農業予算 抜本拡大を 全中・農政連が政策提案全国大会2025年5月14日
JA全中と全国農業者農政運動組織連盟は5月13日、東京都内で「令和7年度食料・農業・地域政策推進大会」を開き、与党国会議員に政策提案を行った。オンラインを含め約4000人が参加した。

あいさつする山野会長
JA全中の山野徹会長はあいさつのなかで「わが国の食料安全保障を将来にわたって確保していくためには、改正基本法、基本計画に実効性を確保する施策を講じるとともに、初動5年間の構造転換を中心にその実践の取り組みを強力かつ着実に推進する予算総額の増額が不可欠だ」とピーク時の6割まで減少している農業予算総額の抜本的な拡大の必要性を強調した。
JAグループは政策提案に向けて組織討議を実施し同日の理事会で決定した。
重点事項は5年間の農業構造転換集中対策期間に必要な予算は、既存の農林水産予算とは別枠で確保することや、全国で老朽化が進んでいるカントリー・エレベーターなど共同利用施設の整備・更新のための十分な予算の確保などだ。
また、水田農業対策をはじめとする品目別対策も重点事項で、水田活用の直接支払交付金は現行予算の単なる組み替えではなく増額を確保し、農業者が希望の持てる見直しの方向を示すことを求めた。
理事会では「米国の関税措置に関する日米協議に対する緊急要請」も決めた。要請では「わが国農業の犠牲にするような交渉は到底受け入れられるものではない」とし、とくに米の輸入について「輸入により現在の価格高騰に対応するという安易な考えは将来の食料安保の確保に大きな禍根を残し、わが国の国益を損なう」と断じている。
山野会長は「JAグループは政府・与党と力を合わせて改正基本法、基本計画の実効性の確保に向けJAグループの総力を挙げて取り組む。そのためにも日米交渉は毅然ととした対応を行うことを政府に強く求めていきたい」との考えを示した。
別枠予算 不退転の決意

自民党幹事長で食料安全保障強化本部長の森山裕氏は「とくに米の生産基盤が弱体化しており、生産基盤を強化し国民生活を将来にわたって守るために農業構造転換に必要となる別枠予算の確保に不退転の決意で取り組む」と述べた。現在、自民党内で必要な予算の積み上げを行っているとして、「私は兆円単位の新たな予算が必要ではないかと考えている」との認識を示した。近日中に党として取りまとめるという
また、共同利用施設対策について補助率を最大6割に引き上げたが、自治体の負担が増しているとして、国の補助率の引き上げや地方財政措置の拡充を検討する考えも示した。
政府備蓄米の売渡しは全農をはじめJAグループが「大変に尽力している」と謝意を示し、さらに円滑な流通への協力を求めるとともに、米の価格については「再生産可能な価格で取引されることが大事。法整備を含めた対応。生産者と流通者のお互いの理解が高まる環境づくりが大切だ」と強調し、米対策の強化を早急に検討するとした。
日米交渉については「はっきりと申し上げたいのは、米の輸入拡大の話はないということ」と述べた。政府が党に相談もなく交渉を行うことはあり得ず、幹事長の森山氏も「何の相談も受けていない。米の輸入拡大の話はない」と断言した。
日米貿易協定は米国が日本の自動車に関税を課さない代りに、農林水産物の関税などはTPP参加国並みとすることで受け入れたと交渉経過を振り返り、「今回、米国側が一方的に関税を課した。自動車関税を見直してもらう代りに農林水産品について日米貿易協定以上の譲歩を行うのはおかしな話だ」と政府に釘を刺し、米価が高騰しているから輸入をという話も「食料安保をないがしろにするもので、これもおかしな話」と述べた。

宮下一郎自民党総合農林政策調査会長は「農業が正念場を迎えている」として、構造転換に向けて農地の大区画化、スマート農業の導入など生産性向上を支援する必要性や、コストが反映された適正な価格形成の法制化、地域計画のブラッシュアップに向けた予算確保などを強調した。

谷合正明公明党農林水産業活性化調査会長は「農業は重大な岐路に立たされている」として、党として基本計画の推進を最優先課題とし、推進力を確保するため農業予算の抜本的な増額必要で、同日の政府与党連絡会議で同党の齊藤代表も石破総理に働きかけたことを紹介した。JAグループと連携を強化し「生産者と消費者を橋渡しする食と農の公明党として役割を果たす」と述べ、全世代への食農教育の拡充によって農業の価値を次世代に伝え農業者が誇りを持って働ける社会をめざすとした。
生産拡大を支える体制支援を

意見表明は小松忠彦JA秋田中央会会長が行った。
小松会長は「秋田県は低温と長雨が続き農作業が遅れている。秋田市の4月の日照時間は130年の観測史上で最短の74.6時間、32年前の平成5年の大冷害と同じように不作とならないか、空を見上げる日々が続いている」と切り出し、県内は3年続きの大雨被害でいまだに復旧されていない農地があり、地域によってはU字溝水路が土砂に埋まって取水ができないため米づくりを断念した地域もあると厳しい実情を話した。
そのうえで毎日のように米に関する報道がなされ、「農業の大切さを伝える内容にありがたいと思うと同時に、それに応えていくためには環境が大きく変わらなければならない」と述べ、基本計画では米の輸出を増やす目標を掲げるなど、今までの生産抑制から生産拡大に切り替える大転換を迎えたと指摘した。
しかし、その転換ができるのか、「生産現場は喜ばしいなかにも大きな不安と混乱のなかにある」として、米づくりでは乾田直播き栽培が注目されるなど生産技術の革新が必要だとした。また、集約的な生産体制の構築も安定供給に求められるという。ただ、少人数で米づくりができる体制は担い手の減少につながった面もあり、「人口増加をめざすためにも米だけではない複合型生産体制の整備が不可欠」などと述べ、多様な農業者の育成と支援の必要性を強調した。
集会では最後にガンバロー三唱を行った。
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