JA横浜で現地研究(上) 都市農業・農協のあり方探る 農業協同組合研究会2016年9月27日
農業協同組合研究会(会長=梶井功・東京農工大学名誉教授)は9月24日、神奈川県JA横浜の、きた総合センターで第11回現地研究会を行った。今年5月に都市農業振興基本法が策定され、都市農業が農業として都市政策の中に位置づけられ、多様な機能が評価されるようになった。早くから市や地域住民と連携、准組合員も含めた「横浜方式」ともいえる独自の農業を確立したJA横浜の現場を視察し、都市農業のあり方、JA横浜の自己改革について意見交換した。
◆「一括販売」で実現 横浜市の多様な農業
横浜市には約3000haの農地があり、県内でトップの面積を持つ。農業産出額は約101億円。うち約3分の2が野菜・イモ類で、次いで畜産、果実、花き、水稲など大都市にも関わらず農業生産が活発に行われている。
これを支えているのがJA横浜市の農業振興策で、大消費地の中にある条件を活かし、地産地消を基本に「誰でも、何でも、いつでも、少量でも」買い取る「一括販売方式」を確立し、多様な農業を支援している。
販売先は市場出荷のほか、量販店との契約取引、スーパーなどでのインショップ、それに農家の直売などがあり、「ハマッ子」のブランドを確かなものにしている。特に農家直売のJA直営直売所は、JAの遊休施設等を利用した小規模な店舗で、他に数多くの農家の大小の直売所があり、生産者にも消費者にも身近であることがコンセプト。全国の多くのJAで見られるような大規模直売所とは異なる路線をとっている。報告した同JA農業総合対策室の中村弘之室長は「農家直売は横浜農業の財産、横浜の伝統文化である。1000戸余りの農家直売が横浜農業の底力だ」と言う。 そうした生産者の一人、視察先となった小松菜、ホウレン草を周年栽培する城田朝成さん(50)は「周辺に住宅があり、すぐ近くに消費者がいるので直売ができる。またできたものだけでなく、栽培の過程も見えるので信頼して買ってもらえる。だから横浜で農業を続けていける」と、都市農業の一つのあり方を示す。
しかし、都市化による農地の減少、農業従事者の高齢化による農業経営の縮小が進んでいる。平成27年の販売農家は2019戸で、5年間で約400戸減った。このためJA横浜市は17年度から「地産を興し 地消を拓く Foodで風土」のテーマで地域農業振興計画を実施。生産振興・流通・地域振興の3本の柱で農業の振興に取り組んでいる。
◆准組合員がサポート 新規就農の契機にも
特に生産振興では担い手と農地の確保がポイントで、アグリサポート事業として農家経営をサポートする「援農ボランティア」の育成、遊休・荒廃農地化を防ぐ農地管理体制の確立に努めている。同JAは平成24年度から「農業体験講座」を実施し、講座を通じて人材の確立に努めている。つまり農家であることにこだわらず准組合員を新たな担い手として位置づけた。現在、講座の修了者57名が養成講座・実地研修に入っており、単なるボランティアでなく将来の農業経営の担い手としても期待が大きい。
このほか「農業生産に携わる者は年齢・性別・経営の大小に関わらず、地域の農業に担い手として位置づける」(中村部長)というJA横浜の基本路線のもと、新規就農者の集いや女性農業者講座、Uターン・新規農業後継者講座など、幅広い組合員層からの担い手育成を目指す。
これまでの実践に基づき同JAは、新たな展開として「6次産業化プロジェクト」に取り組む。(1)飲食店や企業、マンション、自治会などへの多品目少量配送、(2)軽トラ市などによる生産者の直接配送、(3)JA移動販売車による機動性の発揮、(4)区画貸しだけでない体験農園の支援-などを企画・支援する考えだ。
(写真)視察する参加者に都市農業について説明する城田さん(横浜市都筑区折本町で)
・JA横浜で現地研究(上) (下)
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