経営トップの思いを発信 協同組合らしい人材の育成を JA人づくりトップセミナー2023年1月19日
JA全中は1月13日、JA人づくりトップセミナーを開いた。JAや生協の取り組み報告をもとに、JAにおける人(職員)の育成についての課題を探った。特に職員のやる気を高めるには経営トップの思いと、それを職員や組合員に伝える発信の重要性が指摘された。オンラインで約600人が参加した。
JA人づくりセミナーのディスカッション
JAグループは平成25年度から「人づくりビジョン全国運動」を展開。特に令和4~6年度の4次運動では、①協同組合らしい人づくり、②組織基盤の確立に向けた人づくり、③経営基盤の強化に向けた人づくりの3つの実践方策を設けて取り組んでいる。
JA鹿児島きもつき 全職員にメッセージ
JA鹿児島きもつき
下小野田寛組合長
セミナーではJA鹿児島きもつきとコープみやざきが報告した。JA鹿児島きもつきの下小野田寛組合長は職員の「やる気」を起こさせるために必要なこととして、トップ自らがメッセージを発信するとともに、プロジェクトをどんどんつくり、職員に参加させるようにしている。
「チームきもつき」の合言葉のもと、組合長に就任した平成27年の冬の賞与支給の時には「チームきもつき」の標語を掲げ「チームきもつきをみんなで創り、そしてみんなで幸せに!!」の文言を手書きし、全職員に渡した。
下小野田組合長は人を育てる上で重要なこととして「とにかくトップの考えを発信し続けることだ」だと指摘する。
組合長就任後の、令和3年に発したメッセージは「どんどんやる」。JAは信用・共済・購買・販売の4本柱がメインの事業だが、同組合長は第5の柱としてJAが直接農業経営する営農事業の強化、さらにフード(直売所・レストラン・食品加工・ネット販売・輸出)を第6の柱に挙げる。
そこで大事なこととして、①一人ひとりの組合員・利用者をどんどん伸ばす、②喜んでくれる組合員・利用者をどんどん増やす、③今までの固定観念・常識にとらわれずにどんどん新しいことをやる。これを「チームきもつき」の目標とし、そうした人材を求めていることをメッセージで明確に示した。
さらに各種のプロジェクトづくりを職員に呼びかけた。その狙いを下小野田組合長は「組織をかき混ぜたいと思った」という。ともすれは人は自分の職場にこだわり、視野の狭い発想になりがちだ。これを克服するため、職場の垣根を越えて自由に意見を言える場をつくろうというものだ。職場や働き方改善、農畜産物の販売、総代会の盛り上げや広報戦略、さらには新たな時代の潮流に対する取り組みなど、テーマは多岐にわたる。これまで生まれた主なプロジェクトは14に及ぶ。
こうしたプロジェクトなどがもとになって、キリンビールとのコラボによる「氷結」の技術を使った飲料の「辺塚(へつか)だいだい」、3台の移動店舗車、そして県内最大規模の直売所など、次々と新事業を立ち上げた。
下小野田組合長は「投資なくしてJAの未来はない」との考えで積極的に新事業を開発し、実現してきた。職員や組合員の抵抗もあったが、「職員の成長が組合員の成長と喜びにつながり、組合員の成長と喜びが職員の成長と喜びにつながる」との信念で、組合員や職員の理解を得た。
コープみやざき 組織をジグソーパズルに例え
生協コープみやざき
顧問 真方和男氏
コープみやざきの特徴は、職員一人ひとりを大切にする徹底した民主的な運営にある。
同コープの顧問・真方和男氏は、「1ピースでも掛けたら成り立たない」と、組織をジグソーパズルに例える。その上で「職員の一人ひとりが自分の役割を果たし、輝くことで生きたすばらしい組織になる」と指摘。
そのため2148人の職員全員が載った事業執行組織図を作成。組織の中で自分の存在をきちんと確認できるようにしている。組織図は業務上の役割分担(マネージャーと部門責任者)であり、雇用条件とは関係ない。
そして予算は「組合員との約束ごと」として徹底。経営の都合で数値を決め、職員にノルマを課することはない。同コープはこれを「数値で観(み)る」のであって「数値を観る」のではないという。つまり数値で結果をみるのではなく、数値にどのように取り組んでいるのかをみるようにしている。
さらに「供給」と「販売」の違いを挙げる。供給は相手の欲しいものを望み通り与えることであり、相手(組合員)が先。一方、商品などを売りさばくことであり商品が先にあることを示し、「組合員を起点に考えるか、商品を起点に考えるかの違い」と、真方氏は客を大切する同コープの基本的視点を強調する。
そのため、徹底して組合員の声を聞くようにしている。真方氏は「声を聞く聴き、応えていくことは民主的運営を深め、民主主義の内実を創る実践であり、形ではない」と言い切る。
なおセミナーでは菅野孝志JA全中副会長(人づくり運動推進委員会委員長)が組織のトップのリーダーシップの重要性を強調。組合員にとってJAが「なくてはならない」というのはJA目線であり、「農協っていいね」という組合員目線の運営をめざすべきだと指摘。
また、職員には「言われたことをやるのでなく、全国のJAと情報交換しながら自ら取り組む姿勢が必要。常勤役員は自分の思いを自分の言葉で職員や組合員に伝えるとともに、議論する職場環境をつくることが大切」と話した。
報告者によるパネルディスカッションでもトップのリーダーシップの発揮、コロナ禍で希薄になっているコミュニケーションの回復、食料・農業を守るファーストランナーとしてのJAの役割、そのための「人づくり」の方策などが論議になった。
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