性という短所からは無縁である。だから、心ある資本家とは妥協する余地は十分にある。隣りの中国では、これを「社会主義市場経済」といって、これが目指すべき経済体制だ、と言っている。
●妥協案は力関係の反映
さて、具体的な本題へ戻のだが、その前に、11年前の農協潰しを想起しよう。
当時、農協は財界から、農協中央会が持っている建議権を放棄することと、準組合員の利用制限の強化を要求された。要求したのは、財界と、その代理人である農水省である。
その時、ある老練な政治家が仲に立って仲介案を示した。その内容は、準組合員の利用制限は留保するが、しかし、建議権は放棄する、というものだった。この妥協案を、農協も農水省も飲んだ。
このように、こうした紛争は、どちらに正義があるか、というものではない。今の力関係のもとでの妥協案を、両者が飲んで解決する、という問題なのである。当時の農協に、両方とも拒否する力が無かったことの反映なのである。
●検討課題
本題の1.の建議権をこれからどうするか。ただちに回復することは、今の力関係のもとでは現実的でない。だが、実質的に回復することは出来る。農協の代表が農水省へ行って、農水相に面会を求め、政策要求をすればいい。農水相はすんなりと受けるかもしれない。面会さえも拒否するかも知れないし、面会は受けるが、政策要求書の受け取りを拒否するかも知れない。どうなるかは、両者の力関係で決まる。
つまり、農協側が力を持っていれば、建議権は実質的に回復できるのである。それが長い間続けば、農協法に書き込むことになるだろう。
2.の準組合員の利用制限である。それが農協の発展の阻害要因になっていることを、言い続けることが肝心である。そして、その緩和を要求することである。
農協を解散して、新しく地域協同組合を作る、という選択肢もあることを、そして、その覚悟を組合員の共通認識にして、農水省に迫ることも選択肢にしたらどうか。
以前、畏友の太田原高昭教授は、一般協同組合法が出来れば農協法は不必要になる、と言ったことがある。今、その時期になったのではないか。そうなれば、農水省の協同組織課は不必要になる。準組合員の利用制限など、言っていられなくなる。
最後に3.と4.の農協の株式会社化である。農協は、言うまでもなく民間組織である。その運営に政治がつべこべ言うのは僭越である。運営の責任は、いったい誰が負うのか。それとも、その先は行政の下部機関にするのか。そういう主張も一部にはあるが。
その真意は、資本主義にとって目障りな協同組合でなく、資本主義に従順な株式会社にしたいのではないか。それなら、農業者にとってだけではなく、労働者にとっても受け入れられないことである。
いずれも難題ではあるが、コメ問題が沸騰している中で、多くの国民はこうした農業問題を、根本から真摯に考えている。今こそ、議論の活性化によって、真摯な国民に応える好機である。. (本稿は資料の検索について ChatGPT からの貴重な示唆を得た)
(2026.03.09)
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