JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは42【今さら聞けない営農情報】第161回2022年8月6日
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、有機農業の推進が大きな目標となっており、戦略の最終年には有機農業に取り組む面積を耕地面積の25%にあたる100万haまで拡大するとなっています。その段階的な達成のため、農水省は本年6月に2030年に到達すべき中間目標を定め、有機農業については2030年に6.3万ha(耕地面積の1.6%)を目指すことになりました。現在、国内で有機農業に取り組んでいる面積は約24,000ha(耕地面積の0.6%)ですので、2030年には約2.6倍に増やさなけらばならない計算になります。これを2023年から2030年の8年間で実現しようとすれば、2023年から、毎年間に約5000ha弱ずつ有機に取り組む面積を増やさなければならない計算になります。
有機農家数も現行約12,000人を3倍の36,000人と3倍にするとなっており、実に24,000人を純増させなければならず、これを毎年の新規就農者55,870人(令和2年)で賄おうとすると、新規就農の半数近く(43%)に有機農業に取り組んでもらわなければなりません。ところが、実際には新規就農者が有機農業に取り組むにはハードルが高く、安定した収入が得られないケースも多いようです。ましてや、2030年に63,000haを達成したとすると平均して1農家あたり1.75haの経営面積となり、それだけ広い面積を経営するには新規就農者ではかなり困難でしょう。結局うまくできずにやめてしまうか、継続できたとしても軌道に乗せるために多くの時間を要するでしょう。これは、慣行農家が有機農業に取り組む場合であっても同様です。
このため、有機農業の取組面積63,000haという目標達成のためには、既に有機農業に取り組んでいる方々にかなり多めの経営規模拡大をお願いしなければならないでしょう。その場合、手間暇がさらに多くかかるようになり、コストの増大、特に人件費が増加することは間違いありません。このため、有機農業の面積拡大のためには、コスト上昇分は十分にペイできるレベルの有機農産物価格の上昇が不可欠です。しかしながら、現在の日本における販売場面では有機農産物よりも安価な通常品の方が多く売れており、有機農産物生産のコストをペイするだけの価格で販売ができているのは、特定顧客向けの直接販売のものが中心になっています。実際には、野菜など農産物のおいしさは、栽培方法というより、鮮度に多く左右されるようで、有機栽培でなくとも収穫したてはおいしいものです。であれば、安全性やおいしさが同じなら、わざわざ有機農産物を消費者に買って頂く理由とは何でしょうか? 有機農業を増やすのであれば、この疑問に対する明解な答えが必要です。
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