【座談会・今年の動向を振り返る】日本の農業協同組合の活力ある内発的発展へ(2)2018年12月28日
【座談会 出席者】
・全国農協中央会副会長 金原 壽秀 氏
・新世紀JA研究会特別相談役 名誉代表 萬代 宣雄 氏
・参議院議員(自民党参議院幹事長) 吉田 博美 氏
・司会=東京農業大学名誉教授 白石 正彦 氏
◆全中中心に再結集を
白石 来年9月には全中も一般社団法人になります。農協の監査業務も公認会計士に移行します。いま、まさにJAグループは新たな全中像を鮮明にして再結集する時だと思います。
萬代 時代が変化しており、その背景も分かります。あまり過去に固執してはいけませんが、農業が全く分からず、「協同組合」の字も知らないような人が農協を論じてきたという実態があります。彼らの言っていることが100%間違いだというつもりはありませんが、それが官邸に上がって執行されるとき、農家の意見はまったく無視されるというのはどういうことでしょうか。こういうやり方は是正してもらわなければなりません。
一方、下がりっ放しの食料自給率も、最近は国会でまったく発言されなくなりました。寂しい限りです。戦争が起きて外国から食料が入らなくなる確率は低いかも知れませんが、安定して食料を確保する政策を考えなければなりません。そうした政策を打ち出し、JAを指導するのは全中の役割です。これまでは法律によって全中に権限が付与されていましたが、農協法が変わって、これまでのようにはいかなくなる可能性があります。今まで以上に、農協、農家の立場に立って農家や農協の思いを実現することができるか、そのための指導力を発揮できるか、いま全中に問われています。
全中の経営指導や教育・広報活動は、農協が喜んで資金を出す雰囲気をつくってほしい。そのためならわれわれはいくらでも協力します。農協から「全中は勝手にやりなさい」ということになって互助精神がなくなると、農業は成り立たなくなります。
(写真)全国農協中央会副会長 金原 壽秀 氏
◆協同組合原則に添い
白石 国際的にみて農協は、家族農業経営者が組織・事業面で結集して、農産物を効率的に供給するため、川上、川下の食品産業との拮抗力(公正な取引)を生み出すために独禁法の適用除外となっています。さらにEUは、協同組合が貧困撲滅を促進し、食料安全保障を確実にする役割を認知しつつ、農業者組織や協同組合の創設を促し、家族農業経営の生産性を高め、土地利用権と伝統的な農民ベースの種子システムを促進する取り組みなどを支援しています。その点で日本の政府は協同組合に冷淡だと思います。
協同組合には1995年のICA100周年大会で決まったグローバル原則があります。それに添って、議員連盟を含め対応していただきたい。世界には12億人の協同組合の組合員がいます。それだけ協同組合には社会的に大きな役割があります。貿易交渉においても、その原則に基づき、守るべきは守るという姿勢で対応してほしいものです。
吉田 私の地元の長野県は中山間地がほとんどで家族農業が中心です。そこで感じたのは、協同組合と地域住民の一体感です。それはすばらしいものです。かつて東京で1か月半ほど入院したことがありますが、その時、どうやって知ったのか、地元の農協から連絡があって、共済金を支払いたいというのです。私は准組合員ではありますが、こうした対応ができるのは、普段から組合員や地域の人との繋がりがあったからだと思います。民間の保険会社では考えられないことです。
参議院で「農業・農協研究会」という議員連盟をつくっていますが、農協改革の最後の段階で、当時会長だった故・岸宏一議員やJAグループ出身の山田議員、野村議員などと強く交渉し、准組合員についての判断を5年引き延ばすことができました。当時農水省は准組合員の利用を規制する考えでした。山形県金山町出身の岸会長は、むしろ准組合員を増やすべきだと主張しておられました。
政府の考えは、利用規制によって准組合員の利用が多い信用・共済事業を分離し、結果的には農協を分断しようという考えだったと思います。われわれが関心を持ったのは郵政事業の分割です。郵政の次は農協にくるのではないかと心配していました。あのとき公認会計士監査の問題もやりあいましたが、政府は「それなら農協の監査士に公認会計士の資格をとらせたらいい」と主張しました。農協の監査士は年長者もいます。彼らに公認会計士の受験勉強をしろというのは酷い話です。現場を知らない者の発言です。
白石 ドイツでは、投資家志向の営利企業と非営利の利用者志向の協同組合法の差異を識別して、協同組合法の枠組みですべての協同組合は監査中央会に加盟し、監査を受けなければならない仕組みです。今年はライファイゼン生誕200年になりますが、協同組合が営利企業や政府と連携して経済・社会・環境のバランスのとれた社会の実現に取り組んでいます。日本はこれをモデルにしたはずですが、いま、その原点を忘れているようです。
金原 日本の食料自給に関しては、これから中国市場がどうなるかが大きな問題です。中国では高所得者が人口の1割いると言われます。いまは上海も日本国内も輸送にかかる費用は大差ありません。そうなったら品質のよい日本の農作物が中国の高所得者向けに輸出され、日本で食べ物がなくなるという事態もあり得ます。
白石 農協の多様な准組合員が、食と農の架け橋となる組織・事業活動に魅力を感じて参加・参画が広がること、これが大きなポイントだと思います。JA福岡市では、地震などの非常の時は准組合員に食料を最優先で配ることを決めています。准組合員は、地域と農業を支える担い手だという考えです。
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