AIとIoT、新規センサを活用 スマート畜産排水処理技術を開発 農研機構2025年4月23日
農研機構は畜産排水処理施設の自動最適制御(スマート制御)の実現に向けて、AIやIoT、新規センサを活用した4つのスマート畜産排水処理技術を開発した。このシステムを体系的に活用することで、畜産排水に特有な原排水の濃度変動にも対応できる高度な排水処理が省力的に実施可能となる。
図:排水処理フローにおける4つの新技術の概要
日本の畜産業では、家畜排せつ物の適切な処理が環境調和型畜産の実現に不可欠だが、排水処理には多大な労力が必要で、少子高齢化による労働力不足が課題となっている。
畜産排水の浄化工程は各種の装置を連動して制御・管理されている(図)。効率の良い適正な浄化のためには、曝気槽における①曝気時間と②活性汚泥の量、そして、③汚泥の脱水における凝集剤の添加量が重要で、これらは各種装置の設定において核となるパラメータとなる。しかし、家畜のふん尿や畜舎の洗浄水などに由来する原排水に含まれる有機物の濃度は飼養管理や季節により変動するため、状況に応じてこれらのパラメータを個々に手動で設定する必要がある。
そこで、排水処理における3つのパラメータ制御に必要な新規センサとして「改良型BOD監視システム」「スマート汚泥管理システム」「AI凝集制御システム」を開発し、各種装置の自動制御システムを開発した。
一つ目の技術「改良型BOD監視システム」は、 独自のバイオセンサを用いて水汚れの指標であるBODを迅速に測定し、曝気時間を自動制御。 測定精度と操作性が向上する。
2つ目の「スマート汚泥管理システム」は、汚泥量を最適に維持するもので、汚泥量を測定するMLSS6)センサを使って汚泥の引抜量を制御して、処理施設の浄化作用を最大化する。
3つ目は、凝集剤の投入量をスマート制御する「AI凝集制御システム」。曝気槽から引き抜かれた汚泥は単独、または原排水と混合された後、凝集剤を使った凝集反応を利用して脱水処理される。AIによる画像認識を利用して凝集の状態を測定する新規センサを開発、これを用いたスマート制御により、脱水処理の効率を向上できる。
さらに、それぞれの装置の運転・稼働状況を遠隔で管理できる「IoT遠隔モニタリングシステム」を開発。ネットワークカメラとIoT技術で排水処理施設の運転状況を遠隔管理することができる。
これらの技術により、排水処理の効率化、省力化が実現し、労働時間を約70%削減。環境調和型畜産の推進と人手不足への対応が期待される。今後は、技術移転を進め、畜産排水処理施設への実装を図り、持続可能な畜産業の発展に貢献する。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(164)-食料・農業・農村基本計画(6)-2025年10月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(81)【防除学習帖】第320回2025年10月18日
-
農薬の正しい使い方(54)【今さら聞けない営農情報】第320回2025年10月18日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第114回2025年10月18日
-
【注意報】カンキツ類に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(1)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(2)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(3)2025年10月17日
-
25年度上期販売乳量 生産1.3%増も、受託戸数9500割れ2025年10月17日
-
(457)「人間は『入力する』葦か?」という教育現場からの問い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月17日
-
みのりカフェ 元気市広島店「季節野菜のグリーンスムージー」特別価格で提供 JA全農2025年10月17日
-
JA全農主催「WCBF少年野球教室」群馬県太田市で25日に開催2025年10月17日
-
【地域を診る】統計調査はどこまで地域の姿を明らかにできるのか 国勢調査と農林業センサス 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年10月17日
-
岐阜の飛騨牛や柿・栗など「飛騨・美濃うまいもん広場」で販売 JAタウン2025年10月17日
-
JA佐渡と連携したツアー「おけさ柿 収穫体験プラン」発売 佐渡汽船2025年10月17日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」 クイズキャンペーン開始 JAグループ2025年10月17日
-
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へバトンタッチ 「次の万博は、横浜で」 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月17日
-
農薬出荷数量は0.5%増、農薬出荷金額は3.5%増 2025年農薬年度8月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年10月17日
-
鳥取県で一緒に農業をしよう!「第3回とっとり農業人フェア」開催2025年10月17日
-
ふるさと納税でこどもたちに食・体験を届ける「こどもふるさと便」 IMPACT STARTUP SUMMIT 2025で紹介 ネッスー2025年10月17日