食農教育の拡充を 「准組合員」問題も 新世紀JA研究会が農水省などに要請2022年5月11日
全国のJA組合長などでつくる新世紀JA研究会(代表=三角修・熊本県JA菊池組合長)は5月9日、農水省やJA全国連、文科省などに対する要請活動を行った。特にJA組織における准組合員の位置づけ、食農教育の拡大・充実、さらにウクライナ戦争を踏まえた食料危機への対応、高騰する畜産飼料の自給策など、研究会がこれまで検討し、その結果を「アピール」として発信してきた内容を伝え、実行を求めた。
文科省の高橋政務官に食農教育への支援を要請する新世紀JA研究会
要請活動には三角代表など新世紀JA研究会の役員を中心に延べ11人が参加。同研究会の専門委員会(准組合員対策推進・運営委員会)の委員長を務めるJA東京みなみの志村孝光常務が、JA全中や農水省に対して、准組合員を「食とJA活動を通じて農業振興への貢献者」と位置付けることを提案した。つまりJA組織の目的は、従来のように農業と地域振興の二つを進める組織ではなく、あくまで農協法の第1条の目的にある「農業振興」にあるべきだと説明した。
「農業振興」と「地域振興」の二つの目的を持つ現在の「地域組合論」では、拡大する准組合員の意思を反映させようと思うと、「JAはJAでなくなってしまう」と危機感を訴えた。特に政府の「規制改革実施計画」では、准組合員の意思反映を行うこととし、その内容を盛り込んだJAのPDCAを政府が指導・監督することになっている。
食農教育については、JA鳥取中央会の栗原隆政会長(JA鳥取中央組合長)が、ウクライナ戦争などで、農業・食料への国民の関心が高まっている背景から食農教育の必要性を強調した。特に福島県喜多方市が小学校のカリキュラムに「農業科」を組み入れている例を挙げて訴えた。高橋はるみ文部科学政務官は「子どもたちに農業の喜びを与える農業体験など、食農教育の重要性は高まっている。喜多方の取り組みも参考にしたい」と話した。
また、全国有数の畜産地帯を抱える三角代表は飼料の価格高騰の不安を示し、「飼料の自給率を高めるため生産・供給の仕組みを考え、日本の畜産に対する国民的コンセンサス確立に努めてほしい」と、全農などに対応を求めた。また飼料用米に関し、生産者が安心して生産できるよう法制化することを訴えた。
このほか、新世紀JA研究会の発足以来、重要課題として取り組んできた貯金保険制度の掛金凍結を農水省に要請。これまで研究会の働きかけで掛金の引き下げが実現したが、掛金凍結を訴え続けている萬代宣雄・新世紀JA研究会名誉代表は「ほとんどのJAの経営は健全に行われており、4000億円を超える責任準備金で十分。この掛金を営農面で有効に使うべきだ」と主張。これに対して中村裕之・農水副大臣は「凍結して一挙にゼロにすることは難しい」と難色を示した。
このほか要請活動では森山裕氏、簗和生氏など国会議員、JAでは全中のほか、農林中金、全共連などで要請した。
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