ウコギ・タラノキの芽【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第382回2026年4月2日

ウコギ、山形内陸人にはアケビ以上になじみの深いものである。
4月末から5月の初めに新芽・若葉を摘み、それをさっとゆでて細かく刻み、焼いた味噌で和えてご飯にかけて食べるのである(注1)。白いご飯に春を告げる鮮やかな緑の葉、そのなかにちょっぴり見える味噌の茶色、この色だけでも食欲をそそるが、ウコギのほろ苦さ・甘さと焼き味噌の塩味、ご飯の甘味、まさに絶品である。ご飯にかけずにそのままおかずにしたり、酒のつまみにしてもよい。子どもにとってもごちそうだ。苦みがあるといってもアケビの芽の苦さとは格段の差、子どももおいしく食べられる。改めて春の到来を感じさせられるのもいい。味噌和えだけでなく炊き込みご飯にしたりもする。
成葉になると苦く硬くなるが、そのうちの柔らかいものを摘んでてんぷらにしたりもする。これもうまい。
きっと動物も喜んで食べるのではなかろうか。それを防ぐためだろう、枝にバラのような鋭いトゲがたくさん生えている。おかげで人間さまは食べられるのだが、大変でもある。芽を摘む時にかなり気をつけないと指先にトゲが刺さり、「イテッ」ということになる。このトゲがあることから山形県米沢市の大名上杉家の武士の家では敵を防ぐためにウコギを屋敷の生垣にしたという言い伝えがあるが、目隠し用としても食用としても役に立つことから今でも生垣にしている家がたくさんある。
私の幼いころは祖母が近くに生えている野生のウコギの木から摘んできたようだが、戦後は家の前の畑のすみに1本植え、それから採って食べるようになった。私が仙台で暮らすようになって春の連休に生家に帰るのを母はウコギの芽を摘んで待っていてくれる。私たちが好きなのを知っているからだ。早速家内はそれを味噌和えにし、みんなで春の味を、私は故郷の味を味わったものだった。
なお、宮城県南生まれの家内はウコギが近くにあったことは知っていたが、食べた記憶はないという。ということは仙台でも植えれば育つはずではないか。そこで生家のウコギを根分けしてわが家の裏庭の垣根のところに植えてみた。当然順調に育ち、毎年何度か採って食べ、春を満喫したものだった。
調べてみたら、このウコギの芽・若葉は全国的に食べられているようである。しかし、それを八百屋でも売っているなどというのは山形だけではないだろうか。
春、赤味がかった淡緑色の太い芽が開いて顔を出したみずみずしい幼葉、タラノキ(=楤木)の芽いわゆるタラの芽を祖母がどこからかもらって天ぷらにする。タラの芽のほのかな苦みと柔らかな食感が、天ぷらの衣と付け醤油にうまく合わさり、苦味の苦手な子どもも喜んで食べ、家族みんなで春を実感する。また、お浸しや和え物にしたり、塩蔵して冬などに食べたりもする。
なお、夏のウコギの葉もうまい。山形の旧山寺村の山の奥に嫁に行った母方の叔母が、タラの「芽」というよりはすでに開いた20センチ前後の葉をたくさん持ってきてくれた。山奥の日陰のタラの木、暑くなって慌てて芽を出し、葉を伸ばしたばかりのようで、本当に瑞々しく柔らかい。早速天ぷらにしてごちそうになった。苦みもそれほどきつくない。春先と違って大きいので食べがいもある。固くなどまったくない。タラの芽は山菜の王様とも言われているようだが、本当にそう言いたくなったものだった。
仙台市の南隣の名取市、その西部の山中に農協学園宮城(農協役職員の研修施設)が設置されたのは1975(昭50)年ころではなかったろうか、そこでの講義を頼まれて毎週一回通っていたころの話である。5月の連休前後だったと思う、帰り際ふと敷地わきの木々を見たら、何とタラノキがあるではないか。近くに寄ってみたらうまそうなタラの芽が出ている。学園の女子職員に断って採らせてもらおうと思ったら、彼女は言う、それは棘(とげ)のあるタラの芽だから食べられないよと。しかし私にとってはタラノキ・タラの芽にはトゲがあるものと考えているのでいや大丈夫とたくさん採り、家に帰って天ぷらにして食べた。うまかった。それが私の初めてのタラの芽採りだったが、同時にタラノキにトゲの多い品種と少ない品種があることを知ったのも初めてだった(なお、今店頭に出ているタラの芽つまり栽培種はトゲの少ないメダラと呼ばれている品種なのだそうである)。
その後、春先に山歩きをしたときたまにタラノキを見つけ、数個採って食べたことはあったが、本格的に採ったのは北海道の網走に行ってからだった。
前にも述べたが、私の第二の職場東京農大オホーツクキャンパスの裏にかなり広い雑木林がある。1960(昭35)年ころまでそこには何戸かの開拓農家がおり、畑も広がっていたようだが、私の行った1999(平4)年ころにはそこはうっそうとした林になっていた。その年の春、キャンパスの西側にある醸造実験施設(大学では国内で初めて認可されたビール醸造の設備がある)の前を歩いていたら施設の隣にタラノキらしい木がある。間違いない。少し林の中に入っていくと離農家の畑の跡地らしい日当りのいい笹地や今はほとんど使われていない旧道のまわりにとくに生えている。みんなに聞いたら間違いなくタラノキだ、ある研究室では教職員学生みんなで採りに行って天ぷらにし、タラの芽パーティを開いたりしているところもあるという。それで翌年の春、早速採って食べたが、なぜか毎年タラノキが減るので、2年でやめてしまった。私が退職するころはかなり減っていたが、採り過ぎではなかろうか。
行って4年目くらいではなかったろうか、山菜取りの好きな同僚に連れられて屈斜路・摩周湖に行く途中の山麓に行き、たくさんのタラノ芽を採らせてもらい、夕方わが借家に来る予定だった研究室の学生にご馳走して喜ばれたことがあったが、林道わきで枯れたタラノキをたくさん見かけた。タラの芽の採り方の常識を知らない人たちが芽を残さないで全部取ってしまったからだろう。
山菜採りの常識、マナーは守ってもらいたいものだ。
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