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【クローズアップ:生乳生産】北海道酪農初の400万トンへ コロナ禍で乳製品過剰も深刻化2020年11月16日

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農政ジャーナリスト・伊本克宜

北海道の今年度生乳生産は、初の400万トン台に達する見通しとなった。中央酪農会議がまとめた受託乳量実績では、上期(4~9月)で初めて200万トンを突破し、10月も前年対比2%超の伸び率を保っている。都府県でも4年ぶりの増産に転じた。ただ、新型コロナウイルスの影響で乳製品の業務用需要は低迷したままで、バター、脱脂粉乳在庫は拡大しており、来月決着予定の乳価交渉などに悪影響を及ぼす可能性もある。

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増頭と良質粗飼料が後押し

中酪が13日に発表した10月の生乳販売実績は、北海道が前年比2.5%増の33万2000トンとなった。4~10月累計では約236万トン。上期で約202万5000トンとなっており、大きな自然災害などがなければ今後とも順調に増産する見通しだ。初の北海道生乳「400万トン時代」になる。

増産を後押しする要因は、規模拡大に伴う乳牛頭数の増加だ。つまりは生産を担保する個体がそろっていることになる。生乳生産は、乳牛の体調を左右する夏場の天候や粗飼料の品質でも上下する。一番牧草は長雨の影響で刈り遅れなどが出たが、その後の二番牧草の収穫は順調に推移した。乳量押し上げ要因となるデントコーンも、十勝など道東の主産地で高品質を確保した。乳牛個体、良質粗飼料の二本柱が堅調で、酪農家は増産のアクセルを踏んでいる。

ホクレン回帰の動きも

ここで見逃せないのが、複数の酪農家が4月から生乳の出荷先をホクレンに切り替えたことだ。2年前の改正畜産経営安定法で生乳流通の自由化が進み、指定生乳生産者団体以外に出荷する酪農家の動向が注目された。特に大型酪農家が多い北海道は、どの程度ホクレン離れが起きるのか懸念された。だが、生乳集荷販売業者の乳代精算の不明朗さなどから複数の酪農家とトラブルも起きた。結果、ホクレン回帰の動きが出ている。元々、酪農不足払い制度の下で生乳共販制度は、指定団体が一元集荷、多元販売を通じたプール乳価で酪農家の持続的な経営を支えてきた。改正畜安法は、規制改革の名の下に近年拡大傾向にあった指定団体を通さないアウトサイダー業者の動きを是認した側面も強い。酪農家個別の所得増加に着目したもので、かつて国会所信表明で安倍晋三元首相も言及したこともある。

一方で、酪農家が複数の出荷先を選択できることから、以前から「二股出荷」「いいとこ取り」など改正畜安法の課題が指摘されてきた。一部の酪農家の所得増加のため、全体の酪農家の乳価が下がる本末転倒の結果さえ招きかねない。北海道の生乳増産の背景には、ホクレン出荷酪農家が増え、安心して生産できる環境が強まったこともある。


逆の「牛乳南北問題」どうする

酪農問題の大きな課題は、北海道と都府県の生産不均衡だ。かつて、道産乳が大量に首都圏などに流れ込み関東の酪農家の経営が脅かされる「牛乳南北問題」も浮上した。しかし今、都府県の生乳生産基盤は大きく弱体化し、道産乳の安定的な供給なしには国産需要が賄えないのが実態だ。つまり、かつての「南北問題」はとうに消え去った。だが逆の「南北問題」が課題となる。

増産を続け規模拡大を進める酪農王国・北海道の存在。半面で規模縮小に歯止めがかからない都府県酪農という構図をどう是正するのか。このままでは、生乳生産全体の6割近くを占める北海道のシェアはますます高まる。ここで問題となるのが、物流に限界があるという点だ。トラック運転手不足など物流問題は全産業的な課題で、ドライバーの奪い合いさえ起きている。ホクレンは生乳運搬タンカー「ほくれん丸」を増やすなど対応に懸命だが、月単位で運ぶ量は生乳6万トンが限界とされ、すでにぎりぎりの水準に達した。生乳需給逼迫のピーク時には、首都圏、関西圏の大都市で牛乳欠品が頻発しかねないのが現状だ。

この逆の「南北問題」をどうするのか。今月下旬から本格化する2021年度の酪農・畜産政策価格・関連対策の議論でも都府県酪農振興対策のあり方が柱の一つとなるのは間違いない。農水省も手をこまねいているわけではない。北海道、都府県の酪農均衡発展に向け支援を強め、成果も出つつある。結果は生乳生産に反映される。先の中酪の生乳販売実績で都府県は4年ぶりの増産に転じた。10月生乳生産は約25万トンで前年対比0.9パーセント増、4~10月累計でも178万トンで0.4パーセント増となっている。

北海道に次ぐ酪農産地・関東は前年に比べ微減にとどまっているものの、東北、九州など国内有数の酪農産地は増産を続けている。関東地区の前年度割れは、先に指摘した改正畜安法に伴い、大型酪農家が指定団体への生乳出荷を減らすなど「二股出荷」の影響が出ているのかもしれない。

12月乳価交渉への影響懸念

新たな酪農肉用牛近代化基本方針(酪肉近)は、10年後の生乳生産を780万トンと、現行の730万トンより50万トン増産を明記した。拡大する国産生乳需要を踏まえた。こうした中での「北海道生乳400万トン時代」は望ましい方向だ。都府県の生産祈願回復の兆しも期待したい。問題は、直近の生乳需給の不均衡が深刻になりつつあることだ。酪農家は増産を手放しで喜べない。

コロナ禍でレストラン、ホテルなどの乳製品業務需要が低迷し、一挙に乳製品在庫が増えた。これに春先からの学校給食用牛乳の停止が加わった。行き場のなくなった学乳を乳製品加工に回し、在庫拡大に拍車をかけた。こうした事態の中で国は脱脂需要を促すため輸入代替などを進めた。問題はバターだ。需要期のクリスマス消費でケーキなどでどれだけ在庫消化できるかも問われる。さらには需要が伸びている国産チーズをさらに消費拡大する必要もある。

各指定団体は現在、21年度乳価交渉を進めている。乳製品過剰が交渉に悪影響を及ぼさないかとの懸念も募る。中心の飲用乳価交渉は、牛乳消費がほぼ前年並みに推移しており、酪農団体と乳業が対等な立場での議論となる。問題はホクレンが交渉中の加工向け乳価交渉だ。ホクレンの篠原末治会長は10月末の札幌での定例会見で生乳取引交渉に言及し「持続可能な酪農経営の確立を第一義的に置き、乳業各社と交渉を進めている」と強調した。コロナ禍での乳製品過剰は酪農家の責任ではない。一方で乳業も過剰問題を是正しなければ経営問題につながりかねない。篠原会長の言う「持続可能な酪農経営」とは乳価の安定性を指す。今年は増産を明記した新酪肉近元年度である。当然、一過性の生乳需給に左右されず、酪農家の生産意欲に冷水を浴びせる対応はすべきでない。

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