JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは85 有機質資材を活用した施肥(23)【今さら聞けない営農情報】第204回2023年6月17日
みどりの食料システム法が施行され、国内の肥料資源(特に有機質資材)を活用した施肥の重要度が増しています。そこで本稿では、堆肥、汚泥肥料、食品残渣、有機質肥料、緑肥作物といった有機質資材を有効活用するために必要な知識として「有機質資材が持つ作物の健全な生育に役立つ効能」についてご紹介し、現在、有機質資材利用にあたって理解しておきたい基本的事項をご紹介しています。
今回は、有機質資材を使用する際に考慮される窒素飢餓回避に関することを紹介します。
作物にとっての窒素飢餓とは、土壌の中に作物が生育のために必要な窒素が不足していることを指し、このような窒素が不足する土壌では、作物の葉色が薄く、生育が悪くなります。窒素飢餓はどのようにして起こるのでしょうか。それは、土壌の中に無数の微生物が存在しており、それらが土壌中の窒素を取り込んで自身の増殖に使用していることが主な要因です。つまり、土壌中では作物と微生物との間で窒素の奪い合いが起こっており、微生物が窒素をたくさん使ってしまうと作物の分が無くなってしまうために起こります。このため、窒素質肥料を施用する場合は、微生物が利用する分以上の窒素分を入れてやる必要があります。
ところが、有機質資材には難分解性の窒素分が多くて作物や微生物が利用しやすい無機質窒素が少ないため、窒素分を有機質資材中心に施用しようとすると、作物や菌体が利用できる窒素の量が少なくて奪い合いが起こり、作物が利用できる窒素が減って窒素飢餓の状態が起こりやすくなります。
そのため、有機質資材を窒素源として使用する場合は、それぞれの資材のC/N比を考慮する必要があります。C/N比とは有機質資材の中のC(炭素)とN(窒素)の量の比率を表したもので、分母に窒素、分子に炭素の量を当てはめて計算されます。C/N比は、分母にあたるN(窒素)の含有量が多いほど値が小さくなるので、C/N比の値が小さいほどN(窒素)の含有量が大きくなります。一般に有機質資材のうち、麦わらや稲籾など腐熟が進んでいない粗い有機質資材は、C/N比が大きい(=窒素含有量が少ない)ものが多いので、窒素源として使用する場合には窒素飢餓が起こってしまう可能性が高いことを考慮しなければなりません。
次回は実際の有機質資材ごとのC/N比をご紹介します。
(つづく)
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問や取り上げてほしいテーマなどがございましたら、コラム・シリーズ名を添えてお問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。
重要な記事
最新の記事
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(1)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(2)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(3)2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日
-
深作農園「日本でいちばん大切にしたい会社」で「審査委員会特別賞」受賞2025年9月18日