JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(3)【今さら聞けない営農情報】第233回2024年1月20日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。
土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋を提示するためには、それ相応の知識が必要になります。このため、本稿では土壌診断の基礎知識をご紹介し、正しい土壌診断の一助にしたいと考えています。今回はpHの続きです。
pHは土壌中の水素イオン濃度を基に示されるもので、pHの値によって作物が吸収できる土壌中の肥料成分量が変化し、過剰障害や欠乏症の原因になります。なぜなら、土壌のpHが酸性またはアルカリ性に偏ると、土壌中に溶ける肥料成分の溶解性に変化が起こるからです。
土壌中に存在する肥料成分は、作物に吸収されるイオンの状態で存在しており、pHの度合によって土壌中に溶けだす度合(溶解度)が変化します。
例えば土壌が酸性化すると、アルミニウムや鉄の溶解度が高まるため、土壌にこれらのアルミニウム(陽イオン)や鉄(陽イオン)が多く溶出し、結果として作物に過剰症を引き起こす可能性があります。そのとき、吸収できる状態のリン酸イオン(陰イオン)があると、アルミニウムイオンや鉄イオンとリン酸イオンが結合して作物が吸収できない形(不可給態)に変化して、作物が吸収できるリン酸イオンの量が減り、結果としてリン酸欠乏が発生することになります。
逆に、土壌がアルカリ性に偏ると、土壌中のアルカリイオン(OH-などの陰イオン)が多く存在するので、作物が吸収できる形(可給態)が陽イオンである成分の鉄・マンガン・ホウ素・銅・亜鉛が結合して不可給態となって作物が吸収できなくなり、これらの肥料成分の欠乏症が発生したり、リン酸が可給態になるのを邪魔するため作物が吸収できるリン酸の量が減り、リン酸欠乏が発生したりします。
このように、pHがどちらかに偏ると作物の生育に不適な状態になりますので、健全な作物を育てるためには、作物毎にある好適なpHに土壌がなるようにすることが重要なのです。
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