JAの活動:今さら聞けない営農情報
【今さら聞けない営農情報】第30回 農薬の安全性32019年12月6日
前回、農薬の登録を取る際には、様々な試験が課せられ、それをクリアし、決められた使用基準を守って使用すれば農薬を使用した農産物の安全性が保たれることを紹介しました。では、どうして使用基準を守れば安全なのでしょうか? 今回は農薬の使用基準が決まる仕組みを紹介します。
使用基準を決める第一歩は、ADI(一日摂取許容量)が決まるところから始まります。
ADIとは一日摂取許容量と呼ばれ、人間が一生涯毎日食べ続けたとしても人間の健康に影響が出ない量のことをいい、体重1kgあたりのmg数であらわされます。
例えば、ADIが2mgのA農薬の場合、体重50kgの人がA農薬を100mg(=2mg×50kg)毎日食べ続けても健康に影響が出ませんよ、ということになります。
このADIは、無毒性量に安全係数で割って定められます。無毒性量とは、各種毒性試験(主に動物実験)を繰り返して、実験動物が一生涯食べ続けても影響が出なかった量のことをいいます。そして安全係数とは、無毒性量を人間に当てはめるために決められた安全のためのマージンで、多くが100という数字が採用されます。
例えば、動物実験で得られたB農薬の無毒性量が1000mgの場合、この数値を人間に当てはめるための安全係数100を採用すると、B農薬のADIは、10mg(=1000mg÷100)ということになります。人間よりも小さな体の実験動物が一生涯1000mg/体重1kgずつ食べ続けても影響が出なかったB農薬を、体が何十倍も大きな人間に対して動物の無毒性量よりさらに小さな1mgまでと定めるのですから、いかに念には念を入れた決め方をしているかがわかります。
使用基準を決めるための次のステップが残留農薬基準の決定です。
残留農薬基準とは、人が農産物を食べる際に、その農産物の中に残留して(残って)いても大丈夫な濃度のことをいい、農産物ごとに決められます。
例えば、前出のB農薬が、米と大豆とキャベツに登録するという場合、この登録作物ごとに残留基準値が決められます。この残留基準値は、実際に作物に散布した時に、散布後の一定期間ごとに作物中に残っている最大残留濃度をもとにして決めていきますが、その残留基準値を平均的な日本人が1日に食べる登録作物の米と大豆とキャベツの量(国民栄養調査結果)に掛け合わせて算出されるB農薬の量の総数が前出のADIを超えないように決められます。下記のB農薬の場合ですとADIは10mg/kg/日ですので、例にある3作物の残留量の合計はADIを大きく下回る設定になります。
[B農薬の残留基準値と作物別摂取量と1日摂取量]
米 0.5ppm(残留基準値)×167.9g(米の1日食べる量)=0.084mg
大豆 2ppm(残留基準値)×68.0g(大豆の1日食べる量) =0.136mg
キャベツ 1ppm(残留基準値)×22.2g(キャベツの1日食べる量)=0.022mg
計=0.084mg+0.136mg+0.022mg=0.242mg
そして、人が農作物を口にする段階で残留基準値を超えて農薬が残留しないように、希釈倍数(または量)、収穫前使用日数、使用回数や使い方といった使用基準が、各種作物残留試験結果をもとに決定されます。
このように、残留基準値は健康被害が出る可能性のある濃度より遥かに小さな値に設定されており、日本の農薬は人への安全性を第一にした厳しい登録制度によって規制されています。
本シリーズの一覧は以下のリンクからご覧いただけます。
【今さら聞けない営農情報】
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