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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2019.07.06 
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第90回 中山間地域、とりわけ棚田地帯を生かす和牛の放牧をいかに推進し実践すべきか(第5回)一覧へ

1. 棚田地域振興法が成立
棚田地域振興法が、去る6月12日、参議院本会議で全会一致で、可決、成立した。
 棚田地域に対する総合的な振興施策の策定・推進などを国の責務と規定し、「貴重な国民的財産」であり、また、さきに本稿でも述べたように「世界農業遺産」としても評価されている棚田の保全と、水源涵養などの多面的機能の維持・増進を図る支援を、関係省庁の横断的対策で対処していく旨の趣旨が盛り込まれている。
 地域農民の高齢化や人口減少が急速に進む中、特に中山間地域のなかでも条件不利地域に位置する棚田は荒廃の危機にある。日本の原風景を守り、世界農業遺産を将来に確実につないでいくためにも、棚田地域が希望を持てる具体的な支援の充実・強化が求められていると思う。

2. 棚田地域振興法の要点
 棚田地域振興法は、自民党のプロジェクトチームが法案をまとめ、与野党の協議を経て衆院農林水産委員会提出法案として国会に提出されていた。
 この法律は、第1条の目的で「貴重な国民的財産」と明記し、その保全と多面的機能の維持増進を通じて棚田地域の持続的発展と国民生活の安定向上に寄与するものとした。
 棚田を「傾斜地に階段状に設けられた田」と規定し、棚田地域は「棚田を含む一定の地域で政令で定める要件に該当するもの」と定義している。
 基本理念では、棚田地域の振興に向け、棚田の保全ならびに定住や国内外の地域との交流を促進する旨を規定している。
 また、国の責務として棚田地域の振興施策を総合的に策定・実施すると明記してある。
 他方、地方公共団体には、国と連携を図りつつ、地域の特性に応じた施策の策定ならびに実施についての努力義務を課している。

3. 急がれる基本方針の決定
 この法制定にもとづき、これから政府が策定する棚田地域の振興の意義や目標、振興施策、棚田地域の指定に関する基本事項を盛り込んだ「基本方針」に基づき、具体策が講じられることとなる。
 基本方針は首相がまとめ、閣議決定する。都道府県は、この基本方針を踏まえ、関係市町村の意見を聞いたうえで、棚田地域振興計画を策定し、国は都道府県の申請にもとづいて施策の対象となる「指定棚田地域」を指定する。
 指定棚田地域がある市町村は、農業者や農業団体、地域住民などと、「棚田地域振興協議会」を組織し、協議会は「棚田地域振興活動計画」を作成することとされている。
こうしたうえで、国はこの活動計画を認定して、協議会の活動を財政、税制両面から支援することとされている。
 指定棚田地域の関連事業は、毎年公表し、振興活動を担うべき人材の育成確保に努めることとされている。
 認定された計画は、エコツーリズム推進法など他の関連法に基づく計画が認定されたものとみなす旨なども盛り込まれている。
 さらに、事の性質上、関連省庁横断で総合的な振興施策を講じるため、政府内に、内閣府や総務省、文部科学省、農林水産省、国土交通省などの担当者からなる「棚田地域振興連絡会議」が設置されることとなっている。
なお、この法律は、公布日から2か月以内に施行し、2025年3月31日までの時限法とされている。

4. この法律をいかに活かすか
 私は、かねて念願していたすばらしい法律ができたと考えている。
 私は、今から20年前の1999年(平成11年)「食料・農業・農村基本法」が制定されるととも初代の食料・農業・農村政策審議会の会長に任命されたが、その折にいまでも高く評価され活用されてきている「中山間地域等直接支払制度」を創設し、多くの中山間地域・山村地域の皆さんから喜ばれ、多彩な活動の源泉になったと評価されてきているが、今回の「棚田地域振興法」が、さらなる新たな活動の源泉となることを祈って止まない。そのなかで棚田地域を活かす道の一つとして和牛の放牧があると考え、このシリーズでさらに追求し、問題提起を続けていきたいと考えている。

 

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