受精卵移植の受胎率向上へ 黒毛和種牛卵子の成熟速度をAIで予測 大阪公立大学2023年8月24日
大阪公立大学大学院 獣医学研究科のHo, Chia-Tang大学院生(大阪府立大学大学院 博士課程3年)、川手憲俊教授、古山敬祐准教授らの研究グループは、黒毛和種牛卵子の成熟過程を撮影し、そのデータをAI(人工知能)に学習させることで、卵子ごとに差のある核成熟速度の予測モデルを開発した。この予測モデルを活用することで、卵子それぞれに適したタイミングで体外受精が可能な培養方法の開発が期待される。
図:AIにより核成熟速度(NMS)が速いと予測された卵子(左)と
遅いと予測された卵子(右)の成熟培養前後の顕微鏡写真
ウシの繁殖管理の主な方法として受精卵移植が用いられているが、体外受精卵による受胎率は40~50%程度で、この改善は世界的な課題となっている。
卵子の成熟は、卵子が正常な受精卵へ発生するための重要なプロセス。このプロセスには、細胞質成熟と核成熟が含まれており、ウシ卵子においては、卵子の核成熟から約12時間後に精子が卵子に侵入すると、最も効率的に正常な受精卵へ発生すると提唱されている。
核成熟に必要な時間(NMS)は卵子ごとに異なるため、卵子ごとのNMSを知ることで適切な受精のタイミングを特定できるが、卵子に悪影響を及ぼさずに知る手段はなかった。
卵子の成熟培養(IVM)中に起きる顆粒層細胞の膨化の程度は、核成熟のプロセスに影響することが知られているため、研究グループは、IVM中の顆粒層細胞の特徴の違いを用いて、NMSの予測が可能であると考えた。同研究では、大阪府と京都府にある食肉処理場2か所で取得した黒毛和種牛の卵巣から未成熟卵子を採取し、実験に用いた。
まず、IVM中の顆粒層細胞の特徴とNMSとの関連性を調べたところ、NMSが速い卵子の周りにある顆粒層細胞は膨化速度が遅いことや、顆粒層細胞の3種類の膨化パターンの違いがNMSと関連していることが明らかになった。
次に、IVM中に取得した18個の特徴量(顆粒層細胞の膨化速度および膨化パターンなど)を用いて、AIによるNMS予測モデルの構築を試みたところ、決定木およびランダムフォレストを用いることで、卵子の核成熟速度の予測モデル開発に成功。NMSの異なる卵子の分類が可能となった。
体外受精卵を用いた受精卵移植のプロセス
この予測モデルを用いることで、従来であれば正常な受精卵へ発生することができなかった卵子でも、正常な受精卵へ発生させることが可能になると考えられる。今後は、同モデルの精度の向上や、異なる品種の牛卵子への本モデルの応用について検討を進める。
同研究成果は7月8日、国際学術誌『Theriogenology』にオンライン掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
米の価格 前週比▲48円 3週連続下落 農水省調査2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(1)育苗箱処理剤が柱2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
-
米 収穫量調査 衛星データなど新技術活用へ2025年6月17日
-
価格高騰で3人に1人が米の消費減 パンやうどん、パスタ消費が増加 エクスクリエの調査から2025年6月17日
-
【JA人事】JA中野市(長野県) 望月隆組合長を再任2025年6月17日
-
備蓄米の格安放出で農家圧迫 米どころ秋田の大潟村議会 小泉農相に意見書送付2025年6月17日
-
深刻化するコメ加工食品業界の原料米確保情勢【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月17日
-
2025年産加工かぼちゃ出荷販売会議 香港輸出継続や規格外品の試験出荷で単収向上を JA全農みえ2025年6月17日
-
2024年産加工用契約栽培キャベツ出荷販売反省会を開催 旬別出荷計画の策定や「Z-GIS」の導入推進を確認 JA全農みえ2025年6月17日
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第110回2025年6月17日
-
転職希望者対象に「農業のお仕事説明会」 6月25日と7月15日に開催 北海道十勝総合振興局2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
北海道産赤肉メロン使用「とろける食感 ぎゅっとメロン」17日から発売 ファミリーマート2025年6月17日
-
中標津町と繊維リサイクル推進に関する協定締結 コープさっぽろ2025年6月17日
-
神奈川県職員採用 農政技術(農業土木)経験者募集 7月25日まで2025年6月17日
-
【役員人事】ノウタス(6月17日付)2025年6月17日
-
「九州うまいもの大集合」17日から開催 セブン‐イレブン2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日