【緊急寄稿】米価高騰を利用した「価格破壊」は大問題 村田武・九州大学名誉教授2025年5月27日
小泉進次郎農相は5月26日、大手小売業者を対象に店頭で5kg2000円程度で販売されるよう政府備蓄米を60kg1万700円で売り渡すと発表した。27日9時現在で19社が計9万tを申し込んだという。小泉農相は「異常な価格高騰を冷やす」として国が販売価格を決めて米を放出する。問題はないのか? 村田武九大名誉教授に緊急に提言してもらった。
村田武氏
米価高騰のなか急遽農相に就任した小泉進次郎氏が打ち出したのは、「備蓄米30万トンを5kg当たり平均891円で放出」して、4千円台に高騰した米価の「価格破壊」を行うというものである。父小泉純一郎政権(2001~06年)が強行した経済規制改革路線の「郵政改革」に学んだのか、息子小泉進次郎氏は安倍政権がおよそ10年前に強行した「農協改革」の先頭に立った自民党農林部会長であった。
農水省が5月26日に発表した政府備蓄米の売り渡し方式は、随意契約で30万トンを、年1万トン以上を取り扱う大手小売り業者に限定し、6月初旬にも店頭で精米5kg2000円程度で並ぶことをめざすというものである。備蓄米30万トンの売り渡し価格は平均で玄米60kg当たり税抜き1万700円(単純計算で5kg891円)。詳細は、22年産が税抜き1万1010円、21年産は同1万80円という。売り渡し先の小売業者の経費や利益は5kg当たり1千円程度で、店頭では精米5kg2千円(税込み2160円)程度だとの試算である。
あっと驚くのは、規制改革会議路線に沿って、主食米の需給と価格の管理を放棄した農政を頑なに維持してきた政府が、参議院選を前にして米価高騰を放置できず、直接の市場価格の破壊という規制に踏み出したことである。農水省はともかく、財務省は立腹しているであろう。アベノミクス規制改革路線を事実上、放棄せざるをえないということだからである。私は、備蓄米を市場に放出するのではなく、高米価に苦慮する生活保護世帯、学校給食・大学生協食堂、病院・高齢者施設・保育園など社会福祉施設に、緊急に低価格で供給するということならば、経済規制改革路線は維持すると強弁してもいいだろうと考えるのだが。
次の問題は、随意契約で備蓄米を売り渡すというその売り渡し先が、年間1万トン以上を取り扱う大手小売業者に限定されており、中小スーパーや中小米小売業者は排除されていることである。これは何のことはない、災害を利用して米流通業界の合理化を図ろうというものである。
さらに、安倍政権下での「農協改革」が、兼業・高齢農家の存在を支えてきたJAグループを敵視し、全国農協中央会を農協法から追い出してJAグループの力を削ぐことに一定成功した小泉氏ならばこそ、この「価格破壊」によって、生産者価格を玄米60kg1万円そこそこに引き下げるならば、中小稲作農家の離農と企業型大経営への農地集積を一挙に進めることができるとの魂胆が見え見えなのである。
JAグループは、60kg玄米の生産費1万8千円から2万円を補てんできる生産者価格を確保するために、石破首相の言う精米5kg3000円台の米価維持を要求して闘うべきであろう。米の直接支払いの制度設計に手間取る場合でも、民主党政権が実施した水田活用助成1万5千円の復活、備蓄米の柔軟な管理、少なくとも豊作年には200万トンへの上乗せを要求していいのではないか。
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