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【第68回JA全国女性大会によせて】"閉塞の時代"こそ旗幟鮮明に 文芸アナリスト 大金義昭氏2023年1月25日

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昨年末、テレビ番組でタレントのタモリさんが今年を占って「新しい戦前」という言葉を使い、不穏な時代を見事切り取りネットをざわつかせた。今回、第68回JA全国女性大会開催に当たり文芸アナリストの大金義昭氏に寄稿してもらった。同氏も「『時代閉塞の現状』から戦争の足音が聞こえる」として、JAグループに結集する老若男女こそ「歴史に学び『反戦・平和』の鐘を鳴らそう!」と訴える。

歴史に学び女性組織の力発揮を

文芸アナリスト 大金義昭氏文芸アナリスト 大金義昭氏

啄木がしたためた「時代閉塞の現状」

20代半ばの石川啄木が「時代閉塞の現状」をしたためた背景には、「大逆事件」で幸徳秋水らの死刑を強行する明治末期の暗い世相があった。日露戦後の軍備増強路線がまかり通り、東京・大阪に社会思想を取り締まる特別高等警察が設置されていく時代だ。

この評論で啄木は行き詰まる「自然主義」思潮を批評し、「時代に没頭(ぼっとう)してゐては時代を批評する事が出來ない」と唱え、「嚴密に、大膽に、自由に『今日』を研究して、其處に我々自身にとつての『明日』の必要を發見しなければならぬ」と説いた。間もなく啄木は肺結核で夭折。評論「時代閉塞の現状」は、死の翌年に当たる1913(大正2)年に『啄木遺稿』(土岐善麿編・東雲堂書店)として刊行された。

その翌年には第1次世界大戦が勃発。主戦場はヨーロッパであったが、この国もドイツに宣戦布告して参戦。列強に倣ってシベリアに出兵したために、米価が暴騰した国内では富山県下で発生した「米騒動」が関西各地に波及し、時の内閣が倒れた。

1923(大正12)年の関東大震災の後も、世は束の間の「大正デモクラシー」を謳歌。普通選挙法の公布などに沸く一方、悪名高い治安維持法による思想弾圧が強化された。「動乱の昭和」に突入すると、大陸侵略を剥き出しにした軍部を中心とする軍国主義勢力が跋扈(ばっこ)した。

「自発的隷従」に埋没したツケ

濁流だ濁流だと叫び流れゆく末は泥土か夜明けか知らぬ

第1歌集『魚歌』(ぐろりあ・そさえて)や後年の『ひたくれなゐ』(不識書院)などで知られる歌人の齋藤史(ふみ)が、1936(昭和11)年に発表した歌だ。史は27歳だった。陸軍軍人の父親・瀏(りゅう)は、同年の二・二六事件で「反乱軍」に連座した廉(かど)で禁固刑に処せられた。

史に次のような歌もある。

おそろしや言ひたき事もまをさずろげにはびこれる夏草の色

翌々年の1938(昭和13)年には国家総動員法が成立。2年後には大政翼賛会が創設された。目も口も耳もふさがれ、「自発的隷従」に追い込まれた国民は、良識を貫く人びとを「非国民」呼ばわりし、戦時体制に身ぐるみ絡めとられていく。その結果は周知の通り。唯一「地上戦」に巻き込まれた沖縄はもとより、原爆投下に見舞われた広島・長崎を始め、主要都市が焦土と化す未曽有の敗戦に晒(さら)された。

「銃後の農村」を守った女性たちの生の声が掘り起こされたのは、敗戦後もしばらくしてからだ。本紙シリーズで辿った「JA女性四分の三世紀」でも紹介したが、その中に『あの人は帰ってこなかった』(菊池敬一・大牟羅良編、岩波新書)がある。表紙カバーの折り込みには、こんな小文が添えられている。

子種を絶やさぬためといわれて嫁入りさせられ、いくばくも経ずして夫を戦場に送り出した若い農婦たちは、ひたすら夫の帰還を待ちわびた。しかし、待つ人は遂に帰らない。

"家の名誉"と現実の苛酷さとの矛盾の中ではいずりまわった彼女たちの戦後の苦渋の真実は、過ぎ去った戦争の蔭に葬り去られてよいものであろうか。

国防、原発...凄惨体験いずこ

ロシアのウクライナ侵攻で、世界は「戦争の世紀」と言われた20世紀に逆行してしまった。米国が主導するNATOの東方進出に対する反発とはいえ、ロシアの軍事侵略は言語道断だ。ウクライナを戦場にしたロシアと米国・EUとの代理戦争に巻き込まれている民衆こそ悲惨だ。ともあれ、即時停戦による和平交渉以外に解決の道はない。怨嗟(えんさ)が怨嗟を増幅させる戦争でぬか喜びするのは、兵器生産で潤う軍需産業だけだ。

この国でも武力行使を想定した「国防論議」が活発化し、昨年12月には「敵基地攻撃能力」を保有するなど「安保関連三文書」の改訂を閣議決定し、政府は防衛関連予算の倍増とそのための増税方針を固めた。「戦後民主主義」が形骸化。平和憲法を擁して「専守防衛」を貫いてきた政策が、反知性的な短絡主義によって葬られようとしている。

世界で6000万~8500万人余とも言われ、この国でも300万人を超える犠牲者を出した、あの凄惨な戦争体験を忘れてしまったかのようだ。戦後77年。近年の動向からは東アジアをめぐる好まざる情勢も含め、平和で安定した近隣諸国との関係を希求し、危機を乗り越える粘り強い対話外交を冷静に忍耐強く繰り広げる知恵のかけらも窺えない。メディアの調べでは、戦争を知らない若い世代の多くも軍拡路線を支持している。

さらに昨年末には、政府が原発抑制策を転換。新規建設と老朽原発の稼働延長を容認する方針を打ち出した。東日本大震災による福島原発事故からわずか12年。人類史上未曽有の原発事故に見舞われ、住み慣れた故郷を奪われた被災地の人びとの生傷も癒えない最中である。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とは、このことだ。

JAグループは震災の翌年に開いた「第26回全国大会」で「将来的な脱原発に向けて」再生可能エネルギーの利用促進など「循環型社会への取り組み」を決議している。政府の唐突な原発推進策は、このような志向を逆なでにする暴挙だ。

追い込まれた家族農業の危機

本紙新年号の特集は「2023農業復興元年」と銘打っている。その背景には、主に二つの事由があるように思われる。

ひとつは生産基盤が急速に弱体化し、自給率が40パーセント未満を低迷する国内農業の危機的な状況だ。2022(令和4)年の基幹的農業従事者は122・6万人。その7割に当たる86万人が65歳以上の高齢者で占められ、しかもその後継者確保率が27パーセントにすぎない。販売農家の減少も小規模・小販売農家ほど際立ち、新規就農者も5・4万人と減少傾向にある。耕作放棄などの遊休農地は40万ヘクタールに達している。こうした事態に場当たりの「対症療法」は通用しない。価値観を転換した抜本的な政策が不可欠だ。

もうひとつは、食料・農業・農村基本法の見直し作業が農水省を中心に着手されていることだ。これには「みどりの食料システム戦略」などの方策も関わってくる。そんな大転換期に、JAグループは「第29回全国大会」で決議した「持続可能な農業の実現」「地域共生社会」「協同組合としての役割発揮」を掲げ、かねてからの「自己改革」に取り組んでいる。しかし、男女共同参画は容易に進展せず、男性支配の現実は変わらない。

先人の軌跡 共生を範に

新自由主義の嵐に蹂躙(じゅうりん)され、平成の30年は格差と分断と貧困を深刻化させた。長引くコロナ禍や円安などがこれらに追い打ちをかけ、令和の経済・社会は輸出産業関連を除いて疲弊のどん底にある。ゴースト・タウン化した地方都市の様相は地域社会の崩壊を象徴し、ウクライナ戦争による飼料や肥料などの生産資材や燃料の高騰は、少子・高齢化に立ち往生している農業を窮地に追い込んでいる。

高齢化の波をかぶり、45万人余に減少しているJA女性組織の現状は、ひとりJA女性組織の問題ではない。JAグループの近未来を先取りした事態だ。

JA運動に寄せる女性自身の意識や活力も後退していないか。かつて「貧しさからの解放」を求め、地を這うような地位からの脱出を願ってJA女性組織に光を見出した世代の汗と涙が滲む歩みを忘れてはいないか。JA全国女性協70周年の記念冊子が発刊されたが、たとえばこれをテキストに、先人の軌跡を学び合っている組織がどれほどあるか。

「賢者は歴史に学ぶ」と言われる。過去は未来を映し出す鏡だ。「ふり返れば未来」という言葉もある。「時代閉塞の現状」から戦争の足音が幻聴のように聞こえてくるが、家族農業に携わり、SDGsを唱えてJAグループに結集する老若男女こそ、平和を守る旗幟(きし)を鮮明にすべきときではないか。

昨年末に友人が上梓した『詞華集 野男のうた 自選200首』(時田則雄編著、角川書店)に次のような歌がある。感性鋭い歌人の警鐘が鳴り響く。

猩紅の空のなかよりゆつくりと軍靴の音が近づいて来る

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