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「国消国産」国民に浸透を 食料安保再構築が急務 中家徹JA全中会長に聞く2022年4月19日

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国際社会の混迷が深まる中で、JAグループの陣頭指揮を執る中家徹JA全中会長に現状認識、今後の対応を聞いた。コロナ禍やウクライナ問題も踏まえ、食料安全保障、「国消国産」を国民に浸透させたいと言明。令和初の第29回JA全国大会決議の実践元年を迎え、「着実に自己改革を進める。今こそ協同組合、JA出番の時だ」と強調した。
(聞き手・農政ジャーナリスト・伊本克宜)

■食料危機と国内自給

――ロシアのウクライナ侵攻を念頭に主要各紙社説は相次いで食料危機を取り上げましたが、国内農業、自給率などの視点は希薄です。

中家会長中家徹
JA全中会長

ウクライナ問題で、小麦の国際相場などが高騰し、一挙に食料問題、さらにはもっと進み食料安保問題が国民的な課題となってきた。JAグループは以前から、国内農業の危機的実態と食料自給率、自給力の向上を訴えてきた。この機会にとらえ、さらに食料安保の在り方を問いたい。
確かに、一般紙の論調を見ると、食料危機まで認識しても一般論にとどまり国内農業の実態までが及ぶ報道は少ない。カロリーベースで食料自給率37%という先進国最低の実態でいいはずはない。
これだけ輸入食料に頼っていて、貿易が滞れば、輸入依存度の高い品目によってはたちまち不足の事態に陥る。農業は自然相手で不足すればすぐに増産とはいかない。肝心の農地、作り手がそろっていなければ、国内農業は大きな支障が出る。出来る限り国内自給を高め、国民に新鮮な国産農畜産物を安定的に供給する体制こそが、真の食料安全保障につながることをあらゆる機会をとらえ訴えなければならない。

■全中内にも食料安保PTで議論

――食料安保をどう考え、国民に分かりやすく訴えていくかは大きな課題です。

自民党内での食料安保論議は極めて時宜を得たもので注目したい。私自身も意見を述べたが、この間のコロナ禍、ウクライナ問題も踏まえ適切な政策対応がとられなければならない。食料安保は大きなテーマで、日本農業そのものの在り方にも関連する。全中内でも横断的なプロジェクトチームを作り具体的な論議を深めていく。
会見でも何度か具体的数字を挙げているが、農畜産物の輸出入の大きなアンバランスを直視すべきだ。政権は農林水産物・食品輸出に力を入れている。2021年は輸出額が初めて1兆円を超え一つの到達点を迎えた。一方で同輸入額は8兆9000億円近く。この20年間で見ると、農産物輸入額の増加が輸出の増加を大きく上回る。この間、貿易自由化が急速に進み、農業分野の輸出入は極めて不均衡だ。これを少しでも是正しなければならない。
生産手段である優良農地の維持、担い手確保などで地域農業を振興し自給力を高めながら自給率アップで国内生産を大前提に、国内の食料安保再構築が急務だ。

■新たに生産資材に的

――自民食料安保検討委員会の論議では輸入依存の肥料など生産資材対策も大きなテーマとなっています。

安定供給が主要議題だった食料安保で、初めて生産資材が取り上げられている意義は大きい。国際的な需給や物量の混乱に加え、円安の加速化は、これまでも指摘されてきた食料問題のリスクが一段と高まることを意味する。特に、生産資材の肥料、飼料、燃油などは、過度の不足や価格が高騰すれば、いくら農業者が頑張っても生産ができなくなる。
自民党内の議論でも、経済安全保障の観点から輸入依存度の極端に高いリン安など肥料を指定品目にすべき、万が一の食料危機への対応のためにも主食に転換できる飼料用米の役割の重要性など具体的な言及が出ていると聞いている。的を射た指摘だ。
JAグループは政府・与党に生産者の営農継続を含め、将来にわたる食料安定供給確保に向け緊急要請を行っている。まずは、食料安保へ大胆な緊急対策と基本政策の確立だ。これには、食料・農業・農村基本法の検証・見直しを含め、食料安保強化への基本政策が構築されなければならない。
生産資材の確保は、JAグループでもJA全農が調達先の多様化などで対応するが、国際相場が高騰しており輸送・保管費用の増大も避けられない。必要な肥料原料確保の支援措置が欠かせない。特に肥料は、供給の安全網であるセーフティネット具体化の検討を急ぎ、価格高騰時の影響緩和対策も必要だ。財源も含め燃油、飼料高騰対策の安定運営も大切となる。

■「国消国産の日」絡めた全国運動を

――10月16日の国連「世界食料デー」を踏まえ、全中の働きかけで「国消国産の日」制定となりました。

「国消国産」は造語だが、国内で消費する農畜産物や食品はできるだけ国産で対応しようという考えだ。食料安保の強化と食料自給率の向上、持続可能な社会実現を踏まえた。JAグループ独自のキーメッセージとして位置づけた。
「国消国産の日」は昨年10月に制定された。この時は、とりあえず今後の消費を担う若い世代、Z世代などを対象に、食と日本農業の大切さなどを身近に感じてもらう催しなどを行った。
今年は、ウクライナ問題もあり国民的に食料問題が大きな話題となっている。これを大きな機会として、できれば「国消国産の日」を前後して、各地で日本の食と農の大切さを訴え、足元の地域農業の現状を考える全国運動を考えたい。
具体的にどう展開するかはこれからだが、食料問題の切実さは昨年とは違うステージに入ったと考えている。これをどう位置づけ、「国消国産」を国民に浸透させ、国内生産を大前提にした食料安保構築への国民理解に結びつけるかが重要だろう

■農業振興と国産需要拡大

――昨春、保守派論客でもある日本財団の笹川陽平会長にインタビューし、農業の現状を憂えた強い思いに驚きました。37%自給率を「異常と思わない方が異常」とも明言しました。

自給率の異常な低さを直視し、農業振興、食料安保などで理解が広がり、政財界の社会的影響力ある方々の応援団が広がることは大切だ。確かに現場で農業者が安心して生産するのは安定した需要確保が欠かせない。
特に過剰が積み上がっている主食用米は、需要に見合った生産を進めることを前提に、引き続き消費拡大の努力が欠かせない。
コロナ禍で業務用需要が低迷し、農畜産物の需給に大きな影響が出ている。マスコミでも取り上げられた生乳廃棄問題もそうだが、需要拡大へ関係者挙げた取り組みが引き続き重要だ。
国産農畜産物の流通・消費対策では、政府・与党への緊急要請でも、輸入食品の値上げ・供給の不安定化が相次ぐ中、食料安保強化の観点を踏まえ、国産農畜産物の利用拡大・切り替えを行う食品産業への支援なども盛り込んだ。
消費者選択の難しい問題だが、資材価格高騰の中で価格転嫁を含め再生産に配慮された適正な価格形成の国民理解も欠かせない。国内農業の持続性確保は食料安保の大前提となるからだ。

■「令和JA戦略」、環境対応は現場実態に即して

――昨秋のJA全国大会はいわば「令和JA戦略」を確認したものです。今年度が実践元年となります。

第29回大会は大きな環境変化の中での開催となった。次の10年に向かって三つの「めざす姿」を改めて提起し、その実現に向けて取り組む方向性を「持続可能な農業・地域共生の未来づくり」という主題に表わした。その際、副題に「不断の自己改革によりさらなる進化」を掲げた。
取り組み方向は五つの柱として整理した。具体的には、農業者の急減を見据えた新たな取り組みである「次世代点検運動」、みどり食料システム戦略を踏まえた「環境調和型農業」推進を掲げた。農業環境の激変、地球環境問題、国連の持続可能な開発目標(SDGs)対応が迫られる中で、いずれも避けて通れない喫緊の課題だ。それらの対応のためにも、自己改革の着実な推進が欠かせない。
みどり戦略を踏まえた「環境調和型農業」推進は、環境保全型農業や有機農業なども含め、幅広く環境負荷を軽減した農業を指す。今後、地域、産地ごとの実態に即し行政、JAなどの関係者が協力しながら進めていくことになる。

■「対話なくして改革なし」

――大会実践にはJA自己改革の深化、加速が欠かせません。

JAグループ挙げて進める自己改革に終わりはない。農家・組合員目線で不断の改革を通じ信頼を勝ち取り、JA組織への一層の結集を図っていくことが欠かせない。その際、重要なのは繰り返し強調している「対話なくして改革なし」ということに尽きる。協同組合は人と人との組織だ。大原則の共存同栄、相互扶助は人と人とのつながりが全てだ。
その場合に、組合員が「なくてはならない組織」「おらがJA」と心の底から思うようになる信頼関係が欠かせない。協同組合の原点である人と人の関係が強まれば、JA自己改革は着実に回り始め、着実な成果が出るはずだ。
厳しい環境変化の中でこそ、協同組合、JAの出番であり、組織の真価が問われる。それが、食と農を基軸に地域に根ざした協同組合のとしてJAの存在意義、国民理解にもつながるはずだ。今回の令和初の大会決議の実践は、農業分野でもSDGs、気候変動、環境対応などで激変期と重なる2020年代の今後10年間の組織・事業戦略として極めて重要だ。

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