自給率、生産基盤への危機感 記述不足を指摘2019年4月15日
農水省の食料・農業・農村政策審議会企画部会が4月11日に開かれ、30年度の「白書」(平成30年度食料・農業・農村の動向)案を審議した。白書では食料の安定供給の確保や、強い農業構造の確立などが柱となっているが、会合では生産者の委員から食料自給率が低下していることや、生産基盤が弱体化していることなどについて、国民理解を深めるためにもっと危機感を表わすべきではないかといった意見が相次いだ。
4月11日に開かれた食料・農業・農村政策審議会企画部会
この日の会合では白書の本文について委員に公開して議論した。
公表された概要版では食料自給率が過去20年間カロリーベースで40%前後で推移してきたことと、2017年度には畜産物の輸入増加で38%になったことなどに触れている。
食料の潜在生産能力を表わす食料自給力指標は、いも類中心の作付けでは推定エネルギー必要量を上回るが、米・麦・大豆中心に作付けでは必要エネルギー量を確保できない現状にあることを記述している。
そのうえで、将来の世界の食料需給に不安定要素が存在するなか、品目ごとの需要に合わせた生産の強化、担い手への農地の集積・集約化などで食料自給率の向上に努める必要があると記述している。
また、「総合的な食料安全保障の確立」では、「国内生産の増大を基本に輸入・備蓄を組み合わせて食料の安定供給を確保する」と基本法に即した記述がなされている。
これらの記述について、委員のながさき南部生産組合の近藤一海会長は「自給率がなかなか上がってこないことへの危機感がないのではないか」と指摘するとともに、食料安保の確保に向けた備蓄のあり方についても踏み込んだ記述をすべきではと提起した。
また、地域の水田農業は高齢化などで耕作できなくなる水田が増え地域で調整しているのが現実で、こうした実態への危機感も白書の記述に反映させるべきと指摘した。
千葉県柏市の染谷農場の染谷茂氏は食料・農業について「生活者が危機を感じているか」と提起し、国民に食と農の理解を白書で促すことが必要だと話した。
JA全中の中家徹会長は自給率の低下を食生活の変化で説明しているが、「生産基盤の弱体化が重要」と指摘し、白書本文では農業生産力の現状分析をしていたとしても、多くの国民は概要版に目を通すとして、概要版に農地と農業者の数、年齢などの実態を記載して伝えるべきと指摘した。
また、輸入の実態についても災害が多発し、野菜の供給不足から業務用野菜が品確保のために輸入され、さらに複数年契約が進行することで国産生産が影響を受ける実態もあるなど、分析も必要とした。
また、生産者の栗本めぐみ氏はスマート農業などの導入については現場の農業者の希望を聞き取りながら進めてほしいと現場実態をふまえた政策を求めた。
こうした指摘について農水省は今回の白書では食料供給について国民の理解を深めるため諸外国の情報の記述や、不測の事態に備えたリスク分析などの評価も行っていることや、生産努力目標とその達成状況についても新たに解説していることなどを説明した。
今回の白書は巻頭特集で「自然災害からの復旧・復興」、「現場実装が進むスマート農業」、「広がりを見せる農福連携」を取り上げ、トピックスでは輸出拡大、規格・認証・知的財産の活用、ジビエの取り組みを紹介している。白書は今後、閣議決定に向けて農水省が内容を調整する。
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