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【DX物流の可能性を探る】地域つなぐ「やさいバス」 全中が静岡・掛川市でJA経営ビジョンセミナー2023年10月11日

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地域内を循環して客を運ぶ路線バスのように、客の代わりに野菜を運ぶ、「やさいバス」の運行が広がっている。所定のバス停で野菜を積み込み、消費者の待つバス停で降ろすことで生産と消費をダイレクトに結ぶこのビジネスから何を学ぶか。JA全中は9月13、14の両日、静岡県掛川市の大日本報徳社で令和5(2023)年度第2回の「JA経営ビジョンセミナー」を開き、現地視察をもとにDX(デジタルトランスフォーメーション)による物流やビジネスの可能性を探った。

やさいバスで仕入れた野菜の売り場(掛川市の遠鉄ストアで)やさいバスで仕入れた野菜の売り場(掛川市の遠鉄ストアで)

"時刻表"通り即配好評

ECと共同 配送一体化

静岡県でやさいバスビジネスを展開しているのは、やさいバス(株)(静岡県牧之原市)で、EC(電子商取引)と共同配送を一体化したシステムを構築し、実需者(スーパーや小売店、一般消費者など)に必要な野菜を必要な時に届けている。

巡回するバス(冷蔵トラック)は所定のバス停で、野菜を積み込み、所定のバス停まで運ぶ。バス停は農家の軒先だったり、銀行やスーパーマーケット、あるいは市役所、JAの直売所だったりする。出荷農家はバスの時刻表に合わせてバス停に野菜を持ち込むだけでよく、注文した小売店、あるいは一般消費者がやはり近くのバス停で引き取る。

一般の農産物流通は、一度卸売市場を通すため2、3日かかるが、やさいバスはエリアが限られるため、朝に収穫した野菜は夕方にはスーパーの店頭に並ぶ。輸送料は宅配便の半分の1ケース350円で、発注者が負担する。通常の市場流通の場合、流通の中間経費が半分くらいかかるが、やさいバスだと、まるまる生産者の手取りになる。また直売所のように売れ残りを引き取るようなこともない。

セミナーで視察した掛川市の遠鉄ストアでは、やさいバスの野菜の売り場は、最も目に付く店の入り口にある。「やさいバスのブランドと新鮮さとおいしさの三拍子がそろっている」と、バイヤーの評価は高い。やさいバスの発注・受注はECで行う。出荷者は出荷できる野菜の種類や量を発信し、実需者はそれに応じて注文を出すので、必要な野菜を必要な人に過不足なく供給できる。

このシステムによって、生産者は、販路の拡大、消費のニーズが分かり、配送の手間が省ける。また実需者は新鮮な野菜が届く、生産者から直接買える、仕入れコストがかからないなどのメリットがある。

やさいバスは新鮮さを損なわないために運行エリアが制限され、おのずと地産地消の流通になる。さらに少量多品目の野菜流通は、都市近郊の小規模野菜農家の少量多品目生産にもマッチしている。この地産地消と野菜を通じた生産と消費の接近というこのシステムから新たなコミュニティーづくりにつながる。

バス停でバスを待つ冷蔵庫の野菜(袋井市のアグリサービスジャパン(株)で)バス停でバスを待つ冷蔵庫の野菜(袋井市のアグリサービスジャパン(株)で)

生産と消費より近くに

やさいバス(株)の加藤百合子社長は「消費が多様化しており、小さなエリアでこれに応じられる生産と消費のマッチングが必要。ここに生産者と消費者のコミュニケーションが生まれ。これをツールとして新しいコミュニティーづくりができれば」という。

そのため取引先には、「農家に会いに行こう」と呼びかけ、できる限り農業の現場に来てもらうようにしている。それによって「農家と消費者の信頼関係が深まる。農業の現場が人を育てる」と話す。

またJAに対しては、「この仕組みを本当に農業に役立つようにしたい。農業について私たちは全くの素人。ぜひ農協にお願いしたい。30年、50年後も『農協があってよかったなあ』と言われるようにトライしてほしい」と期待を込めた。

生産、小売りなど現場で自動化進む

セミナーでのディスカッションのコーディネーターを務めた静岡県立大学経営情報学部の国保祥子准教授は、消費の変化について、①オンライン購入の主流化②「必要なもの」を「必要なだけ」求める傾向③買い物のエンターテイメント化――を挙げる。

また、生産現場では、生産管理業務の自動化、オンライン化、アプリ化、データ活用の農業経営、生産体制の改善が進んでいる。また小売りの現場では受発注業務の自動化、簡易化が進むと分析。JAもこれに対応したイノベーションが求められると強調した。

地場流通に貢献 / JAの方向と共通 / コミュニテイー重要

【グループワークの意見】

JA経営ビジョンセミナーでのグループワークで出た意見は次の通り。

▽必要な人に必要なものを届ける重要さが分かった。これまでJAは、作ったものを売ることを第一に考えていたが、それだけではだめだと、納得できた。

▽主流にはならないだろうが、やさいバスのシステムは直売所でも使えるのではないか。

▽新鮮な野菜を届ける地域内流通、そして顔の見える関係、コストを反映する価格形成など、やさいバスは、これらを実現している。

▽考え方やシステムが斬新だ。生産と消費のマッチングシステム、オンラインの活用、物流の課題を解決するヒントがある。やさいバスは地域内物流に重点をおいたことがポイントだと思う。

▽経営の理念、直売所とのつながり、顔の見える関係など、JAが目指すところと共通する。

▽JAは地域活動が基盤。消費者からみた地域の課題はなにか。地域活動が基盤のJAならではの関わり方を探りたい。

▽すばらしい取り組みだが、JAの事業としてできるかどうか。直売所は収益がついてくるが、やさいバスは経営的にどうだろうか。

▽JAは農家組合員のためだけではなく、地域のみんなを対象にすべきだと感じた。

▽地域が一体となってもうかる農業の仕組みづくりが必要。農協法の改正も含めて、JAはもっと広く事業ができるようにする必要がある。

▽農地を守り、食料の安定を図るとともに、地域コミュニティーの維持が重要だと感じた。

▽30年、50年の後の農地確保をミッションに、組合員、地域の人が豊かに暮らせる地域をつくりたい。そのためには農業の価値を地域の人に分かってもらう取り組み求められる。

▽我々のミッションはJA綱領に示されている。それを実践するのはヒトだ。人材の育成に努めたい。

▽農業の振興、農地の完全な管理が重要。そのためには農業の担い手を増やし、収入の安定を図る必要がある。

▽食と農でつながる地域づくり、より豊かな暮らしの実現を目指したい。

セミナーのグループワーク(掛川市の大日本報徳社で)セミナーのグループワーク(掛川市の大日本報徳社で)

【大日本報徳会社長 鷲山恭彦氏】

#経済も重要 勤耕進め荒廃是正

ビジョンセミナーでは会場となった大日本報徳社社長の鷲山恭彦氏が「報徳思想で現代を考える」について話した。

鷲山社長は、道徳と経済の関係について「経済のない道徳は労多くして功少なし、道徳のない経済は永遠の道保ちがたし」の報徳訓を紹介。利益だけを求める事業を批判するとともに、経営を維持する経済も重要だと指摘した。

また報徳思想の「天道と人道」を取り上げた。それによると「天道」とは自然のままであり、「人道」とは、それに従いながら、自然に手を加え生活を豊かにすることであり、水田の雑草に例えると、放っておくと自然のまま繁茂するが、人々はそれに抜き取ることで人道を全うする。だから「勤労」が大事だという。

また報徳訓では「田畑山林は人民の勤耕にあり」と言っている。いま、その田畑山林が荒れている。「これを人民の勤耕によっていかに是正していくかが課題だ」と問題提起した。

【セミナーのコーディネーターを務めた慶應大学・奥村昭博名誉教授の話】

「基本に返って」 ビジネスも同じ

ビジョンとは夢に向かって走ることであり、もっと現実に戻って、自分たちは何をしなければならないか、そのことが社会にとってどのような意味があるのかを考えてほしい。オペレーションの前にビジョンが大事である。DXも同じ。何のため、何をやりたいかが重要。先にビジョンがあってその後ビジネスがある。バック・トゥ・べイシック(基本に返る)が大事だ。

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