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JAの活動:農協時論

【農協時論】基本法中間報告 先送りされた食料備蓄 不安定要素拡大 JA常陸・秋山豊組合長2023年6月26日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は茨城県・JA常陸の秋山豊組合長に寄稿してもらった。

JA常陸代表理事組合長 秋山豊氏JA常陸代表理事組合長 秋山豊氏

基本法検証部会の中間報告と政府の法改正に向けた「新たな展開方向」が出された。生産現場からの意見として二、三申し上げたい。

一つは、コロナ感染、ウクライナ紛争を受けて消費者、国民の期待が最も強い食料安全保障について、対策としての拡大が見送られた事。

主食であり自給率が最も高い米。その年間消費量は700万t、政府在庫は100万t、1・7カ月の在庫しかない。民間の繰り越し在庫が200万tあるが有事には買い占めにより当てにならない。ここ十年を見ても、大地震、コロナウイルス、戦争や、噴火、異常気象による凶作などが頻発している。有事の際には、所得の低い国民は食べるものが無くなるのではないか。

私は、昨年の時論で米の1000万t備蓄と脱脂粉乳の備蓄を提案した。毎年200万tをもみ米で5年間備蓄し、その後は飼料米や米粉、加工米、援助米に使う。有事に対し1・4年分の備蓄を主食で持つ事は、消費者にとって必要だと思った。省庁をまたいだ有事予算として組む事も提案した。

しかし、「農水省では備蓄の問題はタブーであり話さないでくれ」と中央会の裏事情に詳しい職員から言われた。検証部会でも平時における輸出を加えて無限大の消費をどう満たすかの話ばかりで、有事に備えた食料備蓄は先送りされた。農水大臣が省庁をまたいで有事対策を検討したい旨発表、政府の新たな展開方向にも「不測時の体制構築」が項目として入った。文民統制を堅持しつつ、国民の為に頑張ってほしい。

二つ目は、平時の対応として自給率の向上が挙がっているが、今回もその中心に麦、大豆の増産が入った。「また麦、大豆か。もう50年もやっているのに。団地化も限界。単収は上がらないし、麦の価格はタダ同然、転作交付金がなくなれば終わりだ」これが湿田地帯の素直な感想だ。水田転作は1967年に始まり既に55年が経過した。更に増産となれば、水田の基盤整備率を更に上げ田畑輪換を完成し、冬はすべて麦、夏作は米と大豆という生産方式を拡大しなければ難しい。

政府は畑地化を進めているが、分散した一部水田の畑地化では増産への貢献は薄いだろう。

三つ目に、今後の食料問題で焦点となる昆虫食、人工食、細胞培養肉、石油由来のタンパク質など、既に開発が進み一部は商品化されている加工食品に対する方針が無い。別途、政府においても安全性や倫理上の問題を検討しているようだが、世界的な食料問題の解決策として大企業、投資家が開発に加わっている。近々、日本の食料、国民の健康にも大きく関わる問題であり、基本法である以上、現状と課題は開示すべきであろう。

今後、日本の農業・食料・農村はどうなるのか、不安定要素が多すぎる。まずは、戦後の農業転換が消費の変化、洋食化・肉食化から始まったように、国民一人一人がエシカル消費(倫理的消費=環境や人権に対して十分配慮された商品やサービスを選択・購入すること)を考え、選択することであろう。

コロナパンデミック時にアメリカ人はひよこを飼ったそうである。政府や企業にばかり頼らず、自分の命は自分や地域で守る事が必要ではないか。

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