JAバンク店 デジタル技術で効率化 5年間で600億円投資 農林中金5か年計画2019年5月27日
農林中央金庫は5月22日、2019年度から5年間の中期経営計画を発表した。電子化技術を活用してJAバンク営業店の事務を約2割削減するなど、デジタルイノベーションに5年間で600億円を投資するほか、AI(人工知能)活用で農林中金自身の業務改革を行うことによって人員をJAやJFなどの配置して現場支援にも力を入れる。
スローガンは「変化を追い風に新たな価値創造へ挑戦」。18年度までの3か年計画で打ち出した「食農ビジネス」、「リテールビジネス」、「投資ビジネス」の3本を柱を基本に、新計画ではデジタルイノベーションの積極展開、未来志向の業務革新などを重視する。 食農ビジネスでは、地域の家族経営を支えつつ、生産者・産業界・消費者をつなぐ食農バリューチェーンの架け橋となり、生産者所得の向上と地域の活性化を実現する金融サービスを越えた総合的な支援策を提供する。
リテールビジネスでは、貸出の強化により、地域の資金循環を通じた農漁業の振興と地域おこしにつなげる。また、組合員・利用者の資産形成のために貯金だけでなく、共済や投資信託、遺言信託などで「預ける・備える・増やす・遺す」サービスの提供も展開する。
同時にネットバンキングなど非対面チャネルに対応するとともに、総合サービス店舗から移動店舗など地域に応じた組合員・利用者との接点を再構築し、求められる対面チャネルも確保する。
投資ビジネスでは海外拠点の新設や拡充で、現地での案件に投資し収益の確保を図る。プロジェクトファイナンスやクレジット投資など手法で収益基盤を底上げする。
◆240名を現場に配置
デジタルイノベーションでは農林中金が中心となってJAグループ全体でイノベーションラボを開設し(5月27日)、金融でのフィンテックにとどまらず、ロボット活用による農業の省力化、農産物決済手段の多様化などの労働力不足解消にもつながる「アグテック」や、資産形成相談や相続相談にもデジタル技術を活用した「ライフテック」などの研究・開発と実用化を進める。
また、タブレット端末や生体認証などの導入でJAバンク営業店から伝票や印鑑、紙などをなくし事務を約2割削減することをめざす。そのほか照会応答業務へのAI導入などに5年間で600億円投資し農林中金グループの生産性を向上させる。
また、本店や拠点などの業務見直しによって、5年間で農林中金グループ6000人の1割にあたる600人を現場などで再配置する。このうち400人はJAなど会員へ再配置することにしており、営農基盤の強化、貸出の強化、店舗の効率化などそれぞれの課題解決のための支援にあたる。すでに4月1日付けで240名が配置された。
こうした事業を展開しながら目標経常利益は1000億円程度から23年度に向かって1800億円以上への積み上げをめざす。
農林中央金庫は、1923年に産業組合中央金庫として設立。5か年計画の最終年度には創立100周年を迎える。奥理事長は「会員のためにどう役に立つか、ともに考えリードしながら地域と農林水産業の発展に貢献していきたい」と話した。
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